業界激震の「金融レポート」、保険販売手数料が白日の下にさらされる時代は近いのか
「日本だけ」「生保だけ」が許されない流れに
では、そもそもなぜ手数料を開示する必要があるのでしょうか。これには大きく2つの要因があると思われます。
まず世界的な潮流です。既に米国をはじめとした欧米諸国では、顧客の利益を優先するという考え方から手数料は開示されています。
また生保の近隣業界とも言える投資信託の世界では、日本国内でも手数料(信託手数料、販売手数料)が開示されているため、日本だけ、そして生保業界だけ開示を拒むという理屈が通らなくなってきたことが挙げられます。
次に「身から出たサビ」という側面があります。
前述の銀行窓販や保険ショップで「手数料の高い商品を売りつけられた」という批判は数年前から各種メディアで大きく報じられ、実際に業界内でもこの種の話には事欠きません。この問題には「売り手のモラル」と「業界の体質」が内包されているような気がします。
例えば、商品スペックがあまり変わらないのに手数料が高いA社の商品と、手数料が低いB社の商品があるとしましょう。お客様の立場に寄り添ってAとBのいずれも甲乙がつけがたければ、売り手がA社の商品を薦める行為は、セールスの現場においては責められるべきことではありません。
ほとんどの販売員はこのスタンスですが、「お客様のことを考えれば、ほんのちょっとだけBの方が良いがAを薦める」、さらには、「明らかにBの方が良いのに手数料欲しさにAの優位性ばかりを強調する」、しまいには、「そもそもBは見せずにAだけを説明する」という具合に悪質さはエスカレートしてしまいます。
こうした販売員が悪いと簡単に言うことはできますが、同種の商品で販売手数料にばらつきがある以上、このような販売員が出てくることはある程度、仕方のないことといえるでしょう。
そもそも商品の作り手である生命保険会社の「手数料を上乗せして販売力を強化する」という施策に寄りかかる以上、販売員も聖人君子ではないため、こうした弊害が出ることは容易に想像できます。
とは言え、これは今に始まったことではなく、戦後保険会社が成長する過程で少しずつ熟成されてきたシステムです。それが、銀行窓販と大型の保険ショップが一気に全国展開したことにより、強力な販売網が整備され、それに呼応する形で各保険会社の手数料施策が過熱し、その結果、「衆人の目につくようになった」というのが実情でしょう。
その意味では「身から出たサビ」であることを否定できないのです。
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