飛行機で「モバイルバッテリー」使用禁止 知らずに充電→発火したら乗客の責任? 賠償責任のリスクとは【弁護士解説】
もし航空機の利用時にモバイルバッテリーを使って充電したことが原因で発火事故が発生した場合、乗客は責任を問われる可能性があるのでしょうか。弁護士に聞きました。

間もなくお盆を迎えます。帰省や旅行を計画している人は多いのではないでしょうか。一方で近年、電車内で客が所持していたモバイルバッテリーが発火する事案が相次いでいます。
こうした事態を受け、国土交通省が航空機内へのモバイルバッテリーの持ち込み個数を制限したり、航空機内での充電を禁止したりするなどの新ルールを設け、対策に乗り出しています。また、一部の鉄道会社も乗車時にモバイルバッテリーによる充電や、一部車両に設置されているコンセントを使ってモバイルバッテリーへの充電を行わないよう、呼び掛けています。
もし航空機の利用時にモバイルバッテリーを使って充電したことが原因で発火事故が発生してしまった場合、乗客は責任を問われる可能性があるのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。
ルール違反で乗客が賠償責任問われるケースも
Q.国土交通省が2026年4月、モバイルバッテリーの機内持ち込みに関して、「機内持ち込みのモバイルバッテリーは2個(160Wh以下に限る)まで」「機内でモバイルバッテリーへの充電をしないこと」「機内でモバイルバッテリーから他の電子機器への充電をしないこと」といったルールを新たに設けました。こうしたルールは法的に有効なのでしょうか。
牧野さん「国土交通省から出されたルールは、法的には、事業会社である航空会社に対して、そのルールを実施させる事業者規制として有効なものですが、航空機の乗客に対して、直接適用されるものではありません」
Q.では、航空機の利用時、機内に持ち込んだモバイルバッテリーを使って他機器の充電をしたことが原因で発火事故が発生してしまった場合、ルールを知っているかどうかにかかわらず、乗客は責任を問われる可能性があるのでしょうか。
牧野さん「乗客がこのルールに違反して火災が発生して損害を与えた場合でも、持ち主に『重大な過失』がない限り失火責任法(失火法)が適用されて、近隣への不法行為に基づく損害賠償責任は原則として免除されます。ただし、膨張や破損を放置して使用するなど、安全上の義務を怠っていた場合は『重過失』とみなされて、損害賠償責任を負う可能性があります。
具体的には、以下のようなケースでは重過失と判断され持ち主は損害賠償責任を負うリスクが高くなります」
・著しい変形や膨張が起きているバッテリーを使い続けて火災が起きた場合。
・リコール対象品であることを認識しながら使用を続けて火災が起きた場合。
・危険と知りながら、機内の直射日光が当たる場所など高温環境に放置して火災が起きた場合。
さらに、重過失によって火災を引き起こし、他人に大きな被害や怪我を負わせた場合、「業務上過失致死傷罪」や「重過失致死傷罪」などの刑事責任を問われる可能性があります。
Q.もし航空機や電車内でモバイルバッテリーが突然発火してしまった場合はいかがでしょうか。この場合も乗客が賠償責任を問われる可能性はありますか。
牧野さん「使用者が適正な使用をしていた場合には、重過失を認められて損害賠償責任を負う可能性は低いでしょう。このように、モバイルバッテリー製品に通常有すべき安全性の欠如(欠陥)があり、そのことが原因で事故(損害)が発生した場合には、製造物責任法(PL法)に基づきモバイルバッテリーの製造者や輸入業者(同法2条3項1号)が損害賠償責任を負うことになります(同法3条)。製造物責任者に輸入業者が含まれているのは、日本の消費者が海外の製造者を訴えることを期待できない事情から製品の輸入業者が含まれたという経緯があります。
『通常有すべき安全性の欠如=欠陥』とは、具体的に安全基準を満たさない、通常の使用下で自然に発火・爆発する欠陥、あるいは、設計段階で安全対策が不十分な状態を言います。
ただし、使用者が製品を不適切な方法で使ったなど重過失が認められた場合には、使用者が損害賠償責任を負う可能性があります。具体的には、モバイルバッテリー製品の取扱説明書に記載されている方法以外のやり方で充電したり、製品に強い衝撃を与えたり、メーカー指定以外の非純正充電器を使用したりして火災が起きた場合には、使用者に重過失が認められ前述の失火法の免責が認められずに損害賠償責任を負う可能性があります」
(オトナンサー編集部)








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