子どもの近視治療「視力が良くなればOK」は誤り? 将来の失明防ぐために確認すべき4項目とは
子どもの近視治療はどのように選べばよいのでしょうか。眼科医に聞きました。

子どもの近視は、単に「黒板が見えにくいなら眼鏡をかければよい」「見えるようになればよい」という考え方で対処すればよいという問題ではありません。近視が進むほど、目の前後の長さである「眼軸長」が伸び、将来的に白内障、緑内障、網膜剥離、近視性黄斑症などのリスクが高まることが知られているからです。放置すれば、失明する可能性があります。
これまで小児近視治療では、低濃度アトロピン点眼、オルソケラトロジー、多焦点ソフトコンタクトレンズなどが選択肢となってきました。さらに6月からは、近視の進行抑制を目的とした「近視管理眼鏡」(近視管理用眼鏡)も加わる見込みです。子どもの近視治療はどのように選べばよいのでしょうか。いわみ眼科(兵庫県芦屋市)理事長で眼科医の岩見久司さんに聞きました。
「近視をできるだけ進行させないこと」が近視治療の一番の目標
Q.そもそも子どもの近視治療は、何を目標にする治療なのでしょうか。
岩見さん「近視治療というと、『裸眼視力を良くする治療』と考える保護者も多いと思います。もちろん、日常生活で見えやすくなることは大切です。例えば、オルソケラトロジーは、寝ている間に専用レンズを装用し、朝外すことで日中を裸眼で過ごしやすくする治療です。
しかし、小児近視治療の本質的な目的は、裸眼視力を上げることそのものではありません。一番の目標は、近視をできるだけ進行させないことです。近視が強くなるほど、将来の目の病気のリスクが高まります。つまり、小児近視治療は『今見えるようにする治療』であると同時に、将来の目を守るための治療でもあります。
そのため、治療を選ぶときには『裸眼で見えるようになるか』だけではなく、近視の進行をどう抑えていくかを眼科医と確認することが重要です。近視治療を行う上で目標を理解することは非常に大切です」
Q.近視治療を受けるとき、確認すべき検査はありますか。
岩見さん「あります。特に確認したいのが、『眼軸長』を測定しているかどうかです。眼軸長とは、目の前後の長さのことです。小児の近視は、多くの場合、この眼軸長が伸びることで進行します。そのため、視力や眼鏡の度数だけでなく、眼軸長の変化を追うことで、近視がどの程度進んでいるのかをより正確に評価しやすくなります。近視治療を受ける際には、次の4点を眼科医に確認するとよいでしょう」
【近視治療を受ける際、眼科医に確認すべきこと】
・眼軸長を測定しているか
・近視の進行速度を説明してくれるか
・治療効果をどの指標で評価するか
・必要に応じて治療の変更や併用を検討できるか
これは、特定の治療を否定する話ではありません。低濃度アトロピン点眼、オルソケラトロジー、多焦点ソフトコンタクトレンズ、近視管理眼鏡はいずれも有用な選択肢です。大切なのは、どの治療を選ぶかだけでなく、その治療で近視の進行をきちんと管理できているかです。
Q.低濃度アトロピン点眼、オルソケラトロジー、多焦点ソフトコンタクトレンズ、近視管理眼鏡は、それぞれどのような基準で選べばよいのでしょうか。
岩見さん「『どの治療が一番よいか』という問いには、単純な答えはありません。小児近視治療は、年齢や近視の強さ、進行スピード、乱視の有無、アレルギー体質、生活習慣、スポーツの有無、本人の性格、保護者の管理力などによって向き不向きが変わります。
例えば、低年齢でまず治療を始めたい場合は、低濃度アトロピン点眼が検討しやすい選択肢です。『日中裸眼で過ごしたい』『保護者が夜のレンズ管理に関われる』という場合は、オルソケラトロジーが向いていることがあります。
『強度近視でオルソケラトロジーが難しい』『アレルギーが強い』『1日使い捨ての衛生面を重視したい』という場合は、多焦点ソフトコンタクトレンズが選択肢になります。
6月から導入予定の近視管理眼鏡とは、通常の眼鏡のように見え方を矯正しながら、特殊なレンズ設計によって近視の進行抑制も狙う眼鏡です。代表的なレンズとしては、『MiYOSMART(ミヨスマート)』(6月1日発売予定)や『Stellest(ステレスト)』(6月発売予定)などがあります。ガイドラインでは、MiYOSMARTは5〜18歳、Stellestは7〜18歳が臨床試験の対象で、5歳未満には推奨しないとされています。
このように『コンタクトレンズが怖い』『眼鏡ならしっかりかけられる』という場合は、近視管理眼鏡が有力です。大切なのは『一番強い治療』を選ぶことではなく『その子が続けられる治療』を選ぶことです」
Q.子どもの近視治療を進めるにあたり、保護者が気を付けるべきことはありますか。
岩見さん「近視治療は『始めたら終わり』ではありません。定期的に眼科を受診し、視力、屈折度数、できれば眼軸長を確認しながら、治療効果を評価していく必要があります。
また、治療だけでなく生活習慣も重要です。屋外活動を増やすこと、近くを見る時間を長くし過ぎないこと、スクリーンタイムを管理することも、近視進行抑制には大切です。
そしてもう一つ大切なのは、治療の目的を保護者と子ども本人が理解することです。近視治療は、今だけの見え方を整えるためだけの治療ではありません。将来の目の病気のリスクを少しでも減らし、生涯にわたって目を守るための治療です。
選択肢が増えた今だからこそ、よく説明を聞き、お子さんに合った治療を眼科医と一緒に選んでいくことが大切です」
(オトナンサー編集部)









コメント