オトナンサー|オトナの教養エンタメバラエティー

以前より視力落ちたけど…本の文字読めれば「眼鏡」不要? 視力低下に潜む“意外なリスク”【眼科医解説】

視力が低下しているにもかかわらず、裸眼のままで過ごすリスクについて、眼科医に聞きました。

裸眼視力0.7未満で文字が読める状態でも、眼鏡をかけた方がよい?(画像はイメージ)
裸眼視力0.7未満で文字が読める状態でも、眼鏡をかけた方がよい?(画像はイメージ)

 普通自動車免許の取得時や更新時は「左右それぞれの視力が0.3以上で、両目の視力が0.7以上あること」という条件を満たさなければなりません。この条件を満たすことができない場合は眼鏡かコンタクトレンズを使い、視力を矯正する必要があります。運転免許のために眼鏡を購入した経験がある人は多いと思います。

 ところで、視力が0.7未満でも裸眼の状態で本が読める人もいますが、この場合でも普段から眼鏡やコンタクトレンズを着用した方がよいのでしょうか。視力が低下しているにもかかわらず、裸眼のままで過ごすリスクについて、いわみ眼科(兵庫県芦屋市)理事長で眼科医の岩見久司さんに聞きました。

視力が低下した場合は基本的に眼鏡の使用を推奨

Q.そもそも、運転免許の取得時、更新時はどの程度の視力が求められるのでしょうか。

岩見さん「普通免許は片目で0.3以上の視力、両目で0.7以上の視力が基準となります。大型免許や二種免許はこれより条件が厳しく、片目0.5以上、両目で0.8以上の視力、さらに深視力という遠近感を持っていることが基準になります」

Q.両目の視力が0.7未満の場合、運転免許を取得する予定がなくてもすぐに眼鏡を作った方がよいのでしょうか。眼鏡を作る際の視力の目安があれば、併せて教えてください。

岩見さん「ピントが合っていないことを視力が出ない原因とする場合、視力0.7未満というのは、遠視の場合と近視の場合とでは意味合いが大きく変わります。

視力検査の結果は5メートルの距離での見え方を意味します。遠視の人の視力0.7は5メートルよりはるか向こうにピントが合っているということになるため、家の中や足元にピントがまったく合っていない状態です。転倒の危険も増えますし、日常生活圏での文字の見え方、例えばテレビの字幕なども見えていないということになります。これは日常生活に強く負担がかかっている状態であり、眼鏡の使用が強く推奨されます。

近視の人の場合は近寄れば見えるため、日常生活が不自由かどうかということになります。0.7程度であればよいですが、それよりも視力が下がった状態だと、やはりいろいろなものに対して見落としが増えるため、生活に負担がかかっている状態と言えます」

Q.では、もし視力が低下しているにもかかわらず裸眼のままで過ごした場合、転倒以外にはどのようなリスクが生じる可能性があるのでしょうか。

岩見さん「遠視の人の視力低下は日常生活圏にピントが合っていないため、目からの情報が入っていない状態での生活を意味します。目の病気が出ても気付かないことも多いため、私は診療時、目の異常に対して『老眼のせいだと思っていた』とおっしゃる人によく会います。

さらに目を使った生活を送っていないと脳への刺激が低下し、認知機能に影響を与えるという報告もあります。目は外界の8割の情報が入ってくる臓器なので、目からの情報を使っていないと脳が衰えるのは理にかなっています。逆に近視が原因であれば、近づけば見えるため、近視の程度が軽いものであれば放置しても問題ない場合もあります」

Q.運転免許の取得用、更新用に眼鏡を作ったものの、裸眼でも「パソコンの文字が読める」「文庫本が無理なく読める」などの理由で、車の運転時を除き、眼鏡を使わない生活を続けたとします。その場合、問題はないのでしょうか。それとも、目に何らかの影響を与える可能性があるのでしょうか。

岩見さん「この場合は近視が原因で視力が下がっていることになりますが、不自由がなければ実際、あまり問題はありません。しかし近視が強い人の場合、例えばスマホを持ったとき、顔を画面に近づけてしまう傾向にあり、姿勢が悪くなり、眼精疲労や肩凝りを引き起こすことがあります。

さらに物を近くで見ると斜視が悪化する場合もあります。眼科医としては、やはり健康的に目を使っていただきたいため、ごく軽い近視の場合を除き、眼鏡やコンタクトレンズの使用を推奨します」

(オトナンサー編集部)

【要注意】「えっ…」 これが「視力低下」を放置するリスクです!

画像ギャラリー

岩見久司(いわみ・ひさし)

医師(眼科専門医、レーザー専門医、医療法人社団久視会 いわみ眼科理事長、兵庫医科大学非常勤講師)

大阪市立大学医学部卒。医学博士。1日100人を超す外来診療をこなしながら、若手医師の教育や医師・医療関係者向けの講演も頻繁に行っている。加齢黄斑変性や糖尿病網膜症などを得意とする網膜内科医。近年、網膜の病気につながる可能性のある子どもの近視が急増しており、近視治療にも積極的に取り組んでいる。多くの人が「100歳まで見える目」を維持できるよう、2023年度から啓発活動を展開している。いわみ眼科ホームページ(https://iwami-eyeclinic.com)。ドクターズ・ファイル(https://doctorsfile.jp/h/189711/df/1/)。いわみ眼科チャンネル(youtube)(https://www.youtube.com/@dr.iwami911eye)。

コメント