「アサリ数個」で100万円の罰金? 海のレジャーで知らないと“密漁”になる4つのルール【元警視庁刑事が解説】
海に遊びに行った際、密漁に該当する可能性がある行為について、元警視庁刑事が解説します。

夏休みに家族で海に行った際、子どもが旅行先の海岸で砂の中から貝を見つけたり、干潟で「少し採って今夜のおかずにしよう」と熊手を手にしたりするケースは珍しくないでしょう。
しかし、海岸に自由に入れることと、そこにいる貝を自由に採れることは同じではありません。潮干狩り場ではない場所でアサリやハマグリを採ったり、禁止された道具を使ったりすると、数個であっても、漁業関係の法令に触れる可能性があります。
「知らなかった」「売るつもりはなかった」で、ルール違反がなかったことになるわけではありません。楽しい夏の思い出が台無しにならないよう、元警視庁刑事の立場から、確認するべきポイントをお伝えします。
「無料の海岸だから採ってよい」とは限らない
最も誤解されやすいのが、「誰でも入れる海岸なら、海産物も自由に採っていい」という考えです。海には、漁業協同組合などが一定の水産動植物を採る権利を持つ「漁業権」が設定されている区域があります。
漁業権が設定された区域で、権利の対象となる海産物を無断で採れば、漁業権侵害として100万円以下の罰金を科される可能性があります。「海岸に柵がない」「入場料が不要」「禁止看板が見当たらない」という事情だけで、採捕の許可があるとは判断できません。
一方、営業中の潮干狩り場では、漁業権者などの管理の下、料金、採ってよい範囲、時間、量、道具などを定めて利用者に採捕を認めています。潮干狩りをしてよいと公式に案内された場所で行うのが安全です。
「知らなかった」では済まない…確認すべき4つのルール
潮干狩りのルールは全国一律ではありません。水産庁も、水産動植物を採る際には、法律や都道府県の漁業調整規則などにより、使用できる漁具・漁法、禁止区域、禁止期間、魚種ごとの大きさなどが定められていると説明しています。
(1)場所
漁業権区域だけでなく、禁漁区、保護水面、海区漁業調整委員会の指示、施設の休業や資源状況による採捕中止などもあります。同じ市内の海岸でも、岬や河口、杭などを境に扱いが変わることがあるため、都道府県の公式な漁業権図や遊漁案内で、立つ場所を具体的に確認してください。
(2)貝の種類
ある区域ではアサリが対象でも、別の区域ではハマグリやサザエなど別の種類が漁業権の対象になっていることがあります。子どもが見つけた貝を「名前は分からないけれど、とりあえず持ち帰る」のは避けましょう。
(3)道具
熊手の使用が違法になることもあります。例えば千葉県は、遊漁者が使える道具を、柄の長さが50センチ以内の熊手・移植ごてなどに限定し、「いそがね」などは使用できないとしています。愛知県では、一般的な熊手や一本かぎなどを使用可とする一方、じょれんや手まん、ミニまん、網付き熊手など、効率的にアサリを採る道具を禁止しています。
(4)大きさ・量・期間
例えば、愛知県では、殻長2.5センチ以下のアサリを採ることが禁止されています。別の地域では採捕量や期間が定められている場合があります。現地のルールに沿って、小さな貝や対象外の生き物は持ち帰らないことが大切です。
拘禁刑や多額の罰金が科せられる場合も
密漁には「3年以下の拘禁刑または3000万円以下の罰金」という大きな罰則もあります。ただし、この罰則は、許可や漁業権などに基づかずに「特定水産動植物」を採った場合のもので、現在の対象はアワビ、ナマコ、シラスウナギとなっています。
アサリ・サザエなどの貝類、ワカメ・コンブなどの海藻類、イセエビやタコなどの定着性の水産動物で水産資源として有用なものは、「第一種共同漁業権」の対象になっています。
これらの海産物を違法な場所で採ると、漁業権侵害として100万円以下の罰金となる可能性があります。また、禁止された道具、採ってはいけない大きさや期間などに違反すれば、都道府県の漁業調整規則などに基づく別の罰則の対象にもなり得ます。
海上保安庁の取り締まりは「沖合だけ」ではない
海上保安庁は、組織的で大掛かりな密漁グループや、資金獲得を目的とする暴力団などによる水産資源の乱獲が後を絶たないとして、捜査能力や採証資機材を充実させ、悪質な密漁の厳格な監視・取り締まりを進めています。都道府県警察、漁業監督官、漁業監督吏員、漁業関係団体などとの連携も行われています。
水産庁によると、2024年の密漁の検挙件数は1661件ですが、この数字は密漁が一部の遠い漁場だけで起きている問題ではないことを示します。海岸で海産物を採る行為も、場所や対象、道具によっては確認や捜査の対象になります。「家族連れだから問題にされない」「少量なら見逃される」と考えるのは危険です。
海へ遊びに行く前に、公式情報を確認する
水産庁の公式サイトの「遊漁の部屋」というページでは、都道府県ごとのルールや問い合わせ先への案内があります。特にお盆期間は行政機関や漁協が休みの場合もあります。旅行計画を立てる段階で確認し、営業日、採捕区域、対象の貝、道具、サイズ、量を家族で共有しましょう。
公式ページの地図や注意事項をスマートフォンに保存しておくと、現地で境界や条件を確認しやすくなります。
そして、現地で合法か判断できない場合は、「採らない」が最も確実です。「近くの人が採っている」「以前は採れた」「SNSに採った写真が載っていた」という事情は、現在許可されているかを保証するものではありません。資源状況によって、前年までのルールや営業予定が変わることもあるからです。
潮干狩りを楽しむこと自体が悪いわけではありません。海には地域ごとに資源を守るためのルールがあり、それを知らずに違反してしまう人も少なくありません。旅行の思い出を気持ちよく終えるためにも、「ここで採っていいのかな」と思ったら、一度立ち止まって自治体や漁協の公式情報を確認してください。ほんの数分の確認が、家族旅行をトラブルから守ることにつながります。ぜひ、旅行を楽しんでください。
(治安戦略アナリスト・危機管理スペシャリスト 小比類巻文隆)







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