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東京五輪、無観客は選手にどう影響? 不参加チームも…“メダルの価値”は?

大半の会場で無観客開催が決まった東京五輪ですが、出場を見合わせるチーム、選手も出ています。無観客開催の影響や、異例の大会での「メダルの価値」について、専門家に聞きました。

無観客で行われた東京五輪陸上テスト大会(2021年5月、AFP=時事)
無観客で行われた東京五輪陸上テスト大会(2021年5月、AFP=時事)

 7月23日開幕予定の東京五輪について、東京都への緊急事態宣言決定を受け、首都圏を中心に大半の会場で無観客開催となることが決まりました。コロナ禍で参加や予選出場を見合わせるチーム、選手も出ており、来日した選手たちも厳しい行動規制を課せられています。大半の会場で無観客となったことの影響や、五輪史上でも異例の形の開催による「メダルの価値」への影響について、一般社団法人日本スポーツマンシップ協会理事の江頭満正さんに聞きました。

選手はかえって集中?

Q.開催都市である東京都の会場をはじめ、大半の会場が無観客となりました。率直な受け止めを聞かせてください。

江頭さん「五輪の中止という選択肢が、いつの間にかなくなりました。そうなると、無観客しか残された手はなかったと思われます。『アスリートファーストというなら、無観客一択』と私は以前から主張してきました。

日本人にとっては、東京都の新規感染者が1000人を超えると危機感が募りますが、各国の1日最多感染者数を比較すると、日本全体では今年1月8日に8000人に迫りましたが、人口100万人当たりでは63人(小数点第1位四捨五入、以下同)です。アメリカ792人、イギリス1014人など欧米各国より極めて少なく、ロックダウンせずにコロナを抑え込めている『成功事例』と評価されても不思議ではありません。

2020年五輪の候補地として最終選考に残った都市はマドリードとイスタンブールですが、スペインは1783人、トルコは756人です。無観客になったとはいえ、日本だからこそ、五輪が開催できるといえます」

Q.開会式、閉会式、大半の会場での無観客という事態は五輪史上初めてと思われます。アスリートにどのような影響があるでしょうか。

江頭さん「サッカーでは通常、無観客で試合を行うことが『罰則』として扱われていますが、コロナ禍によって、2020~21シーズン、ほとんどの試合が無観客となったスペインリーグについて、ゲームのパフォーマンスが落ちたようには見えません。

確かに観客席からの声援はなくなるでしょうが、観客のやじや、ツール・ド・フランスのような事故の心配もありません。出場するアスリートは外部要因によって集中を乱される要因が減り、今まで以上に競技に集中できるでしょう。アスリートたちは既に、無観客でも最高のパフォーマンスを出せるように調整に入っていると思います」

Q.無観客といっても、多くの選手、関係者が東京に集まることで、大会期間中に新型コロナウイルスがさらに広がる恐れがあります。

江頭さん「問題は選手村でしょう。世界各国のアスリートが集まってきます。そこで、一日でも滞在日数を減らしてもらうのはどうでしょう。自分が出場する競技が終わったら、翌日、帰路についていただく。閉会式に出場するアスリートが減りますが、『五輪パンデミック』を起こさないために、今からでもできることをやるべきです」

Q.新型コロナの影響で参加を取りやめた選手や代表チームがあり、今後も増えてくる可能性があります。不参加が多い中での五輪は「真の世界一」を決める大会といえるのでしょうか。

江頭さん「当初予想の参加国と地域は205で、参加人数は1万2000人以上でした。今後、不参加の国と地域が増加して150程度になったと仮定しても、1988年のソウル大会と同程度の規模になります。ソウル大会は16年ぶりにボイコットのない大会となり、159の国と地域が参加して23競技237種目が行われました。開催国の韓国は金メダル12個と、上位4位という好成績でした。

ソウル大会が開催された1988年はイラン・イラク戦争末期で、中国とベトナムがスプラトリー諸島で衝突するなど、東西冷戦は終わらず、世界が混沌(こんとん)としていた時代です。そんな中、3大会ぶりに東西の主要国が参加した大会で159の国と地域の参加は当時、とても喜ばしいことだと報道されました。

もちろん、ソウル大会はアメリカもソ連も参加していたので『世界一』は間違いのないものでした。東京五輪はソウル大会と同規模以上になると思われ、アメリカはもちろん、ロシア選手も個人資格ながら300人以上が参加するので『真の世界一』を決める大会だといえるでしょう」

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江頭満正(えとう・みつまさ)

独立行政法人理化学研究所客員研究員、一般社団法人日本スポーツマンシップ協会理事

2000年、「クラフトマックス」代表取締役としてプロ野球携帯公式サイト事業を開始し、2002年、7球団と契約。2006年、事業を売却してスポーツ経営学研究者に。2009年から2021年3月まで尚美学園大学准教授。現在は、独立行政法人理化学研究所の客員研究員を務めるほか、東京都市大学非常勤講師、一般社団法人日本スポーツマンシップ協会理事、音楽フェス主催事業者らが設立した「野外ミュージックフェスコンソーシアム」協力者としても名を連ねている。

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