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身寄りなしの入院・施設入所、保証人いないと無理? 6月成立の新法で変わるリアル

現状、身寄りのない単身の高齢者が入院したり、介護施設に入ったりすることは可能なのでしょうか。弁護士に聞きました。

身寄りがない状態で入院することは可能?(画像はイメージ)
身寄りがない状態で入院することは可能?(画像はイメージ)

 頼れる親族ら身寄りのない高齢者の支援を強化する社会福祉法などの改正法が6月19日、参院本会議で賛成多数により可決、成立しました。厚生労働省は2028年6月までの開始を目指すとしています。

 ところで、現状、身寄りのない単身の高齢者が入院したり、介護施設に入ったりすることは可能なのでしょうか。その際、どのような手続きが必要になるのでしょうか。佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士に聞きました。

現行法でも入院・入所は可能だが…

Q.現在、身寄りがない人が突然倒れて入院したり、施設に入ったりすることは、制度上「可能」なのでしょうか。

佐藤さん「身寄りがない人であっても、入院したり、施設に入所したりすることは可能です。

厚生労働省は、『身寄りがない人の入院および医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン及び事例集』を公表しています。ガイドラインでは、身寄りがないことを前提とした医療機関の対応方法をまとめており、必要な医療を受けられる体制作りが進められています。施設についても、保証人や身元引受人不要の施設が存在します。

とはいえ、現実には、多くの医療機関や施設が、保証人や身元引受人を必要としています。そこで、状況に応じて、成年後見制度や、日常生活自立支援事業を利用したり、地域福祉ネットワークの協力を求めたりする方法があります。

成年後見制度は、認知症などの理由で判断能力が不十分な人を保護し、支援することを目的とする制度であり、判断能力が不十分になってから利用する『法定後見制度』と、判断能力が十分な時から備えておく『任意後見制度』があります。

医療機関は、身寄りのない人が成年後見制度を利用しているかどうかを確認し、必要な場合には、成年後見制度の相談窓口を紹介することも考えられます。

なお、成年後見制度を見直す改正民法が2026年6月17日に成立しており、今後はより柔軟な制度運用が可能となるでしょう。

こうした制度の利用も難しい場合、身元保証等高齢者サポートサービスを利用することが考えられます。契約形態、経営主体、料金などはさまざまで、多くの場合、身寄りのない人が入院等の際、身元保証や身元引受を担ったり、亡くなった後の葬儀の手配を行ったりしてくれます」

Q.今回の改正法が本格始動する2028年までの間、いま身寄りがない高齢者が入院・入所を迫られた場合、具体的にどんな「手続き」や「準備」をしておけば安心ですか。

佐藤さん「入院や入所を迫られる状況になると、ご本人に判断能力が残っていなかったり、体が自由に動かなかったりする可能性があります。

そのため、そうした状況になる前に、困ったときに相談できる場所を見つけておくとよいでしょう。例えば、地域包括支援センターや弁護士などの専門職に一度相談してみたり、信頼できる友人などに、いざというときに備えて協力をお願いしたりすることが考えられます。事前準備ができていれば、入院・入所が必要となったときに、まず安心できる相談先につながることで、スムーズに事が進む可能性があります。

また、先述のように、身寄りのない人が入院や入所となった場合、保証人や身元引受人不要の病院や施設を探したり、あるいは、状況に応じて、成年後見制度や、日常生活自立支援事業の利用、地域福祉ネットワークの協力を検討したり、いずれも難しい場合には、身元保証等高齢者サポートサービスの利用を検討したりすることになるでしょう」

Q.身元保証の民間サービスは数十万〜数百万円と高額なケースもありますが、2028年からの新制度では、お金がない低所得者でも利用できる仕組みになるのでしょうか。

佐藤さん「新制度では、『福祉サービス利用援助事業(日常生活自立支援事業)』の対象を、認知症などで判断能力が不十分な人だけでなく、身寄りのない高齢者にも広げ、日常生活の支援に加え、入院・入所の手続きを支援してもらえるようになります。

資力が乏しい高齢者は、無料または低額で利用できることが想定されていますが、無料や低額の対象となる目安は、施行までに検討され、ガイドラインで示すとされています」

Q.入院・入所時だけでなく、葬儀や納骨、部屋の片付けなど、亡くなった後の手続きが一番のネックだと聞きます。現行と新制度で、この死後事務はどう変わるのでしょうか。

佐藤さん「新制度では、『福祉サービス利用援助事業(日常生活自立支援事業)』のサービス内容も拡大され、死後の葬儀や家財処分の契約手続き、いわゆる死後事務も加えられ、公的サービスとして受けることができるようになります。支援の具体的内容は、施行までに検討され、ガイドラインで示すとされています。

なお、現在、身寄りのない人が亡くなると、市町村職員が親族を調査し、埋葬や火葬を行う人がいないまたは判明しないときは、墓地埋葬法に従い、死亡地の市町村長が行うことになっています」

Q.最近、身元保証を行う一部の民間業者との間で預けたお金が戻らないといったトラブルが発生していると聞きます。社会福祉協議会などが担う枠組みになることで、こうしたトラブルは防げるようになりますか。

佐藤さん「民間の身元保証等高齢者サポートサービスの利用にあたり、『想定していたよりも高額の契約を結んでしまった』『契約するつもりのないサービスが含まれていた』『解約しても返金されなかった』など、さまざまなトラブルが発生しており、国民生活センターが注意喚起しています。

新制度の担い手は、社会福祉協議会が想定されており、地域によって支援を受けられない人が出ないよう、都道府県社協には実施義務が課せられ、実際の支援は都道府県社協から委託を受けた各市町村の社協が担うことが予定されています。

また、サービス提供体制を確保するため、民間事業者も参入できます。新制度は、国が福祉サービスとして整備するものであり、より安心して利用できるようになるのではないか期待されています」

(オトナンサー編集部)

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佐藤みのり(さとう・みのり)

弁護士

神奈川県出身。中学時代、友人の非行がきっかけで、少年事件に携わりたいとの思いから弁護士を志す。2012年3月、慶応義塾大学大学院法務研究科修了後、同年9月に司法試験に合格。2015年5月、佐藤みのり法律事務所開設。少年非行、いじめ、児童虐待に関する活動に参加し、いじめに関する第三者委員やいじめ防止授業の講師、日本弁護士連合会(日弁連)主催の小中高校生向け社会科見学講師を務めるなど、現代の子どもと触れ合いながら、子どもの問題に積極的に取り組む。弁護士活動の傍ら、ニュース番組の取材協力、執筆活動など幅広く活動。女子中高生の性の問題、学校現場で起こるさまざまな問題などにコメントしている。

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