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重い「自閉症」の11歳息子、初めて「宿泊訓練」へ トラブルを心配した母を救った特別支援学校の手厚いサポート

自閉症の息子を育てる女性ライターが、特別支援学校の宿泊訓練のエピソードについて紹介します。

宿泊訓練が楽しみで、何度も荷物を触る息子(べっこうあめアマミさん作)(べっこうあめアマミさん作)
宿泊訓練が楽しみで、何度も荷物を触る息子(べっこうあめアマミさん作)(べっこうあめアマミさん作)

 「べっこうあめアマミ」というペンネームでライターとして活動する私は、重度知的障害を伴う自閉症の11歳の息子と、きょうだい児である娘を育てながら、発達障害や障害児育児について発信を続けています。

 特別支援学校に通う息子が、この春小学6年生になりました。そして6年生最大の行事の一つとも言える「宿泊訓練」の時期がやってきました。重い障害があり、発語がなく、身辺の自立も完全にはできていない息子の宿泊行事となると、親としては不安も大きく、ドキドキ…。今回は、息子が参加した宿泊訓練を通して感じたことをお伝えします。

宿泊先の名前を聞くだけでソワソワしていた息子

 息子が通う特別支援学校では、毎年6年生になると1泊2日の宿泊訓練があります。これは宿泊施設に泊まり、友だちや先生と一緒に活動する行事です。

 発語がない息子は、自分の気持ちを言葉で伝えることができません。何を考えているのか分かりにくいことも多いのですが、今回は違いました。

 学校で宿泊先の名前を聞くと、サッと動いたり、注目したりすることが増えたそうです。

 毎日の連絡帳では先生からも、とても楽しみにしている様子を教えていただき、息子が宿泊訓練を心待ちにしていることを知りました。

 普通の学校でもこういった行事の際は事前学習があると思いますが、特別支援学校の事前学習は、特に念入りです。

 まず、宿泊訓練に備えて、学校ではみんなで体を洗ってお風呂に入る授業がありました。

 そして、宿泊行事の際は、当日に荷物を持っていくのが一般的だと思います。しかし息子の学校では、宿泊訓練用の荷物は事前に学校へ持参し、授業の中で先生やクラスメートと一緒に確認したそうです。

 大きな旅行バッグを前にした息子は、何度もバッグを触っていたといいます。きっと息子なりに、特別なイベントが近づいていることを感じていたのでしょう。そんな話を聞いているだけで、親としてもうれしくなりました。

1泊2日とは思えない荷物の量

 ただ、宿泊訓練当日までの準備は親としてはけっこう大変でした。まず行われたのが説明会です。

 健康調査票や薬の依頼書など提出書類も多く、さらに宿泊訓練の一週間前からは毎日の健康チェックが必要でした。

 そして驚いたのが荷物の量。大きな旅行バッグと小さなリュック。それぞれに入れる物が細かく指定されていました。

【用途ごとに小分け指定されたセット】
・お風呂用セット
・寝る時用セット
・食事用セット
・着替え一式

 用途ごとに分けられたポーチには、大きく名前が書いてあり、指定されたものを入れます。最初は「ここまで細かく?」と思いましたが、考えてみれば、特別支援学校に通う子の多くは自分で荷物を管理することが難しいのです。

 支援する先生やボランティアの方々が、誰が見ても必要な物をすぐに取り出せる状態にしておく必要がありました。学校で蓄積された、安全に行事を運営するための工夫とノウハウが、生きているのでしょう。

 息子の場合は指定のものよりさらに荷物が増えます。夜間用のオムツ、おねしょシーツ、防水ズボン、予備の着替え…。

 息子は今でも昼夜ともに排せつを失敗することがあります。また、食べた物を吐き戻してしまったり、唾遊びをして服をぬらしたりすることも多いです。

 そのため、着替えは多めに準備しました。

 そうして完成した荷物を見たとき、私は思わず笑ってしまいました。1泊2日とは思えない量だったからです。

 実際、荷物をまとめた後の息子の洋服ダンスは、かなりスカスカになっていました。

手厚い支援の中で過ごした1泊2日

宿泊訓練から帰り、疲れたのかすぐに眠ってしまった息子(べっこうあめアマミさん作)
宿泊訓練から帰り、疲れたのかすぐに眠ってしまった息子(べっこうあめアマミさん作)

 そして迎えた当日。送り出す側の親としては、少し緊張します。

「何かトラブルを起こしたりはしないだろうか」

「施設のものを汚してしまわないだろうか」

「パニックにならないだろうか」

 そんな心配が頭をよぎりました。しかし、学校側の引率体制を見ると少し安心感が出てきます。

 引率する先生の体制は、子ども2人に対して1人つくことができるくらいの人数、さらにボランティアの方々も参加してくださったそうです。一般的な学校の行事ではなかなか見られない手厚さだと思います。

 宿泊施設では、息子は初めての環境に少しソワソワし、落ち着かない様子を見せた場面もあったと聞きました。それでも大きなかんしゃくを起こすことなく過ごせたとのこと。

 友だちと食事をし、一緒に活動し、同じ部屋で眠る。息子にとっては、どれも貴重な経験だったことでしょう。

 驚くことに、一度寝たらなかなか起きない息子が、宿泊訓練先では午前5時台に起きたそうです。普段とは違う場所で、友だちと一緒に寝る特別感。そんな非日常のドキドキがあったからかもしれません。

 息子は宿泊訓練がどんな感じだったか、私に話してくれませんが、代わりに先生が宿泊訓練のしおりに、びっしりと1泊2日の息子の様子を書いてくれていました。おかげで私は、息子の充実した時間を知ることができたのです。

 宿泊訓練を終え、無事に学校から帰宅した息子は、眠そうながらもどこか満足そうな顔をしていました。やはり、疲れもあったのでしょう。夕方からぼんやりと過ごし、いつもより早く眠ってしまいました。

 大きなトラブルもなく帰ってきてくれたことに私は心からほっとして、息子が持ち帰った大量の汚れ物の処理に取り掛かったのでした。

息子だけでなく家族にとっても特別な時間だった

 実は息子が宿泊訓練へ行っている間、私にも少しだけ非日常の時間がありました。きょうだい児である娘と2人で、夜に外食に出かけたのです。

 普段は息子がいるので、夜2人で外食なんてできませんが、その日は娘とゆっくり話をしながら食事を楽しめました。

 娘は、「お兄ちゃんは今ごろ何をしているかな」と息子のことばかり話していて、娘にとっても「いつもいる兄がいない」ことが気になっているようでした。それでも、平日夜の母娘2人での外食は特別な時間で、娘もとてもうれしそうでした。

 私も久しぶりに穏やかな時間を過ごすことができて、ありがたかったです。

特別支援学校だからこそできる経験

 障害がある子どもの就学先を考えるとき、「本当に特別支援学校でよかったのだろうか」と悩む保護者の方もいると思います。私自身も入学前は何度も考えました。

 しかし、今回の宿泊訓練を通じて改めて感じたのは、子どもたちの特性を深く理解した上で、一人一人が安全に経験を積めるように支えてくれる環境のありがたさです。普通の学校では、こんなに手厚く大人がフォローしてくれることはないでしょう。

 重い知的障害がある子どもたちに、「友だちと泊まる」という特別な体験をさせることは、非常にハードルの高いことです。だからこそ、事前準備から当日の支援まで、本当に多くの方々が助けてくださいました。

 そのおかげで息子は楽しい思い出をつくることができ、親として感謝の気持ちでいっぱいです。

 障害があっても、さまざまな経験を積み重ねながら成長していく。その機会を支えてくださる先生方や関係者の皆さまには、本当に頭が下がります。

 手厚い支援の中で、子どもたちの挑戦を後押ししてくれる特別支援学校だからこそ実現した宿泊訓練は、きっと息子の心に残る思い出になったと思います。

(ライター、イラストレーター べっこうあめアマミ)

べっこうあめアマミ(べっこうあめあまみ)

ライター、イラストレーター

知的障害を伴う自閉症の息子と「きょうだい児」の娘を育てながら、ライター、電子書籍作家として活動。「ママがしんどくて無理をして、子どもが幸せになれるわけがない」という信念のもと、「障害のある子ども」ではなく「障害児のママ」に軸足をおいた発信をツイッター(https://twitter.com/ariorihaberi_im)などの各種SNSで続けている。障害児育児をテーマにした複数の電子書籍を出版し、Amazonランキング1位を獲得するなど多くの障害児家族に読まれている(https://www.amazon.co.jp/dp/B09BRGSY7M/)。「べっこうあめアマミ」というペンネームは、障害という重くなりがちなテーマについて、多くの人に気軽に触れてもらいたいと願い、夫と相談して、あえて軽めの言葉を選んで付けた。

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