オトナンサー|オトナの教養エンタメバラエティー

サッカーJ1「経済効果」ランキング、1位は413億円! マリノスではなく関西のチーム

「経済効果NET」が、サッカーJ1全18クラブの2022年リーグ戦終了時の経済波及効果(推定値)を算出しました。

最終戦でヴィッセル神戸を破り、J1優勝を決めた横浜F・マリノス(2022年11月、時事)
最終戦でヴィッセル神戸を破り、J1優勝を決めた横浜F・マリノス(2022年11月、時事)

 2022年のサッカーJ1リーグは横浜F・マリノスの優勝で幕を閉じましたが、「経済波及効果」で18チームを比べると、どのような結果が出るのでしょうか。筆者が代表を務めるサイト「経済効果NET」(スポーツや音楽ライブを中心に各種経済効果を算出・公開)では、Jリーグが開示している公式の観客動員数と、2021年と2020年のクラブ経営データをもとに、J1全18クラブの2022年リーグ戦終了時の経済波及効果(推定値)を算出しました。

 その結果、経済波及効果1位は「ヴィッセル神戸」で、リーグ戦とは違う順位となりました。

1位は「ヴィッセル神戸」

 経済波及効果の算出にあたって、観客消費の交通費は、各試合対戦相手の本拠地から全観客の12%(過去の計算データから類推)が移動すると仮定。対戦相手クラブの宿泊交通費は、本拠地から試合会場までの公共交通機関による運賃を、選手・コーチおよびフロントスタッフ合計で35人と仮定して積算しました。

 観光消費額は、観光庁の「全国観光入込客統計に関する共通基準」(2020年)と、各都道府県の観光統計より、県内日帰り観客単価、県外宿泊観客単価を算出。チケット消費は、2021年の「J1クラブ決算一覧」から、2020年と2021年の総観客数を勘案して算出しました。事業収入とチーム運営費は、「J1クラブ決算一覧」2021年の数値をそのまま算入しました。

 波及効果と税収効果の計算には、経済産業省MICEの経済波及効果測定のためのモデルを使用し、2015年版全国産業連関表に基づき算出しました。

 その結果、日本全国に対して最も経済波及効果額が大きかったのは「ヴィッセル神戸」で、413億9870万円でした。観客数が2022年シーズン、ホーム17試合の合計で26万4725人とリーグ8位であったにもかかわらず、経済波及効果が大きくなった理由は、チーム運営費が95億2700万と高額であることです。

 観客数が近い「清水エスパルス」のチーム運営費は43億2800万円、「FC東京」で49億9800万円であることと比較すると、ヴィッセル神戸がイニエスタ選手ら選手年俸に大金を投入しているため、経済波及効果が1位になったと考えられます。

 ホームタウン内に限定して経済波及効果を見てみると、FC東京が約200億円となりました。これは東京都の内需率が高く、さまざまな製品やサービスが東京都内で購入されているためと思われます。一方、「湘南ベルマーレ」は全国への経済波及効果約135億円に対し、神奈川県へ約40億円と30%程度しかなく、Jリーグ興行で活発になる消費項目は、県外での需要につながっているようです(2015年版全国産業連関表による)。

 観客1人あたりで比較すると、「サンフレッチェ広島」の15万748円が特徴的です。この金額には一次・二次の波及効果が含まれているため、実際の消費額はもっと少なくなりますが、総合1位のヴィッセル神戸と僅差の2位です。これには、広島という地理的条件が影響していると考えられます。

 観客の交通費だけで12億円超。北海道や関東はもちろん、関西からも九州からも距離があり、宿泊を伴う観戦になる可能性が高いことが影響していると思われます。「宮島」「原爆ドーム」といった観光地や、「お好み焼き」に代表されるご当地グルメもあり、サッカー観戦だけではない魅力があります。

 ビジターチームのサポーターが、サッカー観戦だけでなく、その地域への旅行を楽しむ傾向が強まっていることは、2022年シーズン、静岡をホームタウンとする2チームがJ1から降格した際、SNSで「さわやかがなくなった」といった書き込みが目立ったことからも分かります。「さわやか」は静岡県内で展開している、1時間待ちは当たり前の人気ハンバーグチェーン店で、観戦ついでに訪れるサポーターが多かったのでしょう。

 J1クラブを経済波及効果だけで見ると、対戦相手のサポーターをどう呼び込むかが重要になります。今回は「推定値版」であり、県外観客を12%(過去実績値より)と仮定して計算していますが、クラブによって実態は異なります。対戦相手サポーターに対して4P(プロダクト、プライス、プレイス、プロモーション)を充実させることが重要になると考えられます。

【ランキング】J1経済効果ランキング、全18チームの順位を見る

画像ギャラリー

1 2

江頭満正(えとう・みつまさ)

独立行政法人理化学研究所客員研究員、一般社団法人日本スポーツマンシップ協会理事

2000年、「クラフトマックス」代表取締役としてプロ野球携帯公式サイト事業を開始し、2002年、7球団と契約。2006年、事業を売却してスポーツ経営学研究者に。2009年から2021年3月まで尚美学園大学准教授。現在は、独立行政法人理化学研究所の客員研究員を務めるほか、東京都市大学非常勤講師、一般社団法人日本スポーツマンシップ協会理事、音楽フェス主催事業者らが設立した「野外ミュージックフェスコンソーシアム」協力者としても名を連ねている。

コメント