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今のピンポンダッシュ、実は「トクリュウ」の下見? 元刑事が警告する見逃せない2つのサイン

近年、「匿名・流動型犯罪グループ」(トクリュウ)による強盗事件が相次いでいます。こうした強盗事件の対策について、元刑事が解説します。

トクリュウがピンポンダッシュをするケースも(画像はイメージ)
トクリュウがピンポンダッシュをするケースも(画像はイメージ)

 全国で相次ぐ「匿名・流動型犯罪グループ」(トクリュウ)による強盗事件。ニュースで大きく報じられるのは、犯人が住宅へ押し入った場面や、容疑者が逮捕された場面です。しかし実際の捜査では、その数日前、場合によっては数週間前から、住宅の周辺で不審な人物が目撃されていたり、家族構成や生活状況を探るような行動が確認されていたりすることがあります。

 ピンポンダッシュ、不審な訪問など、こうした行動が住宅の情報収集として行われるケースもあります。元刑事の視点から、防犯のために知っておきたいポイントを2つ解説します。

強盗は突然やって来ない まず警戒したい「情報収集型の下見」

 近年のトクリュウ型強盗が従来の侵入窃盗と大きく異なるのは、住人との接触を避けるのではなく、むしろ住人がいることを前提に犯行へ及ぶケースが目立つ点です。

 かつて空き巣の多くは、住人が留守の時間帯を狙いました。犯人にとって住人との遭遇は大きなリスクであり、できる限り接触を避けることが合理的だったからです。ところが近年相次いだ強盗事件では、複数人が住宅へ押し入り、住人を脅迫し、現金や貴重品の保管場所を聞き出すという、在宅を前提にした犯行が目立っています。

 警察庁は2025年(令和7年)版警察白書で、トクリュウはSNSなどを利用して闇バイトとして実行役を募集し、匿名性の高い通信手段を用いて犯罪を敢行する集団として説明しています。その特徴は、特殊詐欺だけでなく、強盗、窃盗、悪質商法など多様な犯罪に関与し、犯罪の役割が細かく分業化されている点にあります。

 近年の強盗事件は、事前に次のような情報を集めた上で行われるケースがあります。

・誰が住んでいるのか。
・高齢者だけの世帯なのか。
・昼間は留守なのか。
・防犯カメラは設置されているのか。

 こうした情報を集めた上で、犯行対象を選ぶケースもあります。つまり、トクリュウ型犯罪において警戒すべきなのは、その前に行われる下見や情報収集であり、犯罪の準備段階として見逃してはならないのです。

【サイン1】「屋根が浮いていますよ」に要注意

 近年、全国で問題になっているのが点検商法です。国民生活センターによると、2022年度の屋根工事の点検商法に関する相談件数は、2018年度の約3倍に増えており、契約当事者の8割超が60歳以上だといいます。「屋根が壊れているように見えました」「分電盤の点検をしています」「床下を見せてください」、こうした言葉で訪問し、不必要な工事契約を結ばせるケースが報告されています。

 もちろん、全ての訪問業者が悪質というわけではありません。ですが、防犯の観点からさらに注意したいのは、家の中の情報を見られてしまうことです。家族構成や生活状況、防犯設備の有無。家の中に入れば、多くの情報が分かってしまいます。実際に自治体や警察も、住宅点検を装った下見行為への注意を呼び掛けています。

 神奈川県は「危険!住宅の点検を装った強盗の下見に注意!」として、業者を装って住宅の無料点検をすると言って上がり込み、家の様子や家族の状況などを下見した者が、後日、強盗事件を起こす可能性があると警戒を呼び掛けています。

 家の中に入れば、誰が住んでいるのか、どの部屋が使われているのか、防犯カメラやセンサーライトはあるのか、金庫や貴重品が置かれていそうな場所はどこかといった情報が、一度に把握されてしまう危険性があるのです。

【サイン2】ピンポンダッシュは住人チェック?

 チャイムだけ鳴らして立ち去る、いわゆる「ピンポンダッシュ」。一見すると、子どものいたずらに見えるかもしれません。

 しかし、防犯上は別の見方もあります。近年のトクリュウ型強盗が重視しているのは、単純な留守確認だけではありません。むしろ重要なのは、「誰が住んでいるのか」という情報です。例えば、犯罪者は次のような情報を収集しようとしています。

・最初に誰が応対するのか。
・応答までどれくらい時間がかかるのか。
・高齢者なのか。
・若い男性はいるのか。
・犬を飼っているのか。

 こうした情報も、犯罪者にとっては判断材料になり得ます。実際、侵入窃盗や強盗では、犯人が事前に周辺を歩き回ったり、住宅の出入りを観察したりしていたケースが珍しくありません。

 もちろん、すべてのピンポンダッシュが犯罪と結び付くわけではありません。子どものいたずらである場合もあるでしょうし、配達員の誤操作や訪問先の間違いかもしれません。ただ、「誰が住んでいるのか」を確認するための情報収集が行われるケースもあることは知っておいてほしいと思います。

今日からできる防犯対策

 こうした犯罪者の事前情報収集から身を守るために、まずは基本的な防犯意識が大切です。

・突然訪問してきた業者を安易に家へ入れない
・インターホン越しに対応する
・家族構成や資産状況を話さない
・不審な車両や人物を見かけたら記録しておく
・近所や家族と情報共有する

 最近は録画機能付きインターホンも普及しています。こうした設備は、防犯意識の高さを示す意味でも有効です。

 犯罪者は「入りやすい家」を探しています。逆に言えば、警戒心が高く、住民同士のつながりがあり、不審情報が共有されている地域は、犯人にとって面倒な場所になります。トクリュウ型犯罪では実行役が使い捨てのように動かされることもありますが、それでも犯行前の情報収集段階で「この家はやりにくい」と判断されれば、標的から外れる可能性はあります。

 防犯とは、高価な機材を導入することだけではありません。日常の中で違和感に気付き、それを見逃さないことも、立派な防犯です。「ただのいたずらかな」で終わらせるのではなく、防犯の視点から考えてみる。その小さな意識が、自分自身や大切な家族の安全、そして財産を守る第一歩になるのです。

(治安戦略アナリスト・危機管理スペシャリスト 小比類巻文隆)

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小比類巻文隆(こひるいまき・ふみたか)

元警視庁警部補/治安戦略アナリスト・危機管理スペシャリスト

30年にわたって警察官として勤務し、危機管理の第一線を歩んできたスペシャリスト。1993年に警視庁へ入庁後、爆弾処理班を経て中国語通訳捜査官、さらに国際捜査官として、銃器・薬物犯罪を中心に情報収集や秘匿捜査、海外組織による密輸入事案の解明に従事。殺人・強盗・誘拐など重大事件の捜査本部にも多数参加。2023年に退官後は、警察での実践経験を社会に還元すべく、講演や執筆、メディア対応など幅広く活動中。現場のリアルを伝える、数少ない治安専門家のひとり。【公式サイト】https://kohiruimaki-fumitaka.info/contact

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