団塊の世代「全員が75歳以上」の後期高齢者に…“とても元気な800万人”が「孤独社会」を防ぐ救世主になるワケ
団塊の世代が社会を活性化する可能性について、高齢者研究のNPO法人の理事長である筆者が解説します。

「団塊の世代」という言葉をよく聞く人は多いのではないでしょうか。これは、一般的に1947年から1949年に生まれた世代を指します。戦後の第一次ベビーブームによって生まれた約800万人の人々であり、日本の歴史の中でも突出して人口の多い世代です。
この世代は、その人数の多さゆえに、常に社会から注目され、大きな影響を与えてきました。子どもの頃には学校不足が問題となり、大学進学期には受験戦争の激化が話題になり、消費市場においても団塊世代の動向や行動は大きな存在感を持ちました。退職期には大量定年が社会的な関心事となり、年金制度や医療制度の議論においても常に中心的な課題になっています。
時代の変化に柔軟に対応してきた団塊の世代
その団塊の世代は、現在76歳から79歳で全員が後期高齢者となりました。もっとも、現在の後期高齢者は、多くの人が抱く高齢者像とはかなり異なり、大変に元気で健康的です。例えば、自立生活が難しくなってくる要介護2以上の人の割合は、70歳代後半だと6%程度に過ぎず、ほとんどの方が日常生活を自立して送れる状態です。80歳代前半でも1割強、80歳代後半でも2割台前半です。
スポーツ庁が行っている体力測定を見ると、その運動能力や体力が年々向上しているのが分かります。またひと昔前よりも、趣味や生涯学習、地域活動・就労などに取り組む人がかなり増え、活動的になっています。
厚生労働省が公表する2024年(令和6年)簡易生命表によると、77歳の人の平均余命は男性が10.8年、女性が14.1年となっており、ざっくり言えば平均しておおよそ90歳くらいまで生きることになります。
そして私は今、団塊の世代がこの期間をどう生きるかにとても注目しています。良くも悪くも、新しい価値観を柔軟に受け入れ、時代の変化に上手に適応してきた世代だからです。また、そんな世代の方々がどのように生きるかは、後に続く世代に影響を与えるはずだからです。
具体的には、次の2つの期待があります。
従来の枠に収まらない「新しい高齢者像」の確立
1つ目は、「新しい高齢者像」です。団塊の世代は若い頃、音楽やファッション、海外旅行やマイカーなどを通して、伝統的な日本人のライフスタイルから自由になろうとした人々と言えるでしょう。その人たちが今、75歳を超えてきたとき、従来の「お年寄りらしさ」に収まるのかどうかです。
期待するのは、単に健康で元気というだけでなく、社会参加や能力発揮への意欲や方法、終活への取り組み方や死に向き合う姿勢など、残された時間を最大限に生かし切る主体として生きる姿です。新しさに価値を置き、新しい時代を切り開いてきたという自負のある世代だからこそ、「こんな後期高齢者がいるのか」「こんな80代もありなのか」と思わせるような新しい高齢者像が生まれてもよいのではないかと思います。
そんな、支えられる側ではない自立した高齢者像は、世代間の葛藤や軋轢(あつれき)を解消する方向にも働くでしょう。
横並びの「仲間意識」が崩壊寸前の地域社会を救う
2つ目は、「新しい共同体」をつくってほしいということ。かつて地域社会のつながりを支えていた年中行事や冠婚葬祭、自治会・町内会、商店街などでのつながりも弱くなって地域コミュニティーは年々細っています。多くの人が所属感を持ちにくくなり、これが孤独や孤立が社会課題化する原因の一つとなっています。
そんな中、団塊の世代は、表面的には、他者とは違うこと、個性的であることを大切にしているように見えるけれども、多くが大企業に就職して勤め上げ、皆が同じようにマイホームを求め、人並みの家族と暮らしを実現するよう、横並びと仲間意識を持ってやってきた世代でもあります。
激しい競争をしてきたように見えるけれども、平均的・標準的な姿を意識しながら、落ちこぼれたり、はみ出したりしないように、人とのつながりや良好な関係づくりに心を砕いてきた世代です。私は、団塊の世代のそうした一面が、地域コミュニティーの崩れを何とか食い止め、新たな共同体づくりに寄与しないかと期待します。
また、団塊の世代はしがらみや慣習、情緒や感覚といったことより、合理性を重視する世代でもあります。人とのつながりや連帯感が人生を豊かにし、時には困難を乗り越える支えになるということを、自らの経験を通じて合理的・客観的に評価するでしょう。そうすれば、「住み替えによって新たな共同体を手に入れる」という、欧州では一般的でありながら日本ではなかなか進まない選択も、今後はさらに広がっていくかもしれません。
これまでも人数の多さゆえに社会に大きな影響を与えてきた団塊の世代の全員が、後期高齢者となりました。この世代がこれから10年、15年、20年をどのように生きるか。どのような高齢者像を示し、コミュニティーにどのように貢献していくか、後に続く私たちは、その姿から多くのことを学ぶことになるはずです。
(NPO法人・老いの工学研究所 理事長 川口雅裕)

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