「自分だけは…」は通じない 異常に増えた災害時の保険金支払いが鳴らす警鐘
7月上旬からの豪雨により、各地で大きな被害が発生していますが、今回に限らず、ここ数年の水害による保険金支払金額が急増しています。専門家が解説します。
7月上旬からの豪雨によって、各地で大きな被害が発生しています。こうしたとき、被害を受けた建物や家財の補償として支払われるのが保険金ですが、ここ2、3年に支払われた金額は「異常」としか言いようがありません。保険のコンサルティングをしている、FP(ファイナンシャルプランナー)の筆者が解説します。
「災害保険」としての火災保険
「令和2年7月豪雨」と名付けられた今回の豪雨災害では、九州を中心に大きな被害が出ました。家屋や店舗、田畑などの資産だけでなく、多くの尊い人命が失われ、その傷痕はあまりにも大きなものとなってしまいました。犠牲者の皆さまに心から哀悼の意を表し、被害に遭われた皆さんが一刻も早く元の生活に戻れるよう願っております。
ここ数年、毎年のように大規模な自然災害が発生し、「過去に例がない」「観測史上初」、もしくは「50年に1度」というフレーズが頻繁に使われる事態が続いています。筆者はFPとして、保険のコンサルティングの仕事をしていますが、その中には家や工場などに掛ける火災保険といった損害保険も含んでいるので、このような自然災害とは無縁ではありません。
火災保険というと、その名のイメージで「火災のためだけの保険」だと勘違いしている人も多いのですが、むしろ「災害保険」と表現した方が正確で、その補償範囲には水害も含まれています。このような保険に加入していれば、今回のような水害に遭った場合でも、建物の修繕費や片付けの費用が支払われます。「まさか、浸水で火災保険が使えるとは…」と驚く人も多いのですが、被害に遭った人にとっては、まさに“天の助け”といえるかもしれません。
仕事柄、これらの保険の支払い事例や保険金の支払金額を目にしますが、ここ2、3年、その金額は「異常」としか言いようがありません。表は日本損害保険協会(東京都千代田区)がまとめたもので、地震を除いた過去の自然災害の被害額が大きかった上位10災害のデータです。
ランキングのうち、(1)(2)(4)(8)(9)の5つの災害がここ2、3年の出来事で、これらの保険金支払金額だけでも2兆6177億円に上ります。特に、2018年9月の台風21号による被害は1兆円を超えており、東日本大震災での保険金支払額が1兆2833億円であることを考えると、その被害がいかに大きかったが分かります。
今回の豪雨被害に関しても、現在、各損害保険会社には保険金請求が殺到しており、被害の全体像はまだ分かりませんが、恐らく、この上位10災害のリストに入るのではないかと思います。
また、このリストを見ると、10災害のうち6つが台風シーズンの9月に集中しており、2018年、2019年と大型の台風が日本各地に大きな爪痕を残していることを考えれば、今年も同様の被害が出ることも想定されます。いずれにせよ、この不幸な10災害は、われわれが今後経験する事例で次々に塗り替えられていく可能性が高いのです。
これらの主な原因は地球温暖化だと言われていますが、この話題が出てから20年近くが経過しているのに事態はほとんどよくなっておらず、それどころか、加速度的に「悪化」していることは、誰もが肌感覚で分かっています。
想像を超えた「超異常気象」。しかし、それらの脅威に対してわれわれが打てる手はほとんどありません。昔のように、大型の公共事業で自然を力ずくでねじ伏せようとすることは、今の日本の財政では到底できません。また、人口減少の影響で地方には限界集落が増加し、バラバラに散ったそれらの全てを守ることは難しいでしょう。
結局のところ、自分の命と財産は自分で守るしかないということです。普段から避難時の行動ルールを決めておく、保険にも入っておくなど、それらの対策をしておくことが重要です。
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