テレワーク中、子どもにパソコンを壊され…修理に「火災保険」が使えるかも?
自宅でのテレワークで予期せぬトラブルが発生したとき、ノートパソコンやタブレットの修理費用や買い替え費用を「火災保険」で賄える可能性があります。
自宅でのテレワークは、子どもが机の上の飲み物をこぼして、ノートパソコンやタブレットにかかり故障するなど予期せぬトラブルが発生することがあります。こうしたとき、パソコンやタブレットが自分のものであれば、修理費用や買い替え費用を自己負担せざるを得ませんが、いずれも数万円はするのでばかになりません。しかし、修理や買い替え費用を「火災保険」で賄える可能性があります。保険のコンサルティングもしている、FP(ファイナンシャルプランナー)の筆者が解説します。
火災保険の「対象」「範囲」とは
新型コロナの影響で、自宅でテレワークをする機会が増えています。しかし、当然ながら、自宅は家族が暮らす場であり、食事をしたり、睡眠を取ったりすることを優先して設計されており、なかなか仕事に集中できるスペースを確保することは難しいようです。
子どもが自宅にいる機会も増えているので、予期せぬことも発生します。例えば、仕事中、1人で遊ぶことに飽きた子どもがまとわりついてきて、机の上のコーヒーをこぼし、それがノートパソコンにかかって故障…。あるいは、ソファの上に置いたタブレットを子どもが踏みつけて画面が割れてしまう…などなど。「うわ!! 何やってるんだ!!」という場面ですが、子どもを責めても仕方ありません。
しかし、このコロナ禍により、給与やボーナスが減っている人も多く、数万円の修理費用や買い替え費用はばかになりません。このようなとき、これらの費用を保険で賄える可能性があることをご存じでしょうか。
使う保険は、家の火災保険です。この火災保険に加入している場合、「ある条件」をクリアしていれば、前述のようなケースは「事故」と認められ、修理費用や買い替え費用を保険金として支払ってくれる可能性があるのです。
ノートパソコンやタブレットを保険で直す場合、2つの条件があります。その2つを理解するために、まずは火災保険の「対象」「範囲」という概念を知る必要があります。
火災保険では、補償の対象が「建物」と「家財」の2つに分類されています。建物は建物そのものを指し、家財は家の中にあるもの、例えば、洋服やテレビ、冷蔵庫などを指します。ノートパソコンもこの財物に含まれます。そのため、契約している火災保険に、まずこの「家財」が含まれていることが前提となります。
次に「範囲」です。一口に火災保険といっても、実はその補償範囲は火災だけではありません。火災以外にも、水害、風害、雪害、ひょう害など、さまざまなリスクに対しての補償が含まれています。そして、これらは基本部分にパッケージされているものと、オプション扱いになっているものに分けることができます。
保険会社によっても内容が異なるので一概にはいえませんが、例えば、水害などはオプション扱いになっていることが多いです。マンションの高層階であれば、そもそも水害のリスクがないからです。
そのようなオプションの一つに「破損・汚損」というものがあります。これは突発的な事故により、建物や家財(ノートパソコンなど)が壊れたり汚れたりした場合、原状回復をするための費用の補償を受けられるものです。
皆さんが現在加入している火災保険が家財も対象となっており、さらに破損・汚損の補償が含まれていれば、子どもを原因とした事故でノートパソコンが壊れたとき、その修理費用や買い替え費用が保険金の支払い対象となる可能性があるということです。
ノートパソコンやタブレットなどのデバイスは日進月歩であるため、修理するより買い替えた方が性能もよく、安いというようなことが往々にして発生します。このような情報は保険会社も持っているので、例えば、修理をしたら5万円かかるが同程度の最新機種が4万円で購入できるという場合は「修理できるのであれば保険金は5万円」という会社と、「同程度のものが4万円なのだから保険金は4万円」というように判断が分かれることがあります。
なお、前者で5万円を受け取ったとしても、修理するか新機種を購入するかはその保険加入者の自由です。「修理で5万円払ったのだから、必ず修理しなくてはいけない」というようなことは保険会社も言いませんので、堂々と最新機種を購入し、差額はお小遣いとしても大丈夫です。
ここでは、ノートパソコンやタブレットについてお話ししましたが、他にも、テレワークをしやすいように家の中の家具や机を配置換えしようとした際、家具をぶつけて壁に穴を開けてしまったり、壁紙を剥がしてしまったりした場面でも、破損・汚損の対象となる可能性があります。
とにかく、キーワードは「突発的(故意ではない)」ということです。なお、よく聞かれるのですが、スマホは「家の中だけで使うものではないから」という理由で財物からは対象外となっている保険会社がほとんどです。
壊れてしまったノートパソコンやタブレットが保険で直る、場合によっては最新機種が手に入ってしまうなら、こんなお得な話はありません。しかし、悪用は厳禁です。(1)古くなったパソコンにわざと水をこぼす(2)経年劣化で故障したものを事故だと言い張る(3)会社から貸与されているものを自分のものだと主張する――などです。
具体的な方法は明かせませんが、保険会社もこれらの請求はしっかりとチェックしています。彼らもプロですから、不正請求はほぼ確実に発覚します。そして、これらは犯罪です。重いペナルティーを科せられることになりますし、実際にそのような行為で会社を首になった人もいます。わずか数万円で人生を棒に振るのは割に合わないでしょう。
あくまで「突発的な事故」であることを前提として、保険を有効活用してもらえればと思います。ただし、ここまで述べてきたのは、火災保険の破損・汚損についての一般的な解釈をもとにした解説です。実際の取り扱いは各保険会社や契約内容によっても異なりますので、詳細については、ご自身が加入されている保険会社にご確認ください。
(あおばコンサルティング代表取締役/1級FP技能士・宅建士 加藤圭祐)
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