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大雨の道路で靴を脱ごうとしパニック…自閉症の25歳息子が「ルール守りすぎて」直面する生きづらさ

自閉症の25歳息子が、教えられたルールを忠実に守りすぎるあまり直面する「生きづらさ」。母が、その切実な実態を明かします。 

土砂降りの中、自閉症の息子が「ルール」を守るために道路で靴を履き替えようとしたことも(画像はイメージ)
土砂降りの中、自閉症の息子が「ルール」を守るために道路で靴を履き替えようとしたことも(画像はイメージ)

「真面目なのは良いこと」

 多くの人はそう考えるでしょう。「約束を守る」「ルールを守る」「マナーを守る」は社会生活を送る上で大切なことです。

 でも、自閉症のある人の中には、その「真面目さ」が極端な形で表れ、かえって生活しづらくなってしまうことがあります。

 私は移動支援の仕事をしていますが、利用者さんの中には、車が1台も来ていない道路でも、教えられた通りに必ず手を挙げ、「右、左、右、左、右、左、右」と何度も確認する人がいます。

 危険だからではありません。「そう教わったから」です。状況に応じて判断するよりも、教えられたルールを忠実に守ることを優先するのです。

 これは私の25歳の息子にも当てはまります。息子は自閉症で知的障害があります。彼は、特別支援学校高等部を卒業後、就職に向けて就労移行支援事業所へ3年間通い、社会人としてのマナーを学んでいました。

土砂降りの道路で「靴を脱ぐ」…ルールが招いたパニック

 ある日、事業所へ帽子をかぶったまま入ったところ、支援員から「建物に入る前に帽子は脱ぎましょう」と指導を受けました。

 数日後、土砂降りの日に長靴を履いて出かけました。私は室内用の靴も持たせ、「事業所に着いたら履き替えてね」と伝えました。

 すると息子は突然、「マナー違反!外で履き替える!」と言い出したのです。

 事業所はビルの3階にあります。息子が言う「外」とは、ビルの玄関ではなく、1階の道路。土砂降りの雨の中、道路で長靴を脱いで履き替えようとする息子でした。

「帽子を脱ぐこと」と「長靴を履き替えること」は全く別の場面です。しかし息子の中では、「建物に入る前に身に付けているものを外す」という一つのルールとして結び付いてしまったのでしょう。

「部屋に入ってから履き替えて大丈夫だよ」と説明しても納得できず、パニックを起こして自傷してしまいました。

電車内での電話はNG…真面目すぎて「わざと遅刻」する理由

 また、こんなこともありました。就労移行支援事業所へ通っていた頃、息子は朝9時に家を出ていました。

 ところがある日、家を出て20分ほど経ってから戻ってきたのです。事業所へは電車で通っていたため、この時間に戻ってきたということは、一度電車に乗り、途中で降りて帰宅したことになります。

 理由を聞くと、「ティッシュペーパーを忘れた」と言うのです。

 鼻水が止まらないわけでもありません。駅にもコンビニにもティッシュは売っています。誰かに借りることだってできます。

 それでも、「忘れ物をしてはいけない」というルールの方が優先され、取りに帰るという選択しか思いつかなかったのです。

 さらに、その後の行動にも驚かされました。事業所では、遅刻する場合は本人が決められた時間内に電話を入れることになっていました。

 しかしティッシュを取りに帰ってすぐ家を出ると、その時間帯はちょうど電車の中になります。

 息子は「電車内では電話をしてはいけない」というマナーも忠実に守ろうとしました。その結果、どうしたかというと、決められた時間になるまで家で待機し、自宅から遅刻の連絡を入れてから出発したのです。

 つまり、遅刻を最小限にすることよりも、「決められた時間に電話をすること」と「電車内では電話をしないこと」を優先していました。

 普通なら、少し早めに電話を入れたり、駅に着いてから事情を説明したりと、その場に応じた対応を考えるでしょう。

 しかし息子には、そのような臨機応変な判断がとても難しいのです。

大声で「おならをしました!」…真面目さが裏目に出る瞬間

 さて、また別の話。ある日、息子は音もなく臭いもしないおならをした直後、周囲に聞こえるような大きな声で、「失礼しました!おならをしました!」と頭を下げました。

 本人は「おならをしたら謝るのがマナー」だと考え、そのルールを忠実に守っただけです。

 けれども、その一言によって、誰も気付いていなかったおならが、その場の全員に知られることになってしまいました。

 真面目だからこそ、ルールを守ろうとする。しかし、その真面目さが、かえって本人を困らせる結果になることがあります。

 自閉症の特性の一つに、「汎化(はんか)」が苦手という特徴があります。汎化とは、1つの場面で覚えたことを、別の場面に応用したり、その場の状況に合わせて柔軟に判断したりすることです。

 汎化が苦手な当事者に対しては、「こういう場合はこうする」「でも、こんな時は例外だよ」と、一つ一つ具体的な場面ごとに丁寧に伝えていく必要があります。

「真面目だから大丈夫」ではありません。真面目すぎることが、かえって問題となります。息子を見ていると、そのことを何度も実感します。

 だから私は、ルールを教えるだけではなく、「なぜそのルールがあるのか」「状況によっては違う方法を選んでもいいこと」を、一緒に考えていくことの大切さを改めて感じています。

(子育て本著者・講演家 立石美津子)

【画像】「えっ…?そうだったの……?」 これが「発達障害児」にみられることのある行動です(5つ)

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立石美津子(たていし・みつこ)

子育て本著者・講演家

20年間学習塾を経営。現在は著者・講演家として活動。自閉症スペクトラム支援士。著書は「1人でできる子が育つ『テキトー母さん』のすすめ」(日本実業出版社)、「はずれ先生にあたったとき読む本」(青春出版社)、「子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方」(すばる舎)、「動画でおぼえちゃうドリル 笑えるひらがな」(小学館)など多数。日本医学ジャーナリスト協会賞(2019年度)で大賞を受賞したノンフィクション作品「発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年」(中央公論新社、小児外科医・松永正訓著)のモデルにもなっている。オフィシャルブログ(http://www.tateishi-mitsuko.com/blog/)、Voicy(https://voicy.jp/channel/4272)。

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