【サッカーW杯】飲食店が「DAZN」個人アカでこっそり試合流すとどうなる? 弁護士が説く“損害賠償”のリアルなリスク
飲食店が動画配信サービスを個人契約アカウントのまま店のモニターに流した場合、どのようなリスクがあるのでしょうか。弁護士に聞きました。

サッカーワールドカップ(W杯)北中米大会が6月11日に開幕します。今回、地上波で日本代表戦などの生中継に加え、動画配信サービス「DAZN(ダゾーン)」がワールドカップの全試合を生中継することが決まっており、話題となっています。
ところで、ワールドカップの期間中、スポーツバーなどの飲食店は多くの客で盛り上がりますが、店内で試合を流す行為は、法律上問題はないのでしょうか。また、店側が動画配信サービスを個人契約アカウントのまま店のモニターに流した場合、どのようなリスクがあるのでしょうか。佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士に聞きました。
営利目的で流した場合は「著作権侵害」の可能性も
Q.そもそも、飲食店がスポーツ中継の動画をテレビなどで流す行為は法律上、問題ないのでしょうか。「テレビ放送」と「有料配信サービス」で違いはありますか。
佐藤さん「飲食店がスポーツ中継の動画をテレビなどで流す行為は、著作権法上、問題になる可能性があります。
スポーツ中継の動画は、臨場感を持って試合の様子を表現するため、カメラアングルやカメラワークなど、表現内容に独自の創意工夫が施されており、『映画の著作物』に当たると考えられています。生中継の場合も、生中継と同時に録画されている場合には、『映画の著作物』に当たると判断した裁判例があります。
放送するために作成した映画の著作物については、放送事業者・有線放送事業者のみが放送・有線放送に関する権利を持っています(著作権法29条)。そのため、放送されているスポーツ中継を受信して客に見せる行為は、原則として著作権侵害になります。
ただし、テレビ放送については、例外があります。『(1)営利を目的とせず、かつ、観衆から料金を受けない場合』または『(2)通常の家庭用受信装置を用いる場合』であれば、著作権侵害にならないとされています(著作権法38条3項)。
そのため、例えば、小さな町のラーメン店が、店に置かれたテレビで、テレビ放送中のスポーツ中継を流したような場合は、著作権侵害になりません。一方、スポーツバーで、W杯などのスポーツ中継を流すことを宣伝し、大型スクリーンやスピーカーなどを用いて放送し、客から対価をもらうような場合には、権利者の許可を得なければ違法になってしまいます。
一方、有料配信サービスを店内で流す場合、テレビ放送のような著作権侵害に当たらない例外規定がありません。そのため、店がスポーツ中継を流せば原則通り著作権侵害になります。たとえ、非営利目的かつ無料であったとしても、著作権侵害に当たると考えられます。
有料配信サービスの場合は、業務用に放送できる契約を用意していることが多く、その契約を締結すれば、飲食店などで問題なくスポーツ中継を放送することができます」
Q.飲食店が店内でDAZNの中継動画を流す場合、法人用のサービス「DAZN FOR BUSINESS」に加入する必要があるとされています。もし店の経営者が法人契約せずに、個人契約アカウントを使ってワールドカップの中継映像をそのまま流した場合、どのようなリスクが生じる可能性があるのでしょうか。
佐藤さん「規約違反を理由に、サービスへのアクセスを直ちに停止されたり、強制退会されたりする可能性が高いでしょう。
また、著作権を侵害されたとして損害賠償請求される可能性も考えられます。どのくらいの損害が出たか、はっきりしない事案も多いと思われますが、店側が著作権侵害行為により上げた利益の額が、損害額と推定されます(著作権法114条2項)。
また、DAZN側が本来受け取ることのできたライセンス料を『損害の額』として賠償請求することもできるため(著作権法114条3項)、少なくとも、事業者向けの利用料について支払うよう求められる可能性があります」
Q.では、客が個人契約アカウントを使い、「自分のスマホ」でDAZNの試合を見ながら店内で大騒ぎするのを、店側が黙認するのは問題ないのでしょうか。
佐藤さん「個人アカウントで個人が視聴する分には、DAZNの規約違反にはならず、店が何らかの責任を問われることはないでしょう」
Q.過去に、スポーツバーや飲食店が動画配信サービスや衛星放送を「個人契約」のまま流して、実際に摘発されたりトラブルになったりした実例はあるのでしょうか。
佐藤さん「スポーツバーなどで、配信サービスの動画を流し、実際に摘発された事例について、現時点で私は承知していません。ただし、『摘発されることはないだろう』と考え、安易に個人アカウントを使い回すのは危険と言えます。飲食店が動画配信サービスの映像を流す際は、事前に運営会社に確認し、必要なプランに加入する必要があるでしょう」
(オトナンサー編集部)





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