6月の「隠れ脱水」が脳梗塞を招く? 暑さに慣れない時期こそ危ない“血液濃縮”の恐怖
隠れ脱水によって「脳梗塞」のリスクが上がるといわれていますが、本当なのでしょうか。医師に聞きました。

6月は比較的涼しい日もありますが、油断は禁物です。梅雨の時期は気温や湿度が上がるため、汗が蒸発しにくく、体に熱がこもりやすくなります。その結果、発汗や体温調節の負担が増え、本人が気付かないうちに水分不足に傾く「隠れ脱水」が起こることがあります。涼しいと喉の渇きを感じにくいため、小まめに水分を補給する必要があります。
ところで、こうした隠れ脱水によって「脳梗塞」のリスクが上がるといわれていますが、本当なのでしょうか。基幹病院で長年勤務し、総合内科専門医である、たいや内科クリニック(愛知県豊田市)院長の加藤大也さんに聞きました。
6月の「隠れ脱水」で血液が濃くなる?
Q.6月は「隠れ脱水」になりやすいといわれていますが、脱水が原因で脳梗塞が引き起こされるのは本当なのでしょうか。
加藤さん「はい、脱水は脳梗塞のリスクを高める要因の一つと考えられます。ただし、脱水だけで直ちに脳梗塞が起こるというより、高血圧、糖尿病、脂質異常症、心房細動、動脈硬化などの背景がある方で、脱水が引き金となって脳梗塞の危険性を高めることがあります。
6月は、気温や湿度が上がり始める一方で、体がまだ暑さに慣れていないため、脱水に注意したい時期です。暑さに慣れることを『暑熱順化』といいますが、この準備が不十分な時期は、汗のかき方や体温調節がまだ安定せず、本人が気付かないうちに水分が失われることがあります。これがいわゆる『隠れ脱水』です。暑さに慣れていないと熱中症の危険性が高まることは、日本気象協会なども注意喚起しています。
脱水になると、血液中の水分量、つまり血漿(けっしょう)量が減ります。その結果、血液は濃縮され、流れにくくなります。一般には『ドロドロ血液』と表現されることがありますが、医学的には血液濃縮や血液粘度の上昇、循環血液量の低下が問題になります。
ただし、脱水だけで誰にでも脳梗塞が起こるわけではありません。高血圧や糖尿病、脂質異常症、喫煙、慢性腎臓病、肥満症などの持病があると、動脈硬化によって脳へ向かう血管や脳の細い血管が狭くなっていることがあります。
そこに脱水が加わると、血液が濃くなり、血流が低下し、狭くなった血管ではさらに血液が流れにくくなります。その結果、脳の一部に十分な血液が届きにくくなり、脳梗塞のリスクが高まる可能性があります。
従って、隠れ脱水は『脳卒中全般を直接起こす原因』というより、特に脳梗塞を起こしやすい体の条件を悪化させる引き金になると考えられます。生活習慣病がある人にとって、6月にしっかり水分補給を行うことは、熱中症対策であると同時に、脳梗塞予防の大切な一歩になります」
Q.5月から6月は「五月病」「六月病」によるだるさや、寒暖差による眠気・あくびを感じやすい時期です。これら一般的な不調と、脳梗塞の前触れである「一過性脳虚血発作(TIA)」による症状を、一般の人が見分けるためのセルフチェックポイントはありますか。
加藤さん「五月病や六月病、寒暖差疲労では、『何となくだるい』『眠い』『やる気が出ない』『頭が重い』『集中できない』といった、全身的でぼんやりした不調が多く見られます。
一方、脳梗塞の前触れとして知られる一過性脳虚血発作(TIA)は、脳や網膜などに一時的な虚血が起こり、まひやしびれ、言語障害、視覚障害などの神経症状が短時間出る状態です。症状が短時間で改善することもありますが、現在では、症状が消えてもMRI(磁気共鳴画像法)で脳梗塞が見つかる場合があります。そのため、『治ったから大丈夫』と考えるのは危険です。
見分ける最大のポイントは、『突然起こったか』『片側に出たか』『神経の症状か』です。具体的には、顔や腕、目などに次のような症状が出た場合は要注意です」
(1)顔
・片方の口角が下がる
・笑顔が左右で違う
(2)腕
・両腕を前に伸ばすと片方だけ下がる
・片方の手足に力が入らない
(3)言葉
・ろれつが回らない
・言葉が出ない
・相手の話が理解しにくい
(4)目
・片目だけ急に見えにくい
・視野の一部、または半分が欠ける
・物が二重に見える
反対に、眠気だけ、あくびだけ、慢性的なだるさだけ、左右差のない疲労感だけでは、TIAとは言いにくいです。ただし、「急に片側の手足がしびれた」「一瞬だけ言葉が出なかった」「数分だけ片目が見えなかった」「突然、真っすぐ歩けない」「めまいに加えて、ろれつが回らない、物が二重に見える、片側の手足に力が入らない」といった症状があれば、疲れや寝不足と決めつけてはいけません。
特に大切なのは、症状が消えても受診することです。TIAは「小さな発作」ではなく、本格的な脳梗塞の警告サインです。症状が数分で治まっても、当日中、できれば速やかに脳神経内科、脳神経外科、救急外来を受診してください。判断に迷う場合は、救急相談や救急要請をためらわないことが、脳を守る行動になります。
Q.暑さに体が慣れていない6月において、脱水による血液濃縮を防ぎ、脳梗塞のリスクを下げるために有効な「正しい水分補給」や「生活習慣の注意点」について、教えてください。
加藤さん「6月に脳梗塞を予防する上で大切なのは、『血液をサラサラにする』というより、『脱水による血液濃縮を防ぐ』という考え方です。そのためには、『喉が渇いてから飲む』のではなく、『渇く前に少しずつ飲む』ことが大切です。特に高齢の人や糖尿病の人、利尿薬を内服している人は、脱水に気付きにくいことがあります。糖尿病で血糖が高い場合は尿量が増え、脱水に傾きやすくなることもあります。
目安としては、起床時や外出前、帰宅後、入浴前後、就寝前などに、コップ1杯程度の水分を小まめに取ることです。普段の水分補給は、水や麦茶など無糖の飲み物が基本です。大量に汗をかいた時、食事が十分に取れていない時、屋外作業が長い時は、水分だけでなく塩分も失われます。その場合は、経口補水液やスポーツドリンクを状況に応じて使うことがあります。
ただし、経口補水液やスポーツドリンクには糖分や塩分が含まれています。糖尿病や心不全、腎臓病、高血圧の持病がある人は、日常的に飲み続けるのではなく、必要な場面で使用することが大切です。
生活習慣では、暑さに少しずつ慣れる『暑熱順化』が重要です。軽いウオーキングやストレッチ、湯船につかる入浴など、無理のない範囲で汗をかく習慣をつくると、体は暑さに適応しやすくなります。暑熱順化は、暑くなる前から熱中症対策を行う上でも重要とされています。
また、睡眠不足や朝食抜き、過度の飲酒は脱水を悪化させます。血圧や血糖、脂質のバランスを整えること、禁煙すること、心房細動などの不整脈を放置しないこと、抗凝固薬や抗血小板薬を自己判断で中止しないことも、脳梗塞予防には欠かせません。
水分補給は、薬の代わりにはなりません。しかし、体の循環を守る大切な生活習慣です。小まめな水分補給は、脱水による血液濃縮を防ぐ助けになります。ただし、脳梗塞予防の基本は、水分補給に加えて、血圧・血糖・脂質の管理、禁煙、不整脈の治療、処方薬の継続です。
暑さに慣れない6月こそ、体からの小さなサインを見逃さず、早めの水分補給と受診判断を心掛けてください」
(オトナンサー編集部)










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