「ビールを飲んでいるから大丈夫」は危険! 脱水による「脳卒中」引き起こす“7つのNG行為”とは
脳卒中は冬になりやすい病気といわれていますが、なぜ気温が高くなっても発症リスクが高くなるのでしょうか。医師に聞きました。

最高気温が30度を超える地域もあり、熱中症に注意が必要です。気温の上昇に伴い、この時期は熱中症だけでなく、脳梗塞や脳出血、くも膜下出血といった「脳卒中」にも注意が必要といわれています。脳卒中は冬になりやすい病気といわれていますが、なぜ気温が高くなっても発症リスクが高くなるのでしょうか。晃友相模原病院(相模原市緑区)の院長で、脳神経外科医の小澤仁さんに聞きました。
室内にいても熱中症になるケースも
Q.暑い時期に脳卒中になった患者について、印象的なエピソードはありますか。
小澤さん「夜中にトイレに起きるのが嫌だからと、夕食後から就寝前にかけて水分をほとんど取らずに過ごしていた高齢の男性がいました。翌朝、起き上がろうとしたところ体に力が入らず、そのまま救急搬送されてきたのです。脳梗塞でした。
また、暑い日が続く中、『ビールを飲んでいるから大丈夫』と水をほとんど飲まずに過ごしていた中年男性が、翌朝ろれつが回らなくなり受診されたケースもあります。
さらに、『エアコンは体に悪い』『電気代がもったいない』と夏場もエアコンをほとんど使わずに過ごしていた高齢の女性が、自宅室内で倒れているところを家族に発見されて搬送されてきたこともありました。室内にいるから安心、というわけではないのです」
夏は脱水による「脳梗塞」リスク増
Q.では気温が高くなっても脳卒中のリスクが上がると聞きますが、本当なのでしょうか。理由も含めて、教えてください。
小澤さん「近年は猛暑日や熱帯夜が増加しており、日中だけでなく夜間にも体への負担が続く環境となっています。こうした状況は脱水や自律神経の乱れを引き起こしやすく、結果として気温が高い時期も脳卒中のリスクが高まります。
脳卒中は一つの病気の名前ではなく、脳の血管に起こるトラブルの総称です。具体的には、血管が詰まる『脳梗塞』と、血管が破れる『脳出血』『くも膜下出血』に分けられます。つまり、“詰まる”か“破れる”かで整理すると、とてもシンプルに理解できます。
冬は血圧の急上昇による脳出血、脳梗塞が多いです。一方、夏のような暑い時期は、脱水による血液の濃縮が脳梗塞リスクを高めます。実際の臨床現場でも、夏の発症例は少なくありません。
搬送後や入院の場面で、患者さんやご家族からは、『この時期でも起こるんですね』『熱中症かと思っていました』『まさか脳の病気だとは思いませんでした』といった声が聞かれることもあります。主な原因は次の通りです」
(1)脱水による血液の「ドロドロ化」
暑い環境では、汗をかくことで体内の水分が失われます。水分補給が不十分な状態が続くと、血液は徐々に濃縮され、いわゆる「ドロドロの状態」になります。
この状態では血管内で血栓(血の塊)が形成されやすくなり、それが脳の血管を詰まらせることで、脳梗塞を発症するリスクが高まります。特に注意が必要なのは、こうした変化が自覚しにくい点です。喉の渇きを感じた時点で、すでに脱水が始まっています。
(2)血圧の変動と自律神経の乱れ
暑さによって血管は拡張し、一時的に血圧は下がりやすくなります。しかし、脱水や体調不良が重なると血圧は不安定となり、急激な変動を起こすことがあります。
また、屋外と冷房の効いた室内との温度差は、冬場のヒートショックに類似した影響を体に与えることがあり、さらに寝苦しさによる睡眠不足は、自律神経のバランスを乱します。
その結果、血圧や心拍の調整機能に影響が及び、こうした要因が重なることで、脳卒中のリスクが高まると考えられています。
(3)気付きにくい「暑い時期特有のリスク」
冬であれば「寒さ=危険」という明確なイメージがあるため、自然と警戒心が働きます。一方で夏は、体調の変化を「暑さのせい」と捉えやすく、リスクへの感度が低くなりがちです。水分を取っているつもりでも実際には不足していたり、倦怠(けんたい)感やめまいといった症状を熱中症と混同してしまったりすることで、脳卒中の前兆を見逃してしまう可能性もあります。
こうした「気付きにくさ」そのものが、夏の脳卒中リスクを高める一因といえます。暑い時期に脳卒中の発症リスクを高めるNG行為は次の通りです。
【脳卒中のリスクを高めるNG行為】
・日中に水分をあまり取らない(喉が渇いてから飲む習慣)
・夜間、トイレを避けるために意図的に水分を控える
・エアコンの使用を我慢して、室内が高温になる
・アルコールを水分補給の代わりにしてしまう
・コーヒーや紅茶などのカフェイン飲料に偏った水分補給
・暑い時間帯に急激な運動を行う
・高血圧の薬を自己判断で中断してしまう
これらの行動が度重なることで体に負担をかけ、脳卒中のリスクを高める要因となります。特に注意が必要なのが、アルコールによる水分補給の代替です。
アルコールには強い利尿作用があり、飲めば飲むほど体内の水分は失われていきます。その結果、脱水が進み、血液が濃縮されることで、脳梗塞のリスクが高まります。一方で、コーヒーや紅茶などのカフェインを含む飲料にも利尿作用はありますが、日常的な摂取量であれば大きな問題になることは少ないとされています。
ただし、これらに偏った水分補給では十分とは言えず、暑い環境では注意が必要です。また、カフェインには血圧を一時的に上昇させる作用もあるため、高血圧のある方は摂取量や摂取タイミングに気をつけることが望ましいです。夏場の水分補給は、水や電解質を含む飲料を基本としましょう。
(オトナンサー編集部)













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