「鮮血だから痔」は誤り? 「直腸がん」を見落としがちな“便のサイン”とは【消化器病専門医が解説】
直腸がんは痔と勘違いしやすい病気だといわれていますが、お尻からの血の色で見分けることは可能なのでしょうか。消化器病専門医に聞きました。

俳優の中村ゆりさんが9月1日、直腸がんのため死去したと所属事務所が発表しました。直腸がんは痔と勘違いしやすい病気だといわれていますが、お尻からの血の色で見分けることは可能なのでしょうか。
天王寺やすえ消化器内科・内視鏡クリニック(大阪市天王寺区)院長で総合内科専門医、消化器病専門医、内視鏡専門医の安江千尋さんが解説します。
血の色だけで判断するのは危険
直腸がんと痔は混同しやすいとよく言われます。ここで最もお伝えしたいのは、「痔がある」ことと、「今回の血便の原因が痔である」ことは別問題ということです。
痔は非常にありふれた病気です。直腸がんの患者さんが同時に痔を持っていることも当然あります。「昔から痔があるから、今回の出血も痔だろう」と考えてしまうと、直腸がんなど別の病気からの出血を見逃す原因になります。
特に直腸は肛門に近いため、直腸がんから出血すると鮮やかな赤い血として見えることがあります。そのため、よくいわれる「鮮血なら痔、黒っぽい血ならがん」という見分け方は正しくありません。
血液の色は出血している場所や量、腸の中にとどまった時間などによって変化するため、血の色だけで痔と直腸がんを確実に区別することはできません。
直腸がんでは血便のほか、主に次のような症状がみられることがあります。
・便に血や粘液が混じる
・以前より便が細くなった状態が続く
・便秘や下痢など、これまでとは違う便通の変化が続く
・排便したのにまだ便が残っているような「残便感」が続く
・少量の便を何度もする、何度も便意を感じる
・腹痛や腹部膨満感が続く
・原因のはっきりしない貧血
・意図していない体重減少
ただし、ここで非常に大切なのは、これらは直腸がんだけに起こる症状ではないということです。例えば便の太さは便の硬さや食事内容などでも変化します。残便感も過敏性腸症候群や排便機能の問題などで起こります。
ですから、「便が細い=直腸がん」でもなければ、「鮮血=痔」でもありません。1つの症状だけで自己診断するのではなく、「今までと違う変化が続いていないか」「血便を繰り返していないか」「体重減少や貧血など別の変化も重なっていないか」を見ることが重要です。
早期発見のために必要な「正しい対応」
そして、さらに大切なことがあります。
早期の直腸がん・大腸がんには、症状がないことも少なくありません。つまり、「直腸がんの初期症状を全部知っていれば、早期がんを見逃さない」というわけではありません。
症状が出るのを待っていては早期発見できないがんがあるため、症状がない人には大腸がん検診が重要になります。
日本では40歳以上の人を対象に便潜血検査による大腸がん検診が行われています。便潜血検査で陽性になった場合には、「痔があるからだろう」と自己判断したり、もう一度便潜血検査をして陰性なら大丈夫と考えたりせず、精密検査を受けることが重要です。
大腸がんは毎日必ず出血するわけではないため、便潜血検査をやり直して陰性になっても、大腸がんを否定したことにはなりません。
一方で、すでに目で見て分かる血便が出ている人は、「次の大腸がん検診まで待つ」という考え方も適切ではありません。
血便がすでにある場合は「検診を受ける人」ではなく、「症状の原因を診断するために医療機関を受診する人」です。
特に、「血便を繰り返す」「便通の変化が続く」「貧血や意図しない体重減少を伴う」という場合には、消化器内科などを受診し、必要に応じて大腸内視鏡検査を受けることをお勧めします。
「痔だと思っていたら直腸がんだった」というケースを減らすために最も重要なのは、がん特有の症状を覚えることではありません。
「血便の原因を自分で決めつけないこと」が非常に大切です。
(オトナンサー編集部)









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