夏休み明けの不調「2週間」続いたら危険信号? 受診の目安&親が知るべき相談先とは【精神科医が解説】
もし子どもが夏休み明けに「学校に行きたくない」と訴え、欠席が続く場合、親はどのように対処すればよいのでしょうか。精神科医に聞きました。

9月になり、新学期が始まりました。夏休み明けは子どもが「学校に行きたくない」と訴え、欠席してしまうケースも珍しくありません。
もし子どもの欠席が続く場合、親はどのように対処すればよいのでしょうか。「出雲いいじまクリニック」(島根県出雲市)院長で、精神科医、心療内科医、臨床心理士の飯島慶郎さんが解説します。
早い段階で専門相談機関や医療機関へ相談を
お子さんの行き渋りや欠席が長期化してきた場合に最もお伝えしたいのは、ご家庭の中だけで抱え込まず、早い段階で専門相談機関や医療機関への相談を選択肢に入れていただきたいということです。早い方がよい理由は、早く学校に戻れるからということ以上に、お子さんとご家族が苦しさを抱えたまま過ごす時間が短くて済むからです。
早い相談をおすすめする背景には、いくつかの臨床データがあります。国内の大学病院で不登校治療を受けた子どもたちを追跡した研究でも、早く改善したお子さんは欠席が始まってから受診までが平均3.5カ月と短かったのに対し、長期化したお子さんでは受診まで平均約25カ月かかっていました。
国内の別の臨床研究でも、初診時点で学校を休んでいる期間が1年未満だったお子さんの方が、1年以上だったお子さんよりもその後の登校再開割合が高いことが示されています。この研究では、すでに学校を休んでいた92人のうち34人(37.0%)が登校を再開しています。
ここで大切なのは、早く相談することの本当の意義は、単に「早く学校に通えるようにすること」だけにあるのではない、ということです。専門的な支援と、普段通りの支援とを比べた海外の臨床試験(152人)でも、出席日数の回復には差がつきませんでした。
差がついたのは、専門的な支援を受けたお子さんの方で気持ちの落ち込みや対人関係のつらさがより軽くなり、本人も親御さんも、やっていけそうだという手応えを取り戻せていた点です。
つまり、早く相談することは「無理に登校させるため」ではなく、お子さんとご家族が苦しさを抱えたまま孤立してしまう時間を短くするための確かなセーフティーネットなのです。
専門相談機関や医療機関につながるメリットは?
では、専門相談機関や医療機関につながることで具体的に何が変わるのでしょうか。国内の小児科医らによる追跡調査では、学校健診で心身の不調リスクが高いと判定された子どもたちのうち、早期に受診したグループ(18人)は、1年後に身体症状、抑うつ、不安、対人関係の指標において改善が見られました。
一方で、ご家族の判断で受診に至らなかったグループ(25人)は症状の改善が乏しく、家族としてのまとまりや支え合いの状態を測る指標もかえって悪くなっていました。
また、不登校で受診した子ども80人を対象に発達特性を調べた国内の小児科調査では、その後1年の様子を追えたお子さんの約半数が1年後にはほぼ毎日登校できるようになっていました。困りごとの理由が医学的に明らかになることで、周囲が取るべき具体的なサポートも見えてきやすくなります。
受診を検討する目安としては、次のようなサインが2週間ほど続いているかどうかが1つの基準になります。
【主な受診の目安】
・朝どうしても起きられない
・頭痛、腹痛、吐き気が登校日の朝に集中して現れる
・強い不安や気分の落ち込みが目立つ
・食欲が落ちて食べる量が減ったままになっている
・夜なかなか寝付けない
つらさが強いときや、様子の変化が急なときは、2週間を待たずにご相談ください。新学期の最初の数日だけ朝がつらそうで、そのあと食欲も眠りも戻ってきたという場合は、生活のリズムが整うにつれて落ち着いていくことも多いものです。
一方、先に挙げたようなサインが続いている場合は、「気合いや気持ちの問題」ではなく、小児科、小児神経科、児童精神科、心療内科などで適切に対応していくことが望ましい心身のサインと言えます。
実際の診療でも、行き渋りの背景にうつ病や不安障害が潜んでいたり、未診断の発達障害のあるお子さんが無理を重ねて疲れ果てていたりすることは少なくありません。朝起き上がるのがつらいタイプのお子さんでは、起立性調節障害が関わっていることもあります。
もしお子さん自身が受診に向かえない段階であっても、まずは親御さんだけで専門相談機関や医療機関に相談される形でも、十分に対策をスタートできます。
また、医療機関だけでなく、学校との情報共有も非常に大切です。文部科学省の委託調査でも、不登校を経験した子どもの7割から8割近くが心身の不調を感じていたのに対し、こうした不調を学校の先生が把握できていた割合は2割弱にとどまっていました。子どもの感じているつらさは、学校側からはどうしても見えにくい傾向があります。
これは決して先生方が無関心なのではなく、子どもの苦痛は家庭内や内面に隠れやすく、学校の集団生活の中からは構造的に把握しづらいという難しさがあるためです。「学校から特に連絡がないから大丈夫だろう」と安心してしまうのではなく、ご家庭で見られる変化を保護者の方から学校や専門機関へ共有していただくことが、早期のサポートにつながる大切な一歩になります。
このように、夏休み明けに行き渋りを見せるお子さんの場合、休み明けに突然悪くなったというよりは、一学期から抱えていた心身の限界や負担が、学校の再開という節目を機に表面化してきたという側面も少なくありません。
休み明けは、子どもが「壊れてしまった日」ではなく、これまで見えにくかった限界のサインが「目に見える形になった日」と捉えることもできるのではないでしょうか。
そのサインを見過ごさず、叱責を避けて心身を休ませ、生活と体調を整えながら、必要に応じて早めに専門家の力を借りるという丁寧なステップを重ねていくことで、たとえもとの学校への登校という形に戻らなかったとしても、お子さんの心身を守り、その子に合った安心できる居場所や次の歩みを見つけていくことは十分にできます。
学校以外の学び方や過ごし方についても、学校や下記の窓口で相談することができます。「もとの登校に戻ること」だけをゴールにせず、お子さんが自分らしく笑顔を取り戻せる道を、焦らず一緒に探していければと考えています。
【相談できる窓口】
不登校や行き渋りのご相談は、医療機関のほかに次のような公的窓口でも受け付けています。
■市区町村の教育相談窓口、都道府県の教育センター
各市区町村の教育委員会が設けている教育相談窓口や、都道府県の教育センター(総合教育センター)による無料の相談窓口です。専門の相談員やカウンセラーが、保護者やお子さんからの相談を受け付けています(「お住まいの市町村名+教育相談」や「都道府県名+教育センター」で検索できます)。
■「24時間子供SOSダイヤル」(文部科学省)
電話番号は0120-0-78310(24時間365日対応、通話料無料)。いじめや不登校をはじめとする学校生活の悩み全般を、子ども本人も保護者も相談できます。
(オトナンサー編集部)







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