オトナンサー|オトナの教養エンタメバラエティー

妊娠中のレバー「食べるのは控えて」「気にせず食べて」→結局どっち? 食べてもいいのかダメなのか【産婦人科医に聞く】

食事に気を使う妊娠中、「食べるのを控えて」「気にせず食べて」と正反対の意見が聞かれる「レバー」。結局どちらが正解なのか、産婦人科医に聞いてみると……。

妊娠中に「レバー」食べてもいいの? ダメなの?
妊娠中に「レバー」食べてもいいの? ダメなの?

 妊娠中の女性にとって、食事は気を使うことの一つ。特に栄養素について「必要なもの」「取り過ぎたらダメなもの」などに頭を悩ませる妊婦さんも多いと思います。そんな迷いがちな食材の一つである「レバー(鶏・豚)」はビタミンAが豊富に含まれますが、妊娠中は過剰摂取を考慮して「食べることを控えるように」と勧められることもあれば、女性は不足傾向のため「気にせずに食べてほしい」と言われることもあるようです。

 これについては、「妊娠中は“食べたらダメ”だと思ってたけど、違うの…?」「一度でも食べ過ぎたらやっぱりダメなのかな」など、「結局、どっちなの?」と迷う声も少なくないようです。実際のところ、妊娠中のレバーは食べてもいいのか、ダメなのか、どちらなのでしょうか。神谷町WGレディースクリニック院長で産婦人科医の尾西芳子さんにお聞きしました。

ビタミンAは「不足しても取り過ぎてもダメ」

Q.妊娠中に「レバー(鶏・豚)」を「食べる」ことに、何らかの問題はあるのでしょうか。

尾西さん「妊娠中にレバーを食べること自体に問題があるかというと、正確な回答は『量』『頻度』『時期』によるといえます。

そもそも、なぜレバーを食べるといけないかというと、赤ちゃんの器官が出来上がっていく妊娠初期に、ビタミンAを過剰に摂取すると、器官の形成異常の可能性が高くなることが分かっているためです。つまり、妊娠初期は『量』と『頻度』に気を付ける必要があります」

Q.妊娠中にレバーを「食べ過ぎる」ことについて、どんな懸念点があるのですか。

尾西さん「厚生労働省によると、妊娠を計画中、または妊娠3カ月以内のビタミンAの上限は『一日3000マイクログラム』とされています。

豚レバーは100グラムあたり1万3000マイクログラム 1回量(80グラム)では1万400マイクログラムです。鶏レバーは100グラムあたり1万4000マイクログラムなので、焼き鳥1本(30グラム)だと約4200マイクログラムとなります。

毎日レバーを食べる人はいないと思いますので、週1回程度であれば食べても問題ない量といえるでしょう。ちなみに、同様にビタミンAが多いとされるウナギでは、1切れ(1/2本)で1500マイクログラムなので、過剰に食べ過ぎなければあまり心配する必要はなさそうですね。

一方で妊娠中、特に不足する鉄分も、レバーには豊富に含まれています。妊娠中期・後期の1日の鉄分必要量は16ミリグラムですが、豚レバーであれば1本(30グラム)で3.9ミリグラム、鶏レバーであれば1本で2.7ミリグラムの鉄分が摂取できます。

ビタミンAは『取り過ぎ注意』、鉄分は『不足に注意』なので、両方のバランスが必要です」

Q.一方で、妊娠中に「ビタミンA」「鉄分」が不足すると、どうなることが考えられますか。

尾西さん「ビタミンAは目や粘膜、皮膚などの健康維持や免疫機能のサポートに深く関わっている栄養素です。不足すると細胞分裂に影響を及ぼし、赤ちゃんの臓器や骨、免疫などの発達に影響を及ぼす可能性があります。

また、妊娠中は貧血になりがちです。妊娠中に貧血になると動悸(どうき)や息切れ、倦怠(けんたい)感といったお母さん側の症状の他に、赤ちゃんの成長不良や早産といった問題も引き起こします。その原因は、先述した鉄分不足です。鉄分には吸収されやすい『ヘム鉄』と吸収されにくい『非ヘム鉄』があり、レバーや赤身の肉、魚に含まれるヘム鉄は重要な鉄分の補給源になります」

Q.妊娠中にレバーを食べることについて「ほんの少しも食べてはいけない」と思い込んでいる人も少なくないようです。

尾西さん「『妊娠中にレバーやウナギを食べてはいけない』と思って我慢している人に知っていただきたいのが、『注意が必要なのは妊娠初期(3カ月以内)』ということです。それ以降であればむしろ貧血の方が問題となりやすいので、食べ過ぎには注意ですが、週1〜2回のレバーはおすすめです。

レバーに限らず、妊娠中は『◯◯だけ食べる』『□□は食べない』とするのではなく、バランスよくいろいろな食品を取ることが必要です。レバーを食べるときは、しっかり中心まで火を通してから食べてくださいね」

(オトナンサー編集部)

【実際の写真】「すごい……!」 これが体外に出てきた「胎盤」の見た目です(閲覧注意)

画像ギャラリー

尾西芳子(おにし・よしこ)

産婦人科医(神谷町WGレディースクリニック院長)

2005年神戸大学国際文化学部卒業、山口大学医学部学士編入学。2009年山口大学医学部卒業。東京慈恵会医科大学附属病院研修医、日本赤十字社医療センター産婦人科、済生会中津病院産婦人科などを経て、現在は「どんな小さな不調でも相談に来てほしい」と、女性の全ての悩みに応えられるかかりつけ医として、都内の産婦人科クリニックに勤務。産科・婦人科医の立場から、働く女性や管理職の男性に向けた企業研修を行っているほか、モデル経験があり、美と健康に関する知識も豊富。日本産科婦人科学会会員、日本女性医学学会会員、日本産婦人科乳腺学会会員。オフィシャルブログ(http://ameblo.jp/yoshiko-onishi/)。

コメント