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「妊娠中はルイボスティーなら安心」→実はウソ? 妊婦さんが知っておくべき“適量”の話【産婦人科医が解説】

ノンカフェインのため、愛飲する妊婦も多い「ルイボスティー」。しかし、いくらノンカフェインであっても「飲み過ぎ」にはリスクがあるようです。

「ルイボスティーならいくら飲んでも安心」ではなかった?
「ルイボスティーならいくら飲んでも安心」ではなかった?

 さまざまなことに制限がかかる妊娠期間。代表的な制限の一つとしてよく知られているのが「カフェインの摂取」です。妊娠期間中はカフェインの摂取を控える必要があるため、コーヒーなどのカフェイン量が多い飲み物を我慢する人も多くいます。一方、「ノンカフェイン」で安心して飲める上、美容や健康にもいいお茶として「ルイボスティー」を愛飲する妊婦さんも多いと思いますが、「ルイボスティーも飲み過ぎたら危ないって聞いたことある」「胎児に影響あるって聞いたけど本当なの…?」など、飲み過ぎの影響について不安や心配の声も聞かれます。

「妊娠中、ルイボスティーならいくら飲んでも安心」というわけではないのでしょうか。実際のところについて、神谷町WGレディースクリニック院長で産婦人科医の尾西芳子さんにお聞きしました。

「ポリフェノール」が豊富であるため…

Q.そもそも、なぜ妊娠中は「カフェインを控えるように」と言われるのでしょうか。

尾西さん「カフェインには『神経興奮作用』『血管収縮作用』などがあり、過剰摂取により不眠、頭痛、イライラ、緊張感などを引き起こします。イギリスの食品基準庁からは、妊婦がカフェインを取りすぎることにより、赤ちゃんが低体重となり、将来の健康リスクが高くなる可能性が指摘されています。

カフェインの含有量は緑茶、ココア、コーラなどの飲料はほぼ同程度、コーヒーはそれらの2倍程度、エナジードリンクはコーヒーのさらに2倍程度含まれているものもあるため、注意が必要です。世界保健機関(WHO)や各国の基準では、妊娠中のコーヒーはマグカップ2〜3倍程度(200〜300ミリグラム)を上限としています」

Q.一方、ノンカフェインのルイボスティーについて、「たとえルイボスティーであっても飲み過ぎは危険」というのは事実といえますか。

尾西さん「はい。ルイボスティーはカフェインを含まない『ノンカフェイン』ドリンクのため、妊娠中も飲みやすいのですが、ルイボスティーに注意が必要といわれる理由は、ポリフェノールを豊富に含むことにあります。

ポリフェノールは抗酸化作用が強く、さまざまな健康効果が期待されますが、妊娠後期に過剰に摂取すると、『動脈管』という赤ちゃんの大切な血管の一部が閉鎖してしまい、心不全を起こす危険性が指摘されています。実際にそうした赤ちゃんの報告も上がっています。

ただ、ポリフェノールは緑茶、大豆、ブルーベリー、トマトなどいろいろな食品に含まれているため、1日の上限を設定することは難しいです。ルイボスティーの場合は1日2杯程度であれば問題ないと考えられますが、『1日に摂取する水分をすべてルイボスティーにする』などは危険です。

100ミリリットル中に含まれるポリフェノールの比較では、コーヒーはルイボスティーの約2倍、緑茶や紅茶は同程度含まれています。同量で比較すると、ハイカカオチョコレートではルイボスティーの約25倍、プルーンは3倍、ブルーベリーは2倍含まれており、特にハイカカオチョコレートは注意が必要です」

Q.ルイボスティー以外の「ノンカフェイン」飲料で、「たとえノンカフェインであっても飲み過ぎには注意が必要」といえる飲み物はありますか。

尾西さん「ノンカフェインの飲み物で、よく妊婦さんが口にするハーブティーは注意が必要です。カモミールやレモングラスには子宮の収縮作用が、ぺパーミントは胃酸の逆流などの作用があるため、妊娠中は避けた方がよいでしょう。

また、ジャスミン茶はカフェインが入っていないと思われがちですが、実際はカフェインが入っているため、ノンカフェイン飲料ではありません」

Q.その他、妊娠中の水分補給に適している、産婦人科医としておすすめする飲み物は。

尾西さん「カフェインもポリフェノールも含有量が低いものとして、妊娠中に安心して飲めるのは麦茶です。ただし、妊娠中は食べ物もそうですが、安心といわれるものであっても『◯◯ばかり食べる・飲む』というのは、実は危険です。絶対にNGのモノでなければ適量を楽しみ、ストレスをためない妊娠生活を送ることも大切です。

ストレスをためると『◯◯ばっかり』という嗜好(しこう)に走り、栄養が偏りすぎたり、過剰摂取となってしまったりするため、注意が必要です。いろいろなものを満遍なく、適量をおいしくいただくようにしましょう」

(オトナンサー編集部)

【実際の写真】「すごい……!」 これが体外に出てきた「胎盤」の見た目です(閲覧注意)

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尾西芳子(おにし・よしこ)

産婦人科医(神谷町WGレディースクリニック院長)

2005年神戸大学国際文化学部卒業、山口大学医学部学士編入学。2009年山口大学医学部卒業。東京慈恵会医科大学附属病院研修医、日本赤十字社医療センター産婦人科、済生会中津病院産婦人科などを経て、現在は「どんな小さな不調でも相談に来てほしい」と、女性の全ての悩みに応えられるかかりつけ医として、都内の産婦人科クリニックに勤務。産科・婦人科医の立場から、働く女性や管理職の男性に向けた企業研修を行っているほか、モデル経験があり、美と健康に関する知識も豊富。日本産科婦人科学会会員、日本女性医学学会会員、日本産婦人科乳腺学会会員。オフィシャルブログ(http://ameblo.jp/yoshiko-onishi/)。

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