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コロナ感染の妊婦、入院できず赤ちゃん死亡 妊婦のリスクとワクチンの意義とは?

新型コロナウイルスに感染した妊婦が、入院先が見つからずに自宅で早産し、赤ちゃんが死亡したという報道がありました。妊娠中の感染や重症化を防ぐには、どうすればよいのでしょうか。

妊婦の感染や重症化、どう防ぐ?
妊婦の感染や重症化、どう防ぐ?

 千葉県柏市で、新型コロナウイルスに感染した30代の妊婦が、入院先が見つからずに自宅で早産し、赤ちゃんが死亡したという報道がありました。妊娠中の女性は若い世代が多く、ワクチンの優先接種の対象になっていなかったことに加え、厚生労働省などが当初、「妊娠12週までは接種を避けていただく」とホームページに記載していたこともあり、ワクチン接種が遅れ気味だったという背景もあります。

 現在は「12週まで」の制限がなくなり、「妊娠中のいつの時期でも接種可能」となって、各地で優先接種の動きも広がっています。妊娠中の女性への新型コロナのリスクや、ワクチン接種の意義と注意点について、産婦人科医の尾西芳子さんに聞きました。

ワクチンはいつでも接種可

Q.妊娠中の新型コロナのリスクは。

尾西さん「新型コロナ自体の働きとして、お母さんや赤ちゃんの将来にどのように影響を及ぼすかということは、まだはっきりとは分かっていませんが、新型コロナの特徴として、血栓を引き起こす可能性があることと、呼吸器の問題(肺炎など)を引き起こすことは妊娠中のリスクとして挙げられます。胎児は血管(へその緒や胎盤)を通して、呼吸をしたり、栄養をもらったりしていますが、そこに血栓ができて詰まってしまうと呼吸ができなくなってしまいます。

呼吸器の問題に関していえば、新型コロナは妊娠25週以降で重症化リスクが高いというデータが出ています。25週以降は子宮が大きくなることで横隔膜(肺の下になる)を圧迫し、通常の状態(新型コロナなどの疾患にかかっていない状態)でも呼吸が苦しくなりがちです。そこへ肺炎による換気不良が重なると、血液内の酸素濃度が一気に低下してしまうのです。

また、妊娠中の特徴として免疫機能の低下がみられ、新型コロナだけでなく、どのような感染症にもかかりやすくなります。さらにウイルスや細菌に感染した場合、体の中で病原菌と闘うために出てくる炎症物質によって、子宮の入り口が柔らかくなり、早産してしまうリスクが上がります」

Q.新型コロナに関して、診療現場ではどんな不安の声が聞かれますか。

尾西さん「実際の診療現場では、新型コロナへの感染に関する質問より、新型コロナ用のワクチンに関する質問の方が多く聞かれます。やはり、直近の問題として、『接種するか』『接種しないか』で悩んでおられるようです」

Q.そのワクチンについて、妊婦への優先接種の動きが広がっています。ワクチンの意義は。また、夫をはじめとする同居家族もワクチン接種(12歳以上)をすべきでしょうか。

尾西さん「日本産科婦人科学会では以前、妊娠初期の器官形成期(赤ちゃんの重要な臓器が出来上がる時期、具体的には妊娠12週まで)の接種を避けるよう周知していましたが、現在は妊娠期間を問わず(初期から)、接種を推奨すると変更しています。接種が世界各地で進むにつれ、海外で妊娠初期に接種した人のデータが集まってきており、胎児の異常の発生率が、接種しない場合と差がなかったとする報告がされているためです。

どのような薬やワクチンもリスクとベネフィットをてんびんにかけ、どちらが、より重要かを考えて判断することが大切です。これまではワクチンによる胎児への影響を不安視して、接種を悩んでいた人も多いと思いますが、やはり、接種により重症化が防げることや、接種しないことによる千葉の件のようなリスクがあることが分かってきたため、妊婦さんだけでなく、家族も接種を前向きに検討すべきだと思います。

家族が打つことで、日々一緒に過ごす、いわゆる濃厚接触者から、家庭内へウイルスが持ち込まれる危険性を減らすことが目的です」

Q.新型コロナのワクチンは、発熱や接種部位の痛みといった副反応が起きることがあります。一般的には解熱鎮痛剤を飲んで対処してよいとされますが、妊婦の場合も解熱鎮痛剤を飲んでよいのでしょうか。

尾西さん「解熱鎮痛剤の内服は可能ですが、薬の種類に注意が必要です。現在、多くの人が内服しているアセトアミノフェン(商品名『カロナール』など)は妊娠中も問題なく内服できます。しかし、ロキソプロフェン(商品名『ロキソニン』)等の『NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)』と呼ばれる解熱鎮痛剤は、妊娠中は内服できません。薬局などで自己判断して購入するのではなく、かかりつけの医師に処方してもらうようにしましょう」

Q.コロナ禍での、妊娠中の女性や家族の生活上の注意事項を教えてください。

尾西さん「今回、本当に痛ましい一件があって、妊娠中の人やご家族は不安になることも多いと思います。『妊娠中だから』と特別注意することはありませんが、まずは基本的な感染対策が第一です。徹底した手洗い、うがい、マスクの着用に加え、普段の買い物であっても、なるべく、夫などの家族に行ってもらう、宅配を頼むといった工夫も今は必要です。

残念なことに現状では、たとえ、新型コロナウイルスに感染したとしても『妊婦さんだから、優先的に治療する』という余裕のない自治体がほとんどです。自分と赤ちゃんの身は自分で守るという気持ちが大切です。出産は人生の中で特に大切なお祝い事です。

皆でお祝いしたい気持ちはとてもよく分かるのですが、ベビーシャワー(出産間近の時期、家族や親せき、友人らが集まって安産を願うアメリカ発祥のパーティー)のような妊娠中のイベントは、たとえ、少人数での開催であっても、感染リスクが伴います。どうしても安産祈願やお祝いをしたいのであれば、贈り物やオンラインなど、周りの人も気遣いをするようにするとよいですね」

(オトナンサー編集部)

尾西芳子(おにし・よしこ)

産婦人科医(日本産科婦人科学会会員、日本女性医学学会会員、日本産婦人科乳腺学会会員)

2005年神戸大学国際文化学部卒業、山口大学医学部学士編入学。2009年山口大学医学部卒業。東京慈恵会医科大学附属病院研修医、日本赤十字社医療センター産婦人科、済生会中津病院産婦人科などを経て、現在は「どんな小さな不調でも相談に来てほしい」と、女性の全ての悩みに応えられるかかりつけ医として、都内の産婦人科クリニックに勤務。産科・婦人科医の立場から、働く女性や管理職の男性に向けた企業研修を行っているほか、モデル経験があり、美と健康に関する知識も豊富。オフィシャルブログ(http://ameblo.jp/yoshiko-onishi/)。

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