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不公平感も…経営難の飲食店も休業・時短要請に従うべき? 柔軟に判断OK?

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う休業要請や時短要請の影響で、多くの飲食店が苦しい経営を強いられています。経営が苦しくても、引き続き、休業要請や時短要請に応じるべきなのでしょうか。

時短要請に応じるべきか…
時短要請に応じるべきか…

 緊急事態宣言が6月20日に解除され、まん延防止等重点措置に移行した東京都では、「提供時間は午前11時から午後7時まで(一部町村を除く)」「滞在時間は1時間半以内」「利用人数は1グループ2人まで」を条件に飲食店での酒類の提供を解禁しました。ところがこれらの条件では、仕事帰りの会社員の入店を促すことは難しいといえます。また、感染者が増加した場合、国は再度、提供停止を求める可能性も示唆しており、飲食店にとって厳しい状況が続きます。

 店の経営難などを理由に、宣言解除前からすでに酒類を提供していた飲食店もあり、国や自治体の要請をしっかり守ってきた飲食店の中には、不公平に感じてきたところもあるのではないでしょうか。たとえ経営が苦しくても、飲食店は今後も休業要請や時短要請にしっかり従うべきなのでしょうか。それとも、感染対策を徹底した上で、午後7時以降も酒類を提供するなど、店の判断で柔軟に対処してもよいのでしょうか。飲食店コンサルタントの成田良爾さんに聞きました。

最終的には経営者判断

Q.3度目の緊急事態宣言が発令された4月下旬以降、休業要請や時短要請に関して、飲食店からどのような相談が寄せられていますか。

成田さん「一番多いのは、国や自治体の休業要請や時短要請に応じた飲食店に対して給付される『協力金』に関する相談です。例えば、協力金の支給対象の条件が以前より複雑になったことへの問い合わせや、『協力金の金額の不十分さや振り込みの遅延で店舗の存続が困難』といった相談が多いです」

Q.休業要請や時短要請が出されていても、店を存続させるために重要なことは。

成田さん「まずは感染対策をしっかりした上で、お客さまをお迎えすることです。お客さまが『この店は感染対策がしっかりしているから安心だ』と感じることで、時短営業の期間中や通常営業に戻したときに、再度来店してもらえる可能性が高まります。店を存続させるための具体的な取り組みは店の業態やタイプによってそれぞれ異なるので、専門家に相談するとよいでしょう」

Q.緊急事態宣言の解除前から、酒類の提供を解禁した飲食店もあり、不公平に感じてきた店もあると思います。経営が苦しくても「酒類の提供は午前11時から午後7時まで」「営業時間は午前5時から午後8時まで」といった時短要請にはしっかり従うべきなのでしょうか。それとも、感染対策を徹底した上で、午後7時以降も酒類を提供するなど、店が柔軟に判断して対応してもよいのでしょうか。

成田さん「高齢者を中心に新型コロナワクチンの接種が進んでいるとはいえ、国内での変異型コロナウイルスの罹患(りかん)報告もあり、まだまだ予断を許さない状況の中で、多くの飲食店がスタッフの雇用維持、そして、自身の生活を守るために必死で店舗を運営しています。確かに、国や自治体の要請に協力することは重要ですが、補償制度は今のところ、全ての飲食店業態に万全とはいえない状況なので、時短要請にどこまで応じるのかは最終的には経営者の判断になるでしょう。

そうした意味で非常に難しい問題ですが、飲食店の苦しい事情を理解しているお客さまもいるので、店内での感染防止対策を徹底すれば、要請を守らず通常営業に戻しても、店の評判が大きく下がることはないと思います」

Q.飲食店の中には、緊急事態宣言中に酒類の代わりにノンアルコール飲料を提供した店もありますが、ノンアルコール飲料のみの提供でも利益は出るのでしょうか。それとも、酒類も提供しないと利益が出ないのでしょうか。

成田さん「大衆食堂や牛丼店など、もともと、アルコール飲料の売り上げの割合がそれほど高くない飲食店では、ノンアルコール飲料のみの提供でも利益は出るでしょう。一般的に、こうした店のアルコール飲料の売り上げは全体の売り上げの10%以下にとどまるケースが多いです。

しかし、ディナーレストラン(フランス料理など専門的な料理を提供する飲食店)や居酒屋などは、アルコール飲料を提供する前提で損益分岐点を設定しているので、ノンアルコール飲料のみの提供では利益が出にくいでしょう。全体の売り上げのうち、アルコール飲料の売り上げが50%以上を占める店もあるからです」

Q.東京五輪が予定通り開催された場合、飲食店にとって、売り上げを伸ばすチャンスになるのでしょうか。

成田さん「東京五輪開催中に、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が発令された場合は分かりません。しかし、これまでも、サッカーワールドカップなどの一大スポーツイベントでは、多くの飲食店が売り上げを伸ばしてきました。多くの人は選手とともに気持ちが高まり、財布のヒモも緩む傾向があるので、売り上げを伸ばすチャンスではあります。ただし、五輪開催中は多くの人が来店することも予想されるので、先述のように感染防止対策の徹底が求められます」

Q.休業要請や時短要請を破って営業した場合の影響やリスクについて教えてください。

成田さん「改正特措法で、緊急事態宣言が出されていない状況であっても感染防止対策を講じるために、まん延防止等重点措置が新設されました。緊急事態宣言は休業や時短の要請、命令が可能ですが、まん延防止等重点措置は時短のみの要請、命令が可能です。

『正当な理由』がなく、要請に応じない場合は『命令』が通知され、それでも従わない場合は、緊急事態宣言中は30万円以下、まん延防止等重点措置中は20万円以下の過料が科せられます。この『正当な理由』には経営状況は入っておらず、ほとんどの飲食店が休業要請や時短要請を破って営業すれば、過料の対象となるでしょう(東京都は7月6日、1~3月の緊急事態宣言下で改正特別措置法45条に基づく営業時間短縮命令に応じなかった飲食店の4事業者に対して、裁判所がそれぞれに過料25万円を決定したと発表)。

しかし、既存の補償制度は十分ではなく、通常営業しなければ雇用維持や店舗維持が不可能な飲食店もあります。先述したように、このような事情は飲食店を利用するお客さまもよく知っているので、協力金の不正受給などをしなければ、休業要請中や時短要請中に、実際に通常営業を始めても大きく評判を落とすことはないでしょう。

国や自治体は飲食店を売り上げや人数だけで分けるのではなく、業態や、売り上げに占めるアルコールの比率なども参考にして、全ての飲食店が安心して要請に応えることができる補償体制を構築してもらいたいものです」

(オトナンサー編集部)

成田良爾(なりた・りょうじ)

飲食店経営コンサルタント

ヴィガーコーポレーション代表取締役。厚生労働省公認レストランサービス技能士(国家資格)、文部科学省後援サービス接遇検定準1級、食生活アドバイザー2級、他。飲食業界25年以上。ミシュランガイド掲載の高級レストランから個人経営の小さな大衆店まで幅広いジャンルの飲食店に携わり、その経験に基づく統計解析および枠にとらわれないアイデアで多くの赤字店を黒字化させてきた実績を持つ。「100年続く店づくり」をモットーに、次世代育成や飲食業の働き方改革などにも力を入れており、食文化普及の他、職業訓練校講師(フードビジネス科)や子育て女性就職支援事業講師なども歴任。現在も多くの飲食店経営者のサポートを手掛ける。飲食店専門のコンサルティング「オフィスヴィガー」HP(http://with-vigor.com/)。

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