「病死は仕方ない。自殺はよそでやってくれ」 座間事件で注目…事故物件に苦しむ大家さんの保険がある
座間市のアパート一室から9人の遺体が見つかった事件。こうした事案が発生した部屋は「事故物件」と呼ばれますが、自殺や孤独死が増えた昨今、空室リスクに備える大家さん向けの保険も登場しています。

9人の犠牲者を出し、いまだ全容が解明されていない座間市の9人遺体事件。このような事件が発生すると、その現場となった不動産は「事故物件」と呼ばれ敬遠されます。当然、敬遠する気持ちは理解できるのですが、これらの物件の大家さんからすると切実な問題でもあります。今回の事件現場となったあのアパートでは、今のところ退去者はいないと報じられていますが、新たな入居者はいないでしょう。
貧困や高齢化で高まる「新たなリスク」
一般的に知られたことですが、不動産のルール上、事故が発生した物件ではそのことを伝える義務があります。とは言え、実際は明確に決まっているものではなく、過去の判例などが基準になっており、よく言われるのは「事故発生直後の次の住人」には、事故について告知する義務はあるが、その次の住人で、かつ事故から2年経過していれば「伝えなくてもよい」ということです。
そのため、事故が発生すると、多くの大家は相場より安い金額で2年間貸し出し、事故を“封印”してから新たに賃貸へ出しています。しかし、最近はネット上に事故物件情報をまとめたものもあり、随分昔のことでもその記録が消えることはありません。
今回の事件ほど陰惨なものでなくても、単身者世帯が増加し、そこに貧困や高齢化などの問題が重なることで自殺や孤独死などが増えています。一件でもそのような事故が発生すれば、物件全体が半永久的に「いわく付き」と見られ、大家さんにとっての「新たなリスク」となるのです。
こうした問題に対し、最近は損害保険会社が「事故物件保険」とでも呼べるような保険商品を販売しています。その商品名や内容は、保険会社や保険料によってまちまちですが、おおむね事故物件の部屋とその上下左右の部屋が対象で、事故が原因で空室が続く間の家賃を受け取れるというものです(期間の上限あり)。また、事件に関する清掃費なども支払い対象となります。
事故物件保険は特に「少し古くなった物件」のオーナーに人気です。古い物件は家賃が相場より低いので高齢者や低収入の方が入居しやすく、必然的に前述のようなトラブルが発生する可能性が高くなるからです。実際、保有する不動産で自殺や孤独死が発生した方にお会いしたことがありますが、遺体の臭いやシミなどは「独特」で、その処理は専門業者に依頼するため通常よりも高額になるといいます。
「病死は仕方ない。でも自殺は『よそでやってくれよ』と思う」
ある大家さんの言葉は冷たいようですが“本音”なのでしょう。特に今回のような陰惨な事件は、被害者だけでなく大家さんから見ても理不尽以外の何者でもないのです。
(株式会社あおばコンサルティング代表取締役 加藤圭祐)
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