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感染しないはずでは…コロナ第5波で子どもの感染急増、実情や防止策は?

新型コロナウイルスの感染が急拡大する中、子どもたちの感染も増えています。2学期が始まってから、どのような点に注意すべきか、医療ジャーナリストに聞きました。

コロナ禍の夏休み明け、注意点は?
コロナ禍の夏休み明け、注意点は?

 新型コロナウイルスの感染が急拡大する中、かつては「あまり感染しない」「重症化の可能性も低い」とされていた、子どもたちの感染が増えています。夏休みも終わりの時期となり、2学期が始まると、さらに拡大する恐れがありそうです。子どもの感染増加の実情や感染防止策について、医療ジャーナリストの森まどかさんに聞きました。

感染力強い「デルタ株」影響か

Q.子どもたちの感染が増えているのは事実でしょうか。

森さん「“第5波”といわれる現在の流行では、10代と10歳未満での新規陽性者の数、割合がともに増えています。東京都の、これまで感染が拡大した時期のデータを比較すると、現在の流行では10代以下の増加傾向が明らかです。第1波のピークであった昨年4月、東京都で感染が確認された10代は1カ月で55人、平均すると1.8人/日でした。8月の第2波では9.9人/日、流行の波が大きかった今年1月の第3波でも70.5人/日、5月の第4波では47.5人/日でした。

しかし、直近1カ月(7月21日から8月20日)では、10代の感染者の合計が9969人で、1日あたり321.6人になります。これは第3波の約4.6倍であり、全感染者における10代の割合も、8月10日から8月16日の報告では9.3%と、60代以上の5.9%より高くなっています。

同じように10歳未満の数を比較すると、昨年4月の1カ月は1日あたり1.8人、昨年8月は5.3人/日、今年1月は36.1人/日、5月は26.2人/日でしたが、直近1カ月では5085人の感染が確認され、1日あたり164.0人、第3波の約4.5倍となります。10歳未満の感染者の割合も直近で5.0%、60代(3.2%)より高い割合です。

このような10代以下の感染者の増加は東京都だけでなく、全国的に見られる傾向です。一方、10代以下の重症化はゼロではありませんが、まれです。東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議では、6月に10代の重症者が1人報告され、7月に基礎疾患のない10代未満で初めて重症者が報告され、8月に入り、10代の重症者が2人報告されました。

7月に入ってからは20代、30代の若年層でも重症者が複数、継続的に報告され、高齢者に限らず、全世代で重症化リスクがあることに注意が呼び掛けられています。しかし、10代以下は感染者が急増しているものの、重症化の割合については現在のところ、これまでと大きな変化はないと言えます」

Q.「子どもは感染しにくい」と言われてきましたが、何が起きているのでしょうか。

森さん「現在の感染の主体となっている『デルタ株(L452R変異を持つ変異ウイルス)』の影響が考えられます。東京都では約9割がデルタ株に置き換わったと考えられていますし、全国的にデルタ株への置き換わりが急速に進んでいると指摘されています。デルタ株は感染力が強いことが分かっていて、最初に流行した新型コロナウイルス(従来株)の2倍程度、デルタ株の前に流行していた『アルファ株(N501Y変異を持つ変異ウイルス)』の1.5倍程度の感染力があると考えられています。

アメリカ疾病対策センター(CDC)の報告では、従来株は1人の感染者から平均1.4〜3.5人くらいに感染させますが、デルタ株は1人から平均5〜9人に感染させる強さを持つことが示され、これは空気感染する水ぼうそうと同程度と考えられます。そのような感染力の強いデルタ株の感染は、同居する家族から子どもに感染するだけではなく、子どものコミュニティーで『子どもから子どもへも広がっている』と考えられています。

感染が拡大している地域では、厳密な感染対策が難しい保育園や幼稚園、あるいは部活動や学校行事、塾、習い事などさまざまな場面において、速いスピードで広がるケースが見受けられ、クラスターも複数発生しています。さらに、子どもから親へ感染させるケースが増えた点も、これまでの流行と異なる特徴と考えられています。

先述したように、重症化についてはまれであり、日本では現在、デルタ株の流行によって、子どもの重症者が増加しているという報告はありません。しかし、日本より流行規模が大きい海外の国では、子どもの重症化が増加しているという報告もあります。感染者が増加すれば、子どもの重症患者も当然増えると考えられるため、これ以上の感染拡大を防ぐことが非常に重要です」

Q.発熱した際など、子どもの場合はつい、風邪だと信じ込んでしまうケースもありそうです。新型コロナを疑うべきケースなどを教えてください。

森さん「これまで、『子どもは無症状の感染が多い』と報告されてきましたが、現在は、発熱をきっかけに新型コロナの診断に至るケースも多いようです。発熱以外の新型コロナの症状としては、せき、鼻水、下痢、おう吐、頭痛などが挙げられます。そのどれもが、コロナ以外でも子どもが起こしやすい症状であるため、親が判断することは難しいと思います。

先述の通り、親の濃厚接触者となった子どもが感染するだけでなく、子どもから感染が始まることもあるため、発熱などの症状がある場合は親が自己判断せず、かかりつけの小児科に、まずは電話で相談することをおすすめします」

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森まどか(もり・まどか)

医療ジャーナリスト、キャスター

幼少の頃より、医院を開業する父や祖父を通して「地域に暮らす人たちのための医療」を身近に感じながら育つ。医療職には進まず、学習院大学法学部政治学科を卒業。2000年より、医療・健康・介護を専門とする放送局のキャスターとして、現場取材、医師、コメディカル、厚生労働省担当官との対談など数多くの医療番組に出演。医療コンテンツの企画・プロデュース、シンポジウムのコーディネーターなど幅広く活動している。自身が症例数の少ない病気で手術、長期入院をした経験から、「患者の視点」を大切に医師と患者の懸け橋となるような医療情報の発信を目指している。日本医学ジャーナリスト協会正会員、ピンクリボンアドバイザー。

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