故人の思いを宝石・貴金属でつなぐ「ジュエリー終活」とは? 専門家ならではの“手引き”
生前に自身の宝石や貴金属を現金化したり、リフォームして家族に継承する「ジュエリー終活」を知っていますか? 専門家に「ジュエリー終活」をするメリットを聞いてみました。

生前整理、遺言書作成、葬儀・墓の検討などを行う終活ですが、その中に、生前に自身の宝石や貴金属を現金化したり、リフォームして家族に継承する「ジュエリー終活」というものがあります。眠っているジュエリーを仕分けし、気持ちの整理や家族の負担軽減にもつながる「ジュエリー終活」について、葬儀・ライフエンディングのサポートを行う燦ホールディングスの執行役員・鎌田真紀子さんに聞きました。
家族の負担を軽減するための備えでもある
Q.改めて、「ジュエリー終活」の特徴について教えてください。
鎌田さん「ご自身が保有している貴金属・宝石類を、生前のうちに見直し、今後、どのように扱っていくかをあらかじめ考えておくのが『ジュエリー終活』です。具体的には、今後も自分で使い続けるもの、修理やリフォームをして生かすもの、ご家族や大切な方に譲るもの、売却や整理を検討するもの、といった形で方向性を明確にしていく取り組みです。
『終活』と聞くと、物を処分したり、身辺整理をしたりするイメージを持たれる方も多いと思いますが、ジュエリー終活は単なる片付けではありません。貴金属や宝石類には、資産としての価値だけでなく、人生の節目やご家族との記憶に結びついた意味合いが込められていることが少なくありません。
そのため、ジュエリー終活は、物としての価値を確認するだけでなく、誰に、どのような思いで託したいかまで含めて考えることに大きな意味があると考えています。また、あらかじめ方針を決めておくことで、ご家族が後になって『これは残した方がよいのか』『誰が受け継ぐべきなのか』『整理してよいものなのか』と迷うことを減らすことができます。ジュエリー終活は、ご自身の意思を形にする取り組みであると同時に、ご家族の負担を軽減するための備えでもあるといえる取り組みです」
Q.実際に相談を受けたケースがあったら、教えてください。
鎌田さん「実際には、単に売却や処分を考えるのではなく、思い出のある貴金属・宝石類をどう生かし、どう受け継いでいくかというご相談が多い印象です。代表的なものとしては、次のようなケースが挙げられます」
(1)使っていない貴金属・宝石類をどうするか悩んでいるケース
以前はよく身に着けていた指輪やネックレスでも、年齢や生活スタイルの変化によって、長く使わなくなっていることがあります。ただ、ご自身にとって思い入れがあるため、簡単には手放せないという方も多くいらっしゃいます。そのような場合には、いきなり処分を考えるのではなく、修理すれば再び使えるのか、サイズ直しやクリーニングで生かせるのか、デザインを変えれば今の暮らしに合うのか、といった視点で整理していくことが大切です。
(2)親や親族から受け継いだものを、そのままでは使いにくいケース
ご家族から受け継いだ貴金属・宝石類は、気持ちとして大切にしたい一方で、デザインが今の自分には合わず、しまったままになってしまうこともあります。その場合、石や素材はそのまま生かしながら、ペンダントや普段使いしやすいリングなどに作り替えることで、思い出を残しながら、今の生活の中で身に着けられる形にすることができます。
「受け継ぐ」というと、そのまま残すことを想像しがちですが、今の暮らしの中で使える形に整えることも、一つの承継のあり方だと思います。具体的には、お父様がお母様に贈ったネックレスをリフォームし、ご両親からお嬢様への誕生日プレゼントにされたという事例があります。
親世代から子世代へ、思い出のある貴金属・宝石類を新しい形でつないでいく点が、とても象徴的だと感じます。また、この事例では、デザイン料や加工料をかけつつも、余った金を買い取って差し引くことで、実質的な出費は約10万円だったとされています。
こうした点からも、ジュエリー終活は高額な特別行為というより、思い出の整理と承継を現実的な範囲で形にしていく手段として考えることができるのではないでしょうか。
(3)誰に何を残すかを自分で決めておきたいケース
「この真珠は娘に譲りたい」「この指輪は自分の手元に残しておきたい」「これは売却して現金化しても構わない」。そのように、ご自身の意思をあらかじめ整理しておきたいというご相談もあります。貴金属・宝石類は、見た目以上に、その背景や思い入れが大きいものです。
だからこそ、何をどのように残したいのかを生前のうちに考えておくことは、資産整理であると同時に、ご家族へのメッセージを残すことでもあると感じます。
(4)本物かどうか、価値が分からず困っているケース
遺品整理やご自宅の片付けの中で見つかった貴金属や宝石類について、「本物かどうか分からない」「価値があるのか判断できない」といったお悩みも少なくありません。
見た目だけでは判断が難しい場合もありますので、必要に応じて査定や鑑別などを行い、残すのか、譲るのか、リフォームするのか、売却するのかを整理していくことが重要です。価値が分からないまま放置してしまうと、本来生かせるものまで埋もれてしまう可能性があります。
(5)数が多く、家族が困らないように整理しておきたいケース
貴金属・宝石類を長年にわたって集めてこられた方の場合、ご本人にとっては一つ一つに思い出があっても、遺されたご家族がすべてを同じように扱えるとは限りません。そのため、形見として残すもの、実際に使いやすい形に整えるもの、整理や売却を考えるものを分けておくことで、ご家族が迷わずに済みます。結果として、それがご本人にとってもご家族にとっても、より納得感のある終活につながるのではないかと思います。
人生の記憶と家族への思いをつなぐ
鎌田さんは、今後、「ジュエリー終活」について、「さらに関心が高まっていくテーマではないかと考えています」と述べ、その背景の一つとして「高齢化の進展や家族のあり方の変化があります。以前は『家にあるものはそのまま子どもに残す』という考え方も一般的でしたが、今は世代によって価値観や暮らし方が大きく異なります。そのため、単に残すだけではなく、どのように残すか、誰にどのような形で託すかを考える必要性が高まっています」と話します。
そして、もう一つの背景として「物に対する考え方そのものも変わってきています。使わないまま保管し続けるのではなく、修理して使う、今の生活に合う形に作り替える、本当に必要なものを選び直す、といった考え方が広がっています。貴金属・宝石類は、こうした見直しや活用の余地が大きいものでもあります。さらに、終活そのものが、相続や財産管理だけでなく、自分の思いや価値観をどう引き継ぐかという領域へ広がってきているように感じます」と見解を語ってくれていました。
ジュエリー終活は、「単なる資産整理にとどまらず、人生の記憶やご家族への思いを次へつないでいくための準備にもなりそう」です。
(オトナンサー編集部)




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