松山・暴走男のような人間がいる限り…意外と多い「無保険車」は迷惑以外の何者でもない
車を持っている人には身近な「自動車保険」ですが実は、保険に入っていない無保険車が意外と多いのです。松山で起きた暴走事件の容疑者のような運転手がいる以上、こうした無保険車の存在は私たちの“悩みのタネ”なのです。

先日、松山市で発生した暴走事件。人が行き交う商店街を車が猛スピードで突き抜ける映像を見て驚いた方も多いのではないでしょうか。事件を起こした41歳の男性は「ストレスがあった」と供述していますが、少なくとも5件の当て逃げ事故を起こしている上に、警察相手にあれだけの大立ち回りを演じたわけですから、今後重いペナルティーが課せられるのは必至です。
加入率トップは富山、ワーストは沖縄
筆者は保険関係の仕事をしていますが、あのような事件を見て思うのは「この車、保険(任意保険や共済)に入っているのか」ということです。保険に入っていれば、当て逃げでけがをされた方や、車や物を壊された方は加害者の悪質性を問わず、保険会社から補償を受けられますが、未加入の人は加害者に直接請求することになります。しかし、加害者が保険未加入だと、回収するのに相当な時間と手間がかかるだけではなく、泣き寝入りで終わることも少なくないのです。
このような無保険車は、皆さんが思っている以上に走っています。損害保険料率算出機構の調査によると、日本全国の「自動車の任意保険普及率(自動車共済含む)」は87.8%、つまり約8台に1台は無保険ということになります(2016年3月「対人賠償普及率」より抜粋)。都道府県別のベスト3とワースト3は以下の通りです。
【ベスト3】
富山 91.8%
香川 91.3%
愛知 91.1%
【ワースト3】
沖縄 76.8%
鹿児島 81.4%
山梨 83.2%
普及率トップの富山県と最下位の沖縄では15ポイントもの開きがあり、県民性がうかがい知れます。今回の事件が発生した愛媛県は90.3%と全国平均よりも高いですが、あれだけ無責任な事件を起こす加害者が保険に加入していたのかは疑問です。もちろん、保険は「任意」ですから、入るも入らないも個人の自由ですが、実際に事故を起こせば、被害の全額を自己で弁償することになり、特に死亡や後遺障害などを伴う事故はそのほとんどで賠償金額が1億円を超えるため、到底個人が払えるものではありません。
そのため「無保険車」と事故を起こすと悲惨なのです。また、そもそも責任感が皆無で、その場を取り繕うだけの発言に終始したり、ひどい場合には逆切れや恫喝(どうかつ)、しまいには「自己破産する」と開き直ったりする輩もおり、被害を受けた上にこうした人を相手にするのは「不幸」としか言いようがないでしょう。
なお、たとえ自己破産しても重い過失がある事故の賠償は免責されませんが、とは言え、長期にわたる交渉を素人が続けるのには無理があります。こうしたケースでは車の保険や火災保険、もしくはクレジットカードの特約として用意されている「弁護士費用特約」が有効です。保険会社が弁護士費用に関わるコストを補償してくれるので、交渉を丸投げできます。
もちろん、弁護士が交渉したところで「無い袖は振れない」ため必ず回収ができるわけではありません。実際、多くの弁護士が無保険案件を避ける傾向にあり、手間のわりに実が少ないことを表しています。そこで、相手が無保険車の場合の「無保険車特約」などが自動車保険のメニューに用意されていますが、その保険料は意外と高額で躊躇される方が多いのも現実です。「保険料が高い=リスクが高い」ということであり、「事故のプロ」の損害保険会社からしても無保険車の存在は厄介ということでしょう。
一般的な感覚からすれば、保険なしに車に乗ることは「怖くてできない」ことですが、運転者の8人に1人はその感覚が欠如しているのが、現在の日本。松山の暴走男のように、一定数は“頭のおかしな”人間がハンドルを握っていることを前提に、自分の身は自分で守るしかないということかもしれません。
(株式会社あおばコンサルティング代表取締役 加藤圭祐)
運転免許証の交付条件を任意保険加入済とすべきだろう。
任意保険に入ろうとしない者に運転免許証を交付する必要性がどこにある。