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仕事中にウトウト…日中に“強い眠気”に襲われるのはなぜ? もしかして病気? 原因を医師に聞く

日中に強い眠気に襲われる場合、どのような原因が考えられるのでしょうか。医師に聞きました。

日中に強い眠気に襲われる理由は?
日中に強い眠気に襲われる理由は?

 日中に強い眠気に襲われ、仕事がはかどらなかった経験はありませんか。中には、前日に十分な睡眠を取っても、日中に眠くなるケースもあるようです。日中に眠気が強い場合、どのような原因が考えられるのでしょうか。病気の可能性はあるのでしょうか。「出雲いいじまクリニック」(島根県出雲市)院長で、精神科医・総合診療医の飯島慶郎さんに聞きました。

「睡眠時無呼吸症候群」の疑い

Q.日中に強い眠気に襲われる場合、どのような原因が考えられるのでしょうか。例えば、前日の就寝前にスマホやパソコンなどの電子機器を使用した場合、睡眠の質に影響を与える可能性はあるのでしょうか。

飯島さん「日中に強い眠気に襲われる原因はさまざまですが、大きく分けると生活習慣に起因するものと、何らかの疾患に起因するものがあります。

まず、生活習慣の観点で、最も可能性が高い原因は、慢性的な睡眠不足でしょう。現代人の多くは1日の推奨睡眠時間とされる7~9時間を確保できておらず、睡眠負債(sleep debt)を抱えています。この睡眠負債は一朝一夕では解消されず、日中の眠気として表面化します。

また、就寝前に電子機器を使用するのも問題です。ブルーライトを含む光を浴びることで、体内時計のリズムを乱し、睡眠の質を低下させます。その結果、昼間の眠気を招くことはあるでしょう」

Q.では、日中に眠気を催す可能性のある疾患について、教えてください。

飯島さん「日中の眠気の原因となる疾患は多岐にわたりますが、眠気を催す可能性が高いものから順番に並べてみると、次のようになります」

■閉塞(へいそく)性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)
睡眠中の上気道閉塞により、呼吸停止を繰り返す病気です。睡眠の分断化と低酸素血症により、日中に強い眠気を引き起こします。

日本人における、軽症も含めた閉塞性睡眠時無呼吸症候群の有病率は全体の32.7%、中等症以上の有病率に限った場合でも14%といわれており、非常に多い疾患です。日中の眠気の原因として一番多い病気といえるでしょう。

■注意欠如・多動症(ADHD)
発達障害の一つとして有名な疾患で、有病率は3~6%といわれていますが、その症状の一つとして、日中の眠気があるのは、あまり知られていません。

しかし、国内外の研究から、ADHDの人が日中の眠気や睡眠問題を多く経験していることが明らかになっています。一説によると、ADHDの85%の人が日中の眠気や睡眠の質の悪さを自覚しているようで、特に不注意傾向が優位な人に目立つようです。私の臨床的実感とも一致します。

■むずむず脚症候群(RLS)
むずむず脚症候群は、下肢に不快感が生じ、脚を動かしたくなる衝動に駆られる病気です。症状は夕方から夜間に悪化するため、入眠困難と睡眠の質の低下を招きます。その結果、日中の眠気や倦怠(けんたい)感につながるのです。

日本人における有病率は1.8%と報告されており、高齢者のほか、慢性腎臓病や鉄欠乏性貧血など、特定の疾患を持つ人だと有病率が上昇します。

■周期性四肢運動障害(PLMD)
周期性四肢運動障害は、睡眠中に四肢が規則的に動く病気です。本人は無自覚なことが多いですが、頻回の四肢の動きは睡眠を妨げ、日中の眠気の原因となります。日本人における有病率は不明です。

■概日リズム睡眠・覚醒障害(CRSWD)
概日リズム睡眠・覚醒障害は、体内時計の異常により、入眠・覚醒のタイミングが大幅にずれてしまう病気です。睡眠相後退型では、入眠時刻と覚醒時刻が遅くなり、社会生活に支障をきたします。そのため、朝の覚醒困難と日中の眠気を生じやすいのです。日本人における有病率は不明です。

■特発性過眠症(IH)
特発性過眠症は夜間に十分な睡眠を取っているにもかかわらず、日中の過剰な眠気が持続する病気です。病因はまだ明らかになっていませんが、中枢神経系の覚醒機構の異常が関与していると考えられています。日本人におけるIHの有病率は不明です。

■ナルコレプシー(NAR)
ナルコレプシーは、覚醒と睡眠のメカニズムの異常により生じる病気です。日中の耐え難い眠気のほか、カタプレキシーと呼ばれる情動脱力発作や入眠時幻覚、睡眠まひなどの特徴的な症状を呈します。日本人の有病率は世界で最も多く、0.16%とされています。

Q.ちなみに、「昼食を食べた後、眠くなる」という話をよく聞きますが、どのような原因が考えられるのでしょうか。

飯島さん「『食後に消化器に血流が集中し、脳の血液が少なくなるため眠くなる』などと説明されることがありますが、これは単なる仮説に過ぎないようで、この説を支持するような文献は見つかりませんでした。

近年の有力な説として、食後の血糖値の上昇がインスリンの分泌を介して、脳内のトリプトファンの濃度を高めることで、リラックスと睡眠を誘発するというものがあり、これを支持する研究は多く存在しています。

実際に、食後の血糖値の変動が大きい耐糖能異常の人や糖尿病の人は、食後の眠気が強いという報告がありますし、私も日々の診療で実感しています。

そのため、健康な人についても炭水化物が多い食べ物を摂取すると、インスリンの分泌を促進し、眠気を誘発しやすいと考えられます。食後の眠気を少なくするには、昼食に炭水化物自体が少ない食べ物、またはGI値が低い食べ物を摂取するようにすると良いでしょう。

さらに昼食を食べなくても、生体の正常なリズムとして昼ごろに眠気が生じるということもさまざまな研究で明らかになっています」

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飯島慶郎(いいじま・よしろう)

不登校/こどもと大人の漢方・心療内科 出雲いいじまクリニック 院長

心療内科医、臨床心理士、総合診療医、内科医、漢方医、産業医など、マルチドクターとして活動。得意とする分野は「心身症・不定愁訴」に対する漢方薬・向精神薬・心理療法・ケースワークを統合した総合的対人援助。心身の軽微な不調を入口にクライアントの「人生そのもの」を癒やすことを実践。近年は特に不登校診療に特化し、多くのこどもたちを改善に導いている。

不登校/こどもと大人の漢方・心療内科 出雲いいじまクリニック(https://sites.google.com/view/izumo-iijima-clinic)。

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