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子どもがいない夫婦「DINKs」は本当に「ずるい」のか? 向けられる嫉妬に40代、50代の当事者たちが明かした“本音と経験”

子どもを持たない夫婦を指す「DINKs」。ネット上では「ずるい」など嫉妬を向ける声も少なからず聞かれます。当事者の声に耳を傾けると、そこにはリアルな本音と経験がありました。

本当に「DINKs=ずるい」のか…?(画像はイメージ)
本当に「DINKs=ずるい」のか…?(画像はイメージ)

 子どもを持たない共働き夫婦のことを指す「DINKs(ディンクス)」という言葉。近年、徐々に浸透してきた言葉ですが、その意味が知られていくにつれ、SNSなどを中心に「DINKsはずるい」「うらやましい」といった“嫉妬”の感情による意見もみられるようになっています。

 DINKsは本当に「ずるい」存在なのか――。「恋人・夫婦仲相談所」所長の三松真由美さんは「実態を想像したり、知ったりすることで、『ずるい』という言葉は少なくなると信じている」と話します。嫉妬を向けられる当事者たちが明かした思い、苦悩から、DINKsのリアルを見つめます。

DINKsのほとんどは妊活を経験

 Googleの検索窓に「DINKs」と入れると、「ずるい」や「うらやましい」といった検索候補のキーワードが出てくることがあります。なぜDINKsに対して、そんなねたみの気持ちを持ってしまうのでしょうか。

「DINKs」の定義について改めてお伝えします。DINKsは「Double Income(共働き)No Kids(子どもを持たない)」の頭文字を取った言葉で、意味の通り、「子どもを持たない共働き夫婦」のことを指します。はたから見れば、「子どもがいないので、稼いだお金は全て自分たちで使える。裕福で時間的な制約もなく、自由でうらやましい」となるのでしょうか。

 日本の夫婦共働きの世帯中、子どもがいないDINKsの割合は、2015年の総務省統計局の調査を基に割り出すと約3割です。3分の1近くがDINKsとなるわけですが、当然ながら一組ずつ状況や実態は異なります。

 私の知る40代、50代のDINKsご夫婦のほとんどは、妊活を経験しています。つまり、「子どもを持たない」と主体的に決めてDINKsになったわけではなく、「子どもは欲しかったが、残念ながら授からなかった」というケースがあることを想像すると、「ずるい」という言葉は少なくなると信じます。

 男女雇用機会均等法が1985年に制定され、今50代の女性たちは、女性が思い切り仕事をすることができるようになった時代の先駆けです。仕事にまい進し、気が付けば30代後半。子どもをつくろうとしたら生理不順で妊娠しづらい体になっていた……という声をたくさん聞きます。妊活という言葉も一般的ではなかった時代で、不妊治療のために会社を休んで病院に通うのもはばかられるような状況でした。

 つらい思いや経験の上に子どもを諦めて、DINKsとして自分の人生を豊かなものにしようと努力している、そんなご夫婦もたくさんおられます。

 佳子さん(56才、仮名)は、「夫は小さい子どもが苦手で、私も特に好きではないのでつくりませんでした。友人の子どもたちが大学生や社会人になっていて、彼らと会ったり話したりすると今になって、『ああ、こんな息子がいたらいいな』って思っちゃうこともあるんです。後悔とも違うけど、自分がもう絶対に持つことのできないわが子への憧れっていうか。次に生まれ変わったら子どもを産みたいですね」と。

 果歩さん(42才、同)は言います。

「34歳で結婚して、すぐに子どもが欲しかったんですが、できなくて。妊活を続けていました。どんどんハードな妊活レベルになって、心も体もしんどくなって40歳で諦めることにしました。お金もかかりますし。

夫は子どもが大好きで、友人の子どもが来るとすごくうれしそうに一緒に遊ぶんです。そんな姿を見ていると申し訳ない気持ちになっていました。今は随分、割り切れるようになったけど。もうこの先、2人だけなんだからたくさん楽しもうって思っています。自分の人生を後悔一色で塗りつぶしたくないですから」

 久美さん(57才、同)は「大手企業に就職して、第一線で働き続けることを目標に、がむしゃらに頑張りました。ずっとひどい生理痛があったんですが、36歳のときに、子宮筋腫がひどくなって切除しなきゃいけなくなったんです。ショックでした。もう子どもは持てないんだって。どん底でしたね。仕事を頑張った自分のことを認められない時期があって、それがすごくつらかったです。自分の人生を否定することですから。

今は、夫と2人で、日々の暮らしを楽しんでいます。でも、こうなるには本当に時間がかかりました。話し合いを何度もして。離婚しようって言ったこともありました。そこは思い出したくないかな」

 DINKsというくくりでレッテルを貼り、一方的にうらやましがったり、ねたんだりすることには何の意味もありません。隣の芝生は青く見えるもので、100%幸せな人生なんてあり得ないのではないでしょうか。DINKsで「夫が浮気に走る」「妻が借金を背負う」といった相談もレアではありません。

 DINKsご夫婦への嫉妬やねたみの気持ちが生まれたとき、なぜ自分がそう思うのか、自分自身に問いかけてみてください。子どもがいる夫婦と、子どもがいない夫婦の価値観は、天と地ほどの違いがあると思います。

(「恋人・夫婦仲相談所」所長 三松真由美)

三松真由美(みまつ・まゆみ)

恋人・夫婦仲相談所 所長(すずね所長)・執筆家

夫婦仲・恋仲に悩む女性会員1万3000名を集め、「結婚・再婚」を真剣に考えるコミュニティーを展開。セックスレス・ED・女性の性機能に詳しく、性を通して男女関係をよくするメソッドを考案。20代若者サークルも運営し、未婚世代への結婚アドバイスも好評を呼ぶ。恋愛・夫婦仲コメンテーターとしても活躍中。また、フェムテックの分野で女性を支援する企業「Glad」を創業し、新しいサービスを手掛けている。著書は「夫婦の『幸せ循環』を呼ぶ秘訣」(講談社)「モンスターワイフ」(同)「40歳からの女性ホルモンを操る53の習慣」(扶桑社)「堂々再婚」(wave出版)など多数。コミック「『君とはもうできない』と言われまして」(KADOKAWA)の監修も手掛ける。恋人・夫婦仲相談所(http://fufunaka.com/)、公式note(https://note.com/suzune_16)、Glad(https://www.glad.tech)。LINE登録で「夫婦仲チェックシート」を無料プレゼント(https://fufunaka.com/archives/lp/line)。

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