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東京・北区の小学校火災、「ストーブの近くで洗濯物」報道も…失火でも弁償責任を問われない?【弁護士に聞く】

火の不始末が原因で自宅や職場が焼損し、周囲に被害を与えてしまった場合、どのような罪や法的責任を問われる可能性があるのでしょうか。弁護士に聞きました。

校舎4階の音楽室付近で火災が起きた東京都北区の滝野川第三小学校(6月19日、時事通信フォト)
校舎4階の音楽室付近で火災が起きた東京都北区の滝野川第三小学校(6月19日、時事通信フォト)

 東京都北区立滝野川第三小学校で6月19日、児童と教職員計11人が重軽傷を負う火災が発生しました。

 その後、火元とみられる4階の音楽準備室からは電気ストーブとサーキュレーターが見つかっており、女性教員が警察に対し「(電気ストーブの近くで)洗濯物を乾かしていた」という趣旨の説明をしていたことが新聞やテレビで報じられました。

 メディアによると、ストーブには繊維片が付着していたほか、ストーブのコードにはショートした痕があり、通電状態だったとみられ、警察が失火の疑いで捜査をしているとのことです。もしこのような火の不始末が原因で自宅や職場が焼損し、周囲に被害を与えてしまった場合、どのような罪や法的責任を問われる可能性があるのでしょうか。佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士に聞きました。

「重過失」と認められるかがポイントに

Q.そもそも、火事になった場合、火元の建物の持ち主や住人はどのような責任を問われる可能性があるのでしょうか。自宅にいる際に火事が発生したケース、職場にいる際に火事が発生したケースでそれぞれ教えてください。

佐藤さん「火事になった場合、まず、過失により火事を起こしてしまった人は、失火罪や業務上失火罪、重過失失火罪などの刑事責任を問われる可能性があります。

失火罪は、失火により、『現に人が住居に使用している建造物』『現に人がいる建造物』『他人の所有に係る非現住建造物』など、一定の物を焼損した場合に成立し、法定刑は『50万円以下の罰金』です(刑法116条)。

失火が、業務上必要な注意を怠ったことによるとき、または、重大な過失によるときは、より重く『3年以下の拘禁刑または150万円以下の罰金』に処せられます(刑法117条の2)。

自宅は『現に人が住居に使用している建造物』なので、自宅を誤って焼損させてしまった人は失火罪に問われる可能性があります。職場は、失火時に、建物内に人がいる場合には『現に人がいる建造物』に当たりますし、仮に失火時に人がいなかったとしても、『他人の所有に係る非現住建造物』に当たり、いずれにせよ失火罪に問われる可能性があります。さらに、火事を起こしてしまった人は、損害賠償責任を問われる可能性があります。

ただし、失火責任法により、失火の場合は、失火者に重大な過失がない限り、賠償責任を負わないとされています。

従って、自宅で火事を起こし、その火が隣家に燃え移り、隣家も焼損した場合であっても、火事を起こした人に重過失が認められない限り、賠償責任は生じません。職場であっても同様、失火者に重大な過失がない限り、賠償責任は生じません」

Q.失火責任法では、失火の場合は、失火者に重大な過失がない限り、賠償責任を負わないとされているとのことですが、なぜなのでしょうか。

佐藤さん「なぜ失火責任法がこのようなルールを定めているのかというと、失火責任法が制定された1899年当時は、木造家屋が隣接して建築されていることが多く、消防能力も限られていたため、延焼すると被害が非常に大きくなり、失火による損害賠償責任を限定させるべきと考えられたためです。

失火責任法は1899年に制定された古い法律であり、家屋の耐火性や消防能力が向上した今も、このルールのままでよいのかどうか議論もあるところですが、現状では、失火による損害賠償責任を負うのは、重過失がある場合に限られています」

Q.もしストーブで洗濯物を乾かしていたことが原因で火事になり、周囲の施設に損害を与えた場合はいかがでしょうか。この場合、失火責任法により免責される可能性はあるのでしょうか。それとも、免責の対象外になるのでしょうか。

佐藤さん「失火責任法の『重過失』と認められるかどうかが問題になります。判例上、重過失とは、『わずかの注意さえすれば、たやすく違法有害な結果を予見することができた場合であるのに、漫然とこれを見過ごしたような、ほとんど故意に近い著しい注意欠如の状態』を指すとされています。

重過失があったか否かは、個別具体的な事情を総合的に考慮して判断されます。例えば、ストーブに関連する事案ですと、ストーブをつけたまま寝入ってしまい、毛布がストーブにかかって火事を発生させた事案で、重過失を否定した裁判例があります。

重過失の判断は事案によって異なるため、一概には言えませんが、ストーブで洗濯物を乾かしていたことが原因で火事が発生した場合も、重過失が否定される可能性があるでしょう」

(オトナンサー編集部)

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佐藤みのり(さとう・みのり)

弁護士

神奈川県出身。中学時代、友人の非行がきっかけで、少年事件に携わりたいとの思いから弁護士を志す。2012年3月、慶応義塾大学大学院法務研究科修了後、同年9月に司法試験に合格。2015年5月、佐藤みのり法律事務所開設。少年非行、いじめ、児童虐待に関する活動に参加し、いじめに関する第三者委員やいじめ防止授業の講師、日本弁護士連合会(日弁連)主催の小中高校生向け社会科見学講師を務めるなど、現代の子どもと触れ合いながら、子どもの問題に積極的に取り組む。弁護士活動の傍ら、ニュース番組の取材協力、執筆活動など幅広く活動。女子中高生の性の問題、学校現場で起こるさまざまな問題などにコメントしている。

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