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オフィス北野内紛から見える、森昌行社長の“したたかなプロデューサー”の顔

ビートたけしさん独立をきっかけに、事態が収まる気配のないオフィス北野の内紛問題。しかし、争点となっているポイントを森昌行社長の目線で見ると違った風景が見えてくるかもしれません。

オフィス北野内紛問題の行方は…
オフィス北野内紛問題の行方は…

 ビートたけしさんの独立をきっかけにたけし軍団の面々が森昌行社長を糾弾する内容を告発するなど、事態が収拾する気配を見せないオフィス北野の内紛問題。告発を見る限り、今回の問題のポイントは以下の3点です。

1.知らないうちに森社長が筆頭株主になっていた
2.役員、社員の高給ぶり
3.赤字転落

 そして、これらについて森社長が謝罪しているのにもかかわらず改善が見られないため、たけしさんが独立したとあります。

 筆者は自身でも会社を経営しており、顧客にも経営者が多いため、どうしても森社長の目線で物事を見てしまうのですが、同情できる部分は少なくありません。決して「森社長は悪くない」と言っているわけではありません。このような事態になっているのは100%経営者の責任と言わざるをえないのですが、諸々の問題に関しては、経営の実務上は特に責められるようなことでもない気がします。

 まず、筆頭株主の件ですが、告発を抜粋すると「当時の筆頭株主(55%)の企業が株を引き取ってくれと申し出」たが「当時は自社の株を会社が持つことができなかった」ため「森社長が個人として会社(オフィス北野)から金銭を借り、引き受けた」。その結果、森氏65%、たけしさん30%、ほかの役員5%という株主構成になりました。

(補足すると現在では、このような場合には「金庫株」という手法で、会社が自社の株を保有することが可能です。この改正が行われたのが2001年なので、この話はそれ以前の話ということになります)

 たけしさんという実質的な創業者に相談もなく行ったということに関して、たけしさんに心酔する軍団の方々が義憤にかられる気持ちは理解できますが、傍から見ると「よく買ったな」とも思います。なぜなら、流動性も換金性もない中小企業の株を欲しがる人は少ないからです。芸能界の金看板であるたけしさんには価値があっても、その所属事務所の株に価値があるとは思えません。たけしさんに何かがあれば事務所の倒産リスクは高まり、株もただの紙くずになります。それを個人で、借金をしてまで引き受けるのは、相当の覚悟があってのことでしょう。

 もちろんこれが「覚悟」なのか「下心」だったのかは知るよしもありませんが、一般論としては、そこまで「おいしい話」でもないので、特に悪意がなければ「多忙なたけしさんに言うほどのことでもない」と思ったのかもしれません。

 次に給与ですが、社長の給与が1億円で、20代の若いマネージャーが1000万円を超えているとの報道もあります。これも、日々の生活が苦しい芸人さんからすれば「もらいすぎだ」と批判する気持ちも分かりますが、そもそもが歩合制の芸人さんと、会社員で固定給の本部スタッフを同列に論じることはできません。

 優秀な人間を雇うにはそれなりの待遇が必要であり、中小企業においては、さらに上乗せしなければ能力の高い人は来てくれません。少々余談になりますが、古舘伊知郎さんを擁する古館プロジェクトや、糸氏重里さん率いる株式会社ほぼ日なども高年収であることが知られています。古舘、糸井という貴重な「才能」を中心として、少数精鋭のスタッフが事業を展開していくという体制で、どちらも成功していますし、ほぼ日に至っては上場まで果たしています。

 これと同じ路線を目指しているのであれば、スタッフの高給も非難されるようなことではないでしょう。また、社長の報酬にしても「もうかっているなら1億円取ってもよい」という意見もあれば「さすがにもらいすぎ」という意見もあり正解はありません。何より、給与に関して「誰にいくら支払う」かは経営者の判断であると同時に、人を使う上での「力の源泉」でもありますから、あまり文句を言われたくないのが本音です。

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加藤圭祐(かとう・けいすけ)

あおばコンサルティング代表取締役、1級FP技能士、宅建士

大手外資系生命保険会社にて11年間、個人・法人のコンサルティング業務に従事。2015年に株式会社あおばコンサルティングを設立。日本初の、チャットでのお金のサービス「みかづきナビ」を開始。現在ではzoomも活用し、FP相談や保険相談で顧客の課題解決に取り組んでいる。みかづきナビ(http://www.mikazuki-navi.jp/)。

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