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障害児を無理に自立させる必要はない? 親なき後を見据え、身に付けさせたい「他者に頼る力」

自閉症の25歳の息子を育てる筆者が、子どもの自立について思いをつづります。

子どもの自立とは?(画像はイメージ)
子どもの自立とは?(画像はイメージ)

 子育てをしていると、「何ができるようになるか」という目に見える成果に、つい意識が向いてしまいます。

 できることが増えるのは確かにうれしいことですし、それを成長の目安として考えるのは自然なことだと思います。

 ただ、特に障害のあるお子さんの子育てにおいては、「できる・できない」だけでは測れない大切な視点があるのかもしれません。

 本当に目指したいゴールはどこにあるのか、一度立ち止まって考えてみることも意味のあることのように感じます。

 まず気を付けたいのが、目標の高さです。

「できるだけ良い環境で学ばせたい」「将来困らないようにしてあげたい」という思いから、「普通級に入れるために」と無理を重ねたり、「一般就労を目指して」と早い段階から負荷の高いトレーニングを続けたりするケースも少なくありません。

 もちろん、そのすべてが悪いわけではありませんが、思いが強くなり過ぎると、子どもにとっては大きなプレッシャーになってしまうこともあります。

 結果として自己肯定感が下がってしまったり、学校に行くこと自体がつらくなってしまったりするなど、いわゆる「二次障害」につながる可能性も考えられます。

 また、良かれと思って続けてきた関わりが、長い目で見たときに親子関係の負担となり、将来的に80代の高齢の親が、50代のひきこもりの子どもや自立が困難な子どもの生活をサポートする、いわゆる「8050問題」に発展するケースもあると言われています。

 だからこそ、「この目標は本当にこの子に合っているのか」「親の願いが先行し過ぎていないか」と、ときどき立ち止まって見直す視点が大切になってくるのではないでしょうか。

 次に考えてみたいのが、「自立」という言葉の意味です。

 一般的には「何でも一人でできること」が自立と捉えられがちですが、障害の特性によっては、すべてを一人でこなすことが現実的ではない場合もあります。

 そうしたとき、「できないことをどう補うか」という視点に立つことが、より現実的で、子どもにとっても負担の少ない道につながることがあります。

 例えば、地域の支援者とつながっておくことや、福祉サービスを上手に活用すること、周囲の大人と安心して関われる関係を築いておくこと。こうした環境を一つずつ整えていくことが、親が関われなくなった後にも長く続いていく、子どもの「本当の支え」になります。

「誰かに頼りながら生活できること」も、自立の一つの形と考えてみると、少し見える景色が変わってくるかもしれません。

 その中でも特に大切だと感じるのが、「SOSを出せる力」です。

 困ったときに黙って抱え込んでしまうのではなく、「助けてください」と伝えられること。この力は、日々の生活を安全に送る上で、とても大きな支えになるように思います。

 私の息子は、暗記は得意でしたが、お金の計算はできませんでした。中学の面談で「せめて買い物くらいは」と焦っていた私に、担任の先生がこんなふうに声をかけてくださいました。

「できないことを無理にやらせるよりも、『お金の計算が分からないので、お財布から取ってください』と伝えられるようになることの方が大切かもしれませんね」

 この言葉を聞いたとき、無理に「できるようにすること」ばかりに目を向けていた自分に気付き、少し肩の力が抜けたのを覚えています。

 現在、息子は一人で外出したり、外で食事を楽しんだりしています。それは決して「すべてを一人でできるから」ではなく、困ったときに周囲に頼ることができる、いわゆる「受援力」があるからこそ成り立っているのではないかと感じています。

 では、親としてどこをゴールに考えていけばよいのでしょうか。その答えは一つではありませんが、「安心して日々を過ごせること」は、多くの家庭に共通する大切な願いではないでしょうか。

 大きな事故やトラブルに巻き込まれず、災害などの不測の事態にも何とか対応しながら、その子なりのペースで生活を続けていけること。

 特別な成果を求めることよりも、穏やかな日常が積み重なっていくことの方が、実はずっと大切なのかもしれません。

 子どもが笑顔で一日を終え、また明日を迎えられること。その積み重ねを支えていくことこそが、私たち親にできる大切な役割の一つではないかと感じています。

「できるようにすること」だけに目を向けるのではなく、「どうすれば安心して生きていけるか」という視点を持つこと。

 そこに、障害児育児における1つのゴールが見えてくるのかもしれません。

(子育て本著者・講演家 立石美津子)

【画像】これが「発達障害児」にみられる5つの行動です

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立石美津子(たていし・みつこ)

子育て本著者・講演家

20年間学習塾を経営。現在は著者・講演家として活動。自閉症スペクトラム支援士。著書は「1人でできる子が育つ『テキトー母さん』のすすめ」(日本実業出版社)、「はずれ先生にあたったとき読む本」(青春出版社)、「子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方」(すばる舎)、「動画でおぼえちゃうドリル 笑えるひらがな」(小学館)など多数。日本医学ジャーナリスト協会賞(2019年度)で大賞を受賞したノンフィクション作品「発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年」(中央公論新社、小児外科医・松永正訓著)のモデルにもなっている。オフィシャルブログ(http://www.tateishi-mitsuko.com/blog/)、Voicy(https://voicy.jp/channel/4272)。

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