「入院1日あたり○○円」のがん保険に潜む“困窮”という落とし穴
がんになって長期の治療をする割合は3割程度。このリスクに対し、これまでは「入院1日○○万円」という保険が主流でしたが、「入院の短期化」が進んだことで異なるタイプの保険が登場しています。がんへの備えは万全ですか。

がんが大変な病気であることは言うまでもありませんが、昨今では、効果が高い抗がん剤が多く開発されたことで、がん治療の一つの目安となる5年生存率は全体的に上がっています。実際、筆者は生命保険の仕事を通じて、がんに罹患したお客様のお話を伺う機会が多いのですが、その多くは2~3週間程度の入院・手術で復帰しておられ、本人たちが「心配していたが、思ったよりもあっさり治った」とおっしゃられるほどです。
数年を要するものまで振れ幅が大きい
しかし、全員がそうかといえば、残念ながら亡くなる方や転移・再発で長期間の治療を余儀なくされる方もいます。ひと口に「がん」といっても、前述のような短期間の治療から数年の抗がん剤や放射線治療を要するものまで「振れ幅が大きい病気」の印象です。
その目安の一つとして、保険の給付金をお支払いする立場からは「手術給付金の請求があるかどうか」というものがあります。つまり「切れる(=手術)がどうか」ということです。がんに侵された場所を「取り除く」ことができれば回復や復帰も早いですが、それができない場合は抗がん剤や放射線治療に頼ることになり、どうしても治療が長引く傾向にあります。そして「お金とがん」という視点で見れば、前者はそれほどお金がかかりませんが、後者は収入が減るため非常に苦労するのです。
それでは、治療のために仕事を休むとどうなるのでしょうか。
がんだけでなく、病気を原因として仕事を休む場合、会社員の健康保険には傷病手当という制度があり、おおむね給与の3分の2を1年6カ月間、受け取ることができます。「そうした制度があれば問題ないのでは」と思うかもしれませんが、実際のところ収入の3分の1の補てんは楽ではありません。
また、傷病手当にはボーナスが含まれないため、ボーナスの年間支給額が月額給与の4カ月程度と仮定すると、以下に示すように収入の半分程度しか確保されません(注:企業からボーナスが支給される場合もありますが多くの場合は支給されない)。
年間収入=毎月の給与×12カ月+ボーナス(4カ月)=給与16カ月分
傷病手当=給与の3分の2×12カ月=給与8カ月分
なお、これは会社員の場合であり、個人事業主などは傷病手当すらないため、より深刻です。
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