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「支援学校より支援級が上」は誤解 自閉症児の母が両方経験して分かった“わが子に合う環境”の選び方

自閉症の25歳の息子を育てる筆者が、息子の育児について振り返ります。

わが子に合った学校選びが重要(画像はイメージ)
わが子に合った学校選びが重要(画像はイメージ)

 私には、25歳になる知的障害を伴う自閉症の息子がいます。2歳3カ月のときに、正式に診断を受けました。

「特別支援学校に入ったら、もう支援級には移れないのではないか」

 保護者から、このような質問を受けることがあります。地域によっては「ほぼ不可能」と言われることもあり、不安に感じている人も多いようです。

 確かに一般的には、支援級から特別支援学校へ移るケースの方が多く、逆のケースは珍しいとされています。いわば“下から上に上がる”ようなイメージで捉えられ、「一度支援学校に入ったら戻れない」と思い込んでしまうのも無理はありません。

 しかし、実際にはまったく不可能というわけではありません。

 わが家の場合、息子は小学校入学時、特別支援学校を選びました。オムツがやっと外れたばかりで、着替えやあいさつ、椅子に座るといった基本的な身辺自立が十分ではなく、集団生活への適応も難しい状態でした。

 そのため、手厚い支援体制のある特別支援学校の方が、この子にとって安心して成長できる環境だと判断しました。先生の数も多く、設備も整っており、個別の支援計画も支援級よりも丁寧に立てられていました。

 実際、1年生、2年生と過ごす中で、生活面は少しずつ安定していきました。

 転機が訪れたのは、小学2年生のときです。東京都の指導主事による巡回指導があり、息子が漢字を書くことに強いこだわりと集中力を見せている様子を高く評価されました。

 そして、「3年生からは支援級の方がよいのではないか」という提案を受けました。

 しかし、正直、戸惑いがありました。当初は、小学校から高校まで12年間、特別支援学校で過ごすつもりでいましたし、当時は地域の学校の支援級に対して、学校の片隅に追いやられている感じであまり良いイメージを持っていなかったからです。

 それでも、担任の勧めもあり、いくつかの支援級を見学することになりました。支援級の定員は8人に対して担任1人と決まっていますが、学校として支援級の生徒が1年生から6年生合わせて合計40人いる学校と、合計8人の学校を見学しました。

 当時は小規模な支援級を望んでおり、見学したときは児童4人でしたが、入学後、転校生や新入生が入ってきて、8人になっていてびっくりしました。このように新年度にはガラリと変わることがあります。

 さらに転校後、最初に感じたのは「驚き」でした。支援級には、オムツをつけている子や、消しゴムを口に入れてしまう子、教室を飛び出してしまう子など、さまざまな特性を持つ子どもたちが在籍していました。その姿を見たとき、私は正直、「あれ?」と戸惑いました。

 というのも、息子が通っていた特別支援学校では、トイレトレーニングなど生活面の指導がかなり丁寧に行われており、短期間でオムツが外れていく子が多かったからです。もちろん個人差はありますが、「ここまで手厚く関わると、こういう力が伸びるのか」と感じていた直後だったこともあり、そのギャップに驚きました。

 同時に、こんなことも思いました。

「この子たちは、最初から特別支援学校に通っていたら、また違う伸び方をしていたのではないだろうか」と。

 もちろん、それぞれの家庭の考えや事情がありますし、どの選択が正解かは一概には言えません。ただ、環境によって子どもの伸び方が大きく変わるということを、改めて強く実感した出来事でした。

 一般的に、支援学校から支援級への移行が難しいとされるのは、「その子にとってどの環境が最も適しているか」という観点で判断されているからです。支援級では十分な支援が受けられないと判断されれば、移行は難しくなります。

 一方で、「ある程度集団の中で学ぶ力がついてきた」「学習面での力をさらに伸ばした方がよい」といった場合には、支援級への移行が勧められることもあります。

 つまり、「上か下か」という単純な話ではなく、その子の状態に応じて環境を見直していくことが大切なのです。

 私は常々、親は子どものことをよく知っている一方で、学校教育については専門家ではないと感じています。授業の進め方や支援のあり方、集団の中での育ち方などは、やはり学校や教育委員会の方が知見を持っています。

 だからこそ、「自分がすべて分かっている」と思い込むのではなく、専門家の意見にも耳を傾けながら、一緒に考えていく姿勢が必要だと感じています。

 進路は、一度決めたら終わりではありません。その時々の子どもの姿に合わせて見直し、必要であれば環境を変えていくというその柔軟さこそが、子どもの可能性を広げるのだと思います。

「特別支援学校に入ったら戻れない」と思い込まず、目の前のわが子にとって何が最善かを考え続けること。それが、後悔のない選択につながるのではないでしょうか。

 最後に、これは「一度、支援級に入れてしまったら二度と通常級には戻れない」という場合も同じだと思います。

(子育て本著者・講演家 立石美津子)

【画像】「えっ…?そうだったの……?」 これが「発達障害児」にみられることのある行動です(5つ)

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立石美津子(たていし・みつこ)

子育て本著者・講演家

20年間学習塾を経営。現在は著者・講演家として活動。自閉症スペクトラム支援士。著書は「1人でできる子が育つ『テキトー母さん』のすすめ」(日本実業出版社)、「はずれ先生にあたったとき読む本」(青春出版社)、「子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方」(すばる舎)、「動画でおぼえちゃうドリル 笑えるひらがな」(小学館)など多数。日本医学ジャーナリスト協会賞(2019年度)で大賞を受賞したノンフィクション作品「発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年」(中央公論新社、小児外科医・松永正訓著)のモデルにもなっている。オフィシャルブログ(http://www.tateishi-mitsuko.com/blog/)、Voicy(https://voicy.jp/channel/4272)。

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