緑茶&紅茶が「インフルエンザ予防に効果的」は本当? 医師の“見解”は?
緑茶や紅茶がインフルエンザの予防に効果的なのは本当なのでしょうか。医師が研究論文などを基に見解を述べます。
インフルエンザの流行が続いており、感染防止のためにも手洗いやうがいなどの徹底が大切です。そんな中、ネット上では「緑茶でうがいをすると、インフルエンザを予防できる」「紅茶がインフルエンザウイルスを無力化する」という内容の情報が上がっています。
緑茶や紅茶がインフルエンザの予防に効果的なのは、本当なのでしょうか。見解について、医師で出雲いいじまクリニック(島根県出雲市)院長の飯島慶郎さんに聞きました。
予防効果を主張する研究も
Q.「緑茶でうがいをすると、インフルエンザを予防できる」という話を聞きます。緑茶はインフルエンザの予防に効果的なのでしょうか。
飯島さん「緑茶に関しては、国内外で実際にヒトを対象とした臨床研究が積極的に行われており、予防効果について、『システマティックレビュー』『メタアナリシス』といった最上位のエビデンスがそろい始めています。これらのエビデンスにはうがいや飲用に関する論文が含まれており、うがい、飲用ともにインフルエンザの予防効果が認められているようです。
こうした情報が『揺るぎない事実』として医学の教科書に記載されるのは、だいぶ先になるとは思いますが、いずれはこの方向に進むと思われます。現時点で私は『緑茶のうがいや緑茶の飲用が、インフルエンザの予防に効果的なのは、ほぼ間違いないだろう』と考えています」
Q.ネット上では「インフルエンザには紅茶が効果的」「紅茶がインフルエンザウイルスを無力化する」という内容の情報が上がっています。紅茶がインフルエンザの予防に効果的なのは本当なのでしょうか。信用に値する情報なのかも含めて、教えてください。
飯島さん「紅茶に関しては、緑茶と違って論文の数が圧倒的に少ない状況です。さらに論文の大部分が試験管や動物を用いた『基礎研究』にとどまっているため、情報量が緑茶よりも桁違いに少ない状態です。そのため、エビデンスの数では緑茶の足元にも及びません。
しかし、発表されている基礎研究のほとんどがインフルエンザの予防効果を示唆しており、中には緑茶より効果的だと結論付けている研究もありました。また、うがい、飲用ともにインフルエンザの予防に効果的なようです。
数は極めて少ないですが、最近は臨床研究も行われるようになりました。また、研究の対象者を2つ以上のグループに無作為(ランダム)に分け、治療法などの効果を検証する『ランダム化比較試験』も行われており、紅茶の飲用により、『上気道感染症』を予防したと報告している研究もあります。ランダム化比較試験はエビデンスレベルが高いことで有名です。
学術的な論文が少ないため、結論を出すのは早すぎますが、こうした論文に目を通してみて、『紅茶にもインフルエンザの感染予防効果があるだろう』『緑茶よりも効果が高いかもしれない』という印象を抱きました。あまりにも論文が少なすぎるため、今後結論が覆ることも十分にあり得ますが、紅茶好きな私にとっては、うれしいデータでした」
Q.ミルクティーにした場合、インフルエンザの予防効果が弱まる可能性はありますか。
飯島さん「ネット上ではこのような情報をよく見掛けますが、私が検索した限りでは、根拠がしっかり書かれた論文は見つかりませんでした。
ただ、ネット上の情報をたどっていくと、紅茶のインフルエンザの予防効果に関する基礎研究の論文を書いた研究者が述べているようです。この研究者によると、予防効果が弱まるのは、有効成分が牛乳のタンパク質に取り込まれてしまうことが原因だということです。
基礎研究の最中に発見された経験的事実と思われるため、インフルエンザの予防を意識して紅茶を飲む場合、牛乳を入れるのを避けるのがよいでしょう」
Q.インフルエンザを予防するための対策について、教えてください。
飯島さん「インフルエンザ予防の柱は、まずワクチンです。『紅茶、緑茶を飲んでいる』『毎日、うがい、手洗いをしている』からワクチンを接種しなくて良いと考えるのは誤りです。
最高のエビデンスを持ち、効果が明らかなインフルエンザワクチンをきちんと接種した上で、補完的な予防手段を組み合わせるのが最も合理的な方法と言えます」
(オトナンサー編集部)
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