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【賛否】黒島結菜「事実婚で出産」が話題に…「未婚の母」「選択的シングルマザー」に法的なメリットはあるのか

2024年に、事実婚で出産したことを発表した俳優の黒島結菜さん。SNSでは「未婚の母」に対する賛否がありますが、法的にはどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。弁護士が解説します。

黒島結菜さん(2019年12月、時事)
黒島結菜さん(2019年12月、時事)

 2024年1月、俳優の黒島結菜さんが、パートナー関係にある俳優の宮沢氷魚さんとの間に第1子を妊娠したことを発表。同年7月に出産を報告しました。2人は妊娠発表時、「お互いに入籍という形にはこだわっておらず、現時点では籍を入れる予定はありません」と事実婚を選んだことも公表しており、黒島さんがいわゆる「未婚の母」を選択したことに、SNSでは驚きの声が多数上がっていました。

 昨今は芸能界だけでなく、自らの意思で「未婚の母」「選択的シングルマザー」として、あえて未婚のまま子どもを産み育てる女性が増えています。一方で、「未婚の母」を選択することに対しては、SNSなどを中心に依然として賛否が分かれており、「なんで籍入れないんだろう」「デメリットしかなくない?」「子どものことを考えたら、そう簡単に未婚を選べるものじゃない」「親の自分勝手な判断に振り回されるのはいつも子どもだよ」「未婚だからこそのメリットもあると思うよ」「これからの時代は、家族の形もいろいろあっていいのでは」など、さまざまな意見が聞かれます。

 常に賛否ある「未婚の母」の選択について、佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士は「結婚しないまま出産すると、父子関係が不安定になる」と指摘します。法的に見た「未婚の母」のメリットとデメリットについて、詳しくご解説いただきました。

父親による「認知」がない限り…

 結婚していようがいまいが、出産することにより、母子関係は明らかです。しかし、「父親が誰であるか」は必ずしも明らかではありません。

 そこで、法は「婚姻中に妊娠した子は夫の子と推定する」、また、「婚姻前に懐胎した子であって、婚姻が成立した後に生まれたものも、同様とする」(民法772条1項)というルールを定めています。これにより、結婚後に妊娠・出産した場合、「夫が父親」と推定され、戸籍の父親欄には夫の氏名が記載されます。また、妊娠してから結婚する、いわゆる「授かり婚」の場合も同様に、「夫が父親」と推定されます。これらの場合に、父子関係を争うには「嫡出否認の訴え」を起こさなければならず(同775条)、この訴えは、原則、出生から3年以内に提起しなければなりません(同777条)。従って、結婚してから出産すると法的な父子関係は早期に安定します。

 これに対し、結婚しないまま出産した場合、戸籍の父親欄は空欄になり、父親による「認知」がない限り、法的な父親は不在となります。認知がなければ、父親には法的な扶養義務がないため、養育費の支払いを法律上の権利に基づいて請求することができず、子どもは父親の法定相続人にもなれません。父親が認知しない場合、裁判所の手続きにより、強制的に認知を求めなければなりませんが、父が死亡して3年経過すると認知の訴えを提起できなくなります(民法787条ただし書き)。このように、結婚しないまま出産すると父子関係が不安定になります。

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佐藤みのり(さとう・みのり)

弁護士

神奈川県出身。中学時代、友人の非行がきっかけで、少年事件に携わりたいとの思いから弁護士を志す。2012年3月、慶応義塾大学大学院法務研究科修了後、同年9月に司法試験に合格。2015年5月、佐藤みのり法律事務所開設。少年非行、いじめ、児童虐待に関する活動に参加し、いじめに関する第三者委員やいじめ防止授業の講師、日本弁護士連合会(日弁連)主催の小中高校生向け社会科見学講師を務めるなど、現代の子どもと触れ合いながら、子どもの問題に積極的に取り組む。弁護士活動の傍ら、ニュース番組の取材協力、執筆活動など幅広く活動。女子中高生の性の問題、学校現場で起こるさまざまな問題などにコメントしている。

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