サプライズのつもりで「顔面ケーキ」…歯が折れるだけじゃない 歯科医師が「命に関わる」と警告する理由
顔面ケーキによって、どのようなリスクが生じる可能性があるのでしょうか。歯科医師に聞きました。

誕生日を迎えた人に対し、サプライズのつもりでケーキを顔に押し付ける「顔面ケーキ」と呼ばれる行為があります。最近では、親が誕生日を迎えた小さな子に対し、顔面ケーキを行う様子を収めた動画がSNS上に投稿され、批判が殺到しました。
顔面ケーキによって、どのようなリスクが生じる可能性があるのでしょうか。医療法人社団D&J ひらの歯科医院(新潟市西区)理事長で歯科医師の平野大輔さんが解説します。
歯が損傷するリスクも
顔面ケーキには、主に次の3つのリスクがあります。
(1)衝撃による歯の物理的破損(破折・脱落)
・皿や硬い台座による破折(はせつ)
ケーキの底にある厚紙の台座や、陶器・プラスチック製の皿が顔面に強打した際、その衝撃が前歯にダイレクトに伝わります。これにより、前歯が根元からポッキリ折れたり、先端が欠けたりすることがよくあります。
・歯の脱落(抜ける)や亜脱臼
強い衝撃によって歯を支えている骨(歯槽骨)や靭帯(歯根膜)がダメージを受け、歯が完全に抜け落ちたり、グラグラになって位置がズレたり(亜脱臼)します。
(2)口腔(こうくう)内の裂傷と大出血
・唇や歯茎の裂傷
勢いよく押し付けられた際、自分の歯が口の内側の粘膜や唇に強く食い込み、口の中を深く切って大出血を起こすことがあります。
・矯正器具による凶器化
もし被害者が歯の矯正器具(ワイヤーやブラケット)を付けていた場合、押し付けられた衝撃で器具が唇や頬の裏側に深く突き刺さり、肉がえぐれるような大けがにつながります。
(3)誤嚥(ごえん)による窒息と、緊急治療の妨げ
・折れた歯の飲み込み・気管への吸い込み
衝撃で歯が折れた際、不意を突かれてパニックになり、息を吸い込んだ拍子に折れた歯や器具の破片を喉の奥へ飲み込んでしまう(誤嚥)危険があります。これが気管に入ると窒息や肺炎を起こします。
・クリームによる口腔内の視界不良
口の中が大量の生クリームやスポンジで満たされているため、歯が折れて出血していても周囲がすぐに異変(出血や歯の欠損)に気付きにくく、応急処置や破片の回収が遅れるという二次災害が起きます。
特に小さな子どもに顔面ケーキは絶対に行ってはいけません。歯や顎だけでなく、精神面にも悪影響を及ぼす恐れがあります。
(1)歯と顎への深刻な影響
子どもの口の中は、外見からは見えないほどダイナミックに変化しています。乳歯の下には、永久歯(後継永久歯)がスタンバイしているため、衝撃の影響が未来にまで及びます。
また、乳歯は大人よりも歯の構造が薄く、衝撃に弱いです。顔面ケーキの衝撃で乳歯を強打すると、見た目は折れていなくても、内部の血管や神経が切れて神経が死んでしまう「失活」が生じることがあります。
しばらくして歯が黒ずんできたり、根元に膿(うみ)がたまったりして、根管治療が必要になります。
さらに、まだ生えていない永久歯に悪影響を与えます。乳歯の根元は、すぐ下にある「育ちかけの永久歯」の卵(歯胚:しはい)と非常に近い位置にあります。乳歯に強い衝撃が加わると、その振動や位置のズレがダイレクトに永久歯に伝わり、以下のようなトラブルを引き起こします。
・歯の形成不全(エナメル質形成不全)
次に生えてくる永久歯の色が一部茶色くなったり、表面が凸凹でもろい歯になったりしてしまいます。
・生える方向の異常(歯の萌出異常)
永久歯が変な方向を向いて生えてきたり、自力で生えられなくなったりして、将来的に高額な矯正治療が必要になります。
・顎の骨(骨格)へのダメージ
子どもの顎の骨はまだ柔らかく、成長段階にあります。強い衝撃を受けると、歯だけでなく顎の骨そのものを痛めたり、成長のバランスが崩れたりするリスクがあります。
(2)窒息・呼吸器系の大事故リスク(大人との最大の違い)
大人と子どもでは、体のサイズも呼吸の力も全く異なります。子どもの気道(空気の通り道)は非常に狭く、窒息しやすいです。大人の感覚では「ほんの少しのクリーム」であっても、子どもの鼻や口を一瞬で完全にふさいでしまいます。
また子どもは予期せぬ事態への対応能力が低いため、顔面ケーキをされると激しい恐怖からパニックになり、大きく息を吸い込みます。このとき、クリームやスポンジの塊が喉の奥の狭い気道に吸い込まれ、一瞬で呼吸停止(窒息死)に至る危険性が大人の何倍も高いです。
(3)精神的な深いトラウマ
子どもにとって、信頼している親や周囲の大人から不意に「息ができなくなるような攻撃」を受けることは、楽しいサプライズではなく「生命を脅かされる恐怖体験」そのものです。お祝いの席であるはずの日が、一生消えない恐怖の記憶(トラウマ)となり、大人やイベントそのものに対する強い不信感を植え付けることになります。








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