この「コロナ不況」を乗り越えるための3つの行動 まずは、備え不足の反省を
新型コロナによる自粛で経済が停滞し、収入が減少した人が増えています。この「コロナ不況」を乗り越えるための心得を専門家が解説します。
筆者はファイナンシャルプランニング(以下、FP)を生業としていますが、ここ数カ月、勤務先の業績不振による時短勤務や休業で収入が激減した会社員や、休業要請によって店を開けられない個人事業主などから深刻な相談が増えています。
まだ一部とはいえ、状況はかなり切迫していると言えるでしょう。国全体の緊急事態宣言は解除されましたが、以前と同じレベルまでの消費回復には相当な時間を要する以上、相談が増えることはあっても減ることはないのではと思っています。
そこで、どのようにして「コロナ不況」を乗り越えればよいのか、解説します。
経営や家計の「自転車操業」を反省
筆者はこのような相談に対して、以下の3つのお話をしています。
(1)普段からの備えが足りていないという反省
(2)緊縮財政
(3)経済的な「第2波」への警戒
まず(1)に関してですが、わずか数カ月間の収入が減っただけで家計や店が傾くようでは、普段から収支のバランスが成り立っていないと言わざるを得ません。もちろん、個々にはさまざまな事情があり、筆者自身も非常に冷たいことを言っていることは自覚していますが、実際のところ、会社員であれば給料、お店であれば売り上げが激減したのは、3月後半から5月末までの2カ月半ほどです。
たとえ、この間の収入がゼロになったところで、生活していける程度の貯蓄は普段から持つべきで、結局は自転車操業状態だったということでしょう。厳しい言い方ですが、「いざというときの備えが甘かった」という認識を持たなければ、また次の危機のときに同じことを繰り返すだけです。
その上で、緊縮財政です。今回の新型コロナウイルスはワクチンや特効薬ができるまで、「早ければ半年」という人もいれば、「3年はかかる」など、さまざまな意見があります。筆者は医療の専門家ではないので、ワクチンや特効薬ができるまで実際にどの程度かかるのかは分かりませんが、FP的な観点では「最悪」を想定し、今の状況が3年程度続くと考えておくべきでしょう。
そこで、筆者は「収入の50%で3年暮らせる体制づくり」を提案しています。FPとして、さまざまな職種の皆さんとお話をして収入の推移を見てきましたが、どのような仕事でも収入が50%以下になることはまれです。また、国の傷病手当や失業手当なども、最低でも収入の50%は補償してくれるようになっているため、どのような状況でも、その程度は確保できると考えてよいでしょう。
かなり極端な前提条件ですが、これくらいエッジを利かせた方が、何を残して何を切るべきかということが明確になります。企業や行政で「聖域なき改革」といったフレーズを使うことがありますが、実は個人ベースでも「聖域」が結構あります。要は「こうでなくてはいけない」という思い込みです。
家なら、より家賃が安い郊外に引っ越すことや、車ならカーシェアリングの利用、そして、誰もが心理的に抵抗のある教育費なども、例えば、オンライン教材やオンラインでのお稽古ごとに変えることで、質を下げることなく、かなりの出費削減が実現できます。
発想自体は自由でよいはずなのですが、実現となると「周りの目」がハードルになります。「あの家は家計が厳しくて引っ越したのでは」「車すら持っていないのか」「習い事を変えると、子どもの友人関係にヒビが入る(他の親御さんにどう思われるか)」など、大きな行動をする際には、意外と周囲の評価が気になって決断できないことが多いのです。
しかし、「50%で3年」という前提であれば、そのようなことを気にする余裕はなく、今までは打てなかった手が実行できます。なお、ここでの目的は実際に支出を半分に減らすことではなく、人の目を気にせずに自分だけにフォーカスして全てをゼロベースで見直すことです。結果、家計をより筋肉質にできればよいのです。
絶対に船から降りないこと
そして、最後。経済的な第2波です。筆者自身、このまま経済が復活し日常に戻ることを願ってやみません。しかし、新型コロナウイルスで数万人単位で犠牲者が出た北米、欧州、中国がすぐに以前のように戻るとは思えず、輸出に頼る日本としては、これからジワジワと影響を受ける可能性が高いでしょう。
新型コロナウイルスの第2波より、経済危機的な第2波の方が実現性は高く、その方がより「高い波」となるかもしれません。ここで重要なことは「絶対に船から降りるな」ということです。世の経営者は常に先を見ていますから、早めに手を打ちます。実際に危機が来る前からリストラに手をつけるというのは、ある意味合理的な判断です。
先に述べた家計の緊縮財政と同じく、今のような状況は会社にとっても、余計なぜい肉を落とす「よいタイミング」でもあるのです。このようなとき、妙に前向きと言うか、人がよいと言うか、ほとんど抵抗せずにリストラに応じてしまう人がいます。リーマン・ショックのときにも結構いました。30~54歳のミドル世代に多いものです。
「以前からやりたかったことがあった」「会社も厳しいだろうから」と言って、新しい分野に挑戦したり、起業をしたりしますが、やはり軽率だと言わざるを得ません。今は船を降りてはいけません。何を言われても毅然(きぜん)と拒否し、あまりにしつこいようであれば、労働基準監督署や弁護士などに相談すべきです。もちろん、職場での人間関係は悪くなりますが、まずは何より現金収入。それを断たれるよりはマシです。
また、これらのリストラのきっかけとなる「会社も厳しい」ということ自体がフェイクである可能性も高いのです。日本の企業全体の内部留保は、アベノミクスでかなり増えており、2012年末の270兆円に対し、2019年末には479兆円と209兆円も増加しています(財務省法人企業統計より)。
企業全体で479兆円という国の予算の4年分超のお金を今こそ吐き出すべきであり、格好をつけて人身御供になる必要はないでしょう。逆に「自分の勤務先は本当に厳しい」と言うのであれば、それこそ相当な危機感を持つべきで、今からでも資格取得や副業など現金収入を得る手だてを考えておくべきです。
未曽有のコロナ禍が今後どうなるのか、それは誰にも分かりません。分からないからこそ、できる限りの備えが必要です。ここに挙げた3つのポイントが、その一助になれば幸いです。
(あおばコンサルティング代表取締役/1級FP技能士・宅建士 加藤圭祐)
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