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アプリ飲み、柄マスク…コロナ禍の非日常が「日常」に変わった人たち【#コロナとどう暮らす】

外出自粛などが求められた「緊急事態宣言」が全面解除されましたが、宣言期間中の“非日常”から、新しい発見や価値観の変化があった人もいます。

今後、オンライン飲み会を続けるという人も
今後、オンライン飲み会を続けるという人も

 新型コロナウイルス感染症の「緊急事態宣言」が5月25日に全面解除されましたが、宣言期間中は、日本に住むほぼ全ての人が外出自粛やソーシャルディスタンスの確保、普段のマスク着用など、以前とは違う日常を過ごすことを余儀なくされました。しかし、そうした“非日常”の生活の中から、新しい発見や価値観の変化があった人もいるようです。具体的にどのようなものがあるのか、街の声を拾ってみました。

自宅に「むしろ、いたい」へ変化

 不要不急の外出を控えなければならなかった宣言期間中は必然的に、自宅で過ごす時間が普段よりも大幅に増えることになりました。外出したくてもできない状況はストレスがたまるものですが、自宅での過ごし方に活路を見いだし、「意外と悪くないかも」と感じた人たちもいるようです。

「VOD(ビデオ・オン・デマンド)で見られる映画を片っ端からチェックして、気になったものをどんどんお気に入りに登録していったら、消化しきれない量になったので、ひたすらそれを見て過ごしていました。

途中、海外ドラマにも手を出してハマり、完全に時間がいくらあっても足りない状態に。コロナ禍以前に、どのような過ごし方をしていたか思い出せないくらいで、自宅では宣言解除後も映画ざんまいで過ごしています。自宅っていいなと、この年齢になって新発見です」(33歳女性)

「通話アプリを使った飲み(会)が思っていたよりもよくて、今後も活用していきたいと思っています。(アプリを)使う前は『顔を合わせなきゃ飲みじゃないだろ』なんて思っていたのですが、やってみたら意外とお互いの雰囲気が伝わるし、誰かが自宅にある小道具、例えば、卒業アルバムなんかを持ち出して盛り上がれることもあります。

料理と飲み物は自分で用意する必要があるけど、お店で飲むよりも圧倒的に安上がりだし、何より飲みが終わった後、そこから自宅に帰る必要がないし、これは結構いいことずくめだなと。

まあ、そうは言っても直接会って飲むことにも多くのメリットがあるし、そっちの方になれ親しんでいるので、やはりメインはそっちです。ただ、翌日の朝が早い日や給料日前の金欠気味なときには、積極的に通話アプリ飲みをやっていきたいと思うようになりました」(29歳男性)

 この他にも、ゲームなど自宅でできる趣味に目覚めた人もいるようで、「いなくちゃいけない自宅」が「むしろ、いたい自宅」へと変わったケースが散見されました。

ソーシャルディスタンスが心地よい

 新型コロナの感染拡大防止が呼び掛けられる中で、“ソーシャルディスタンス”という言葉、および、それにまつわる概念が広まりました。意識して人との距離を確保するため、気を使うことも多いのですが、むしろ、人との距離を取れることを喜ぶ人もいます。

「レジに並ぶとき、他のお客さんがソーシャルディスタンスを取ってくれるのがありがたいです。以前は『距離が近くてなんとなく嫌だな…』と思うことが多かったので。コロナが落ち着いた後も、さすがに宣言期間中ほどの距離は取られないでしょうが、この風潮は残ってほしいと思います」(43歳男性)

 コミュニケーション研究の一つである「近接学」に「パーソナルスペース」という考え方があり、「他人との間の適切な距離は、相手との関係性や親密度によって変化する」とされています。しかし、そのスペースの感じ方には個人差があるので、自分の領域(心理学で「ボディーゾーン」とも)を人より広めに持っている人は、ソーシャルディスタンスがきちんと確保されていないコロナ禍以前は、レジに並ぶ際などに不快感を覚えることがあったのでしょう。

 自粛期間が明けて、各人のソーシャルディスタンスがどう変化していくか、どう変化しているのかを観察すると面白いかもしれません。

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武藤弘樹(むとう・こうき)

フリーライター

早稲田大学第一文学部卒。広告代理店社員、トラック運転手、築地市場内の魚介類卸売店勤務などさまざまな職歴を重ね、現在はライターとミュージシャンとして活動。1児の父で、溺愛しすぎている飼い猫とは、ほぼ共依存の関係にあるが本来は犬派。趣味はゲームと人間観察。

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