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妊娠中に「虫歯ができた」→放置は危険! 産婦人科医が「早めの治療」を促す恐ろしい理由

「妊娠すると虫歯ができやすくなる」と聞いたことはありませんか? 実は、妊娠と虫歯の関係にはさまざまな“要注意ポイント”があるようです。産婦人科医が解説します。

妊娠中の虫歯、軽く見ていると危険?
妊娠中の虫歯、軽く見ていると危険?

 妊娠・出産経験のある女性の中には「妊娠中に虫歯ができた!」といった経験がある人も多いのではないでしょうか。中には「妊娠すると虫歯ができやすくなる」と聞いたことがある人もいると思いますが、実際、妊娠と虫歯の関係について「虫歯が胎児に影響する?」「妊娠前から虫歯があるとやっぱりよくないのかな…」「虫歯治療に行くタイミングが分からない」など、疑問の声も多く聞かれます。

 実は“軽く見ていると危険”な「妊娠と虫歯」の関係について、神谷町WGレディースクリニック院長で産婦人科医の尾西芳子さんに教えていただきました。

「妊娠前から虫歯がある」場合も要注意

Q.「妊娠すると虫歯ができやすくなる」というのは事実ですか。

尾西さん「事実です。理由はいくつかあるのですが、主に次の4つが考えられます」

(1)妊娠中は女性ホルモンが増加することで歯周病菌が増えやすくなります。また、『食べ物のカスを洗い流す』『虫歯菌と戦う』『口の中の酸性環境を中性にする』『歯の再石灰化を助ける』いった虫歯を予防する働きを持つ唾液が減少することで、虫歯になりやすくなります。

(2)つわりによる嘔吐(おうと)により、口の中が酸性に傾きます。酸性に傾くと歯が溶けて、虫歯になりやすくなってしまいます。

(3)間食が多くなったり、つわりによって一度に食事が取れずちょこちょこ食べたりすることで、食事中の糖分が虫歯菌によって「酸」になり、口の中が常に酸性に傾いてしまうと、虫歯になりやすくなります。

(4)つわりのため、歯磨きがしっかりとできないことがあると、虫歯になりやすくなります。

Q.「虫歯」が妊娠中の女性に及ぼし得る影響とは、どのようなものですか。

尾西さん「虫歯になると、妊婦さんの体内では虫歯菌と戦うために炎症が起きます。この炎症が起きると『プロスタグランジン』という物質が体の中で増えるのですが、これが流産や早産を引き起こしてしまいます。また虫歯だけではなく、歯周病でも同じようなことが起きることが分かっています。これは妊娠前から虫歯がある場合も同じです。

また、おなかの中の赤ちゃん自身へは、虫歯菌が直接悪さをするということはありませんが、出産後、乳歯が生え始めてから大人が口移しで食事を与えることなどにより、虫歯菌が赤ちゃんへうつってしまいます。そのため、大人がしっかり虫歯を治しておくこと、口移しをなるべくしないことが大切です」

Q.「虫歯がある状態で妊娠した場合」また「妊娠後に新しく虫歯ができた場合」、やはり出産までの間に治療を完了すべきでしょうか。

尾西さん「はい、なるべく早く虫歯を治療した方がよいでしょう。治療の時期は『なるべく早めに』がおすすめですが、進行していて抜歯が必要な場合は処置が大がかりになるため、可能であれば妊娠初期、妊娠後期を避けて、14週〜27週くらいの間に治療を受けることをおすすめします。妊娠初期はそもそもの流産リスクが高いことやつわりがあるため、妊娠後期はおなかが大きくなっており、あおむけで気分が悪くなりやすいためです。

基本的には、歯科で行うエックス線検査や治療は、赤ちゃんへの影響はありません。抗生剤や痛み止めなどが出される場合もあるので、妊娠中であることはしっかりと歯科医師にお伝えしましょう。

なお、先述の通り、産後は虫歯が赤ちゃんへの影響を直接及ぼすため、出産までにはしっかりと治療しておきましょう」

Q.その他、妊娠と虫歯に関する注意点、アドバイスはありますか。

尾西さん「妊娠すると、自分の体調と赤ちゃんのことで、意外と『口』のことまで気が回らないかもしれません。しかし、歯周病や虫歯が原因で流産、早産をしてしまうのはとても残念なこと。そうした危険性があるという認識を持っていただき、できれば妊娠前に『お口のチェック』をしておきましょう。

妊娠前にできなかった場合は、産婦人科とは別に、初期のうちに歯科も受診しておきましょう。自治体によっては無料で『お口の健診』が受けられるところもあるので、お住まいの区役所・市役所に確認してみましょう」

(オトナンサー編集部)

【実際の写真】「すごい…!」 これが体外に出てきた「胎盤」の実物です(閲覧注意)

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尾西芳子(おにし・よしこ)

産婦人科医(神谷町WGレディースクリニック院長)

2005年神戸大学国際文化学部卒業、山口大学医学部学士編入学。2009年山口大学医学部卒業。東京慈恵会医科大学附属病院研修医、日本赤十字社医療センター産婦人科、済生会中津病院産婦人科などを経て、現在は「どんな小さな不調でも相談に来てほしい」と、女性の全ての悩みに応えられるかかりつけ医として、都内の産婦人科クリニックに勤務。産科・婦人科医の立場から、働く女性や管理職の男性に向けた企業研修を行っているほか、モデル経験があり、美と健康に関する知識も豊富。日本産科婦人科学会会員、日本女性医学学会会員、日本産婦人科乳腺学会会員。オフィシャルブログ(http://ameblo.jp/yoshiko-onishi/)。

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