オトナンサー|オトナの教養エンタメバラエティー

筋肉量が減ると「熱中症」リスクが高まる、本当? コロナ禍での対策は?

コロナ禍で運動不足気味の人も多いと思いますが、筋肉量が減ることで「熱中症」の危険性が高まるそうです。なぜでしょうか。

筋肉と熱中症の関係は?
筋肉と熱中症の関係は?

 東京都に4度目の緊急事態宣言が出ることが決まりましたが、コロナ禍で2度目の夏を迎えることになり、猛暑の中のマスク生活で「熱中症」も心配になります。ただ、コロナ禍ならではの熱中症の危険要素はマスクだけではないようです。外出自粛や在宅勤務による運動不足などで、筋肉量が減ることも、熱中症の危険性を高めるとの情報があります。なぜ、筋肉と熱中症が関係するのでしょうか。内科医の市原由美江さんに聞きました。

筋肉中の水分量は多い

Q.まず、熱中症の原因と主な症状について、改めて教えてください。

市原さん「熱中症は暑い環境下にいることで熱が体の中にこもり、さらに脱水によって、汗による熱の放散が十分できないために起こります。熱中症の症状は軽いものから重度のものまでさまざまです。軽症であれば、目まいや立ちくらみ、大量の発汗、こむら返り、筋肉痛などが起きます。中等症の場合は頭痛、吐き気、倦怠(けんたい)感などの症状もみられ、重症になると、意識障害やけいれん、40度以上の発熱などの症状があります」

Q.「筋肉量が減っていると熱中症の危険性が高まる」といわれます。筋肉と熱中症の関係を教えてください。

市原さん「脱水状態になると、まず、血管内の血液量が減少し、それを補うために細胞から水分が血管内に移動します。成人では水分が体重の約60%を占めていますが、筋肉の中の水分量は75%と特に高いのです。従って、筋肉量が少ないと水分の貯蓄が少なくなり、脱水が進行しやすくなるといえます。自粛生活や在宅勤務の影響で運動量が減ってしまっている人は、筋肉の量が減っている可能性があります。そうすると、体内の水分の貯蓄も減っていて、熱中症のリスクが上昇していることが考えられるでしょう」

Q.筋肉量の減少による熱中症リスクを低くするためには、どうすればよいでしょうか。

市原さん「自粛生活などの影響で運動量が減っている人が多いと思います。自宅でもできる運動もあります。有酸素運動や筋肉トレーニングを定期的にして、筋肉量を維持しましょう。既に筋肉量が減少している人は本格的な夏に向けて、無理のない範囲で筋肉量を増やすことを意識しましょう。筋肉量の回復や維持によって、体内の水分量も保たれ、熱中症のリスクを低くすることができます」

Q.マスクによる熱中症のリスク上昇についても、理由を教えてください。

市原さん「マスクを着けていると口内の湿度が保たれるため、喉の渇きに気付きにくくなります。また、水分摂取の際にマスクを外す必要があるため、水分摂取のタイミングが減ることもあります。それらの理由から、脱水状態に陥りやすくなるので注意が必要です。また、マスクによって体感温度が上がり、体への負担が増えることも熱中症の一因となります」

Q.マスク生活による熱中症を避けるために気を付けるべき点は。

市原さん「マスクをしていると喉の渇きに気付きにくかったり、水分摂取が面倒になったりすることがありますが、意識して、小まめな水分摂取を心掛けましょう。暑い環境下に長時間いることは避け、少しでも体の異変を感じたら、早めに涼しい場所に移動し、水分を摂取して休みましょう」

Q.筋肉量、マスクのほかに、コロナ禍での熱中症について注意すべきことを教えてください。

市原さん「新型コロナウイルスの感染防止のためには換気が大切ですが、暑い日に換気をしていると、エアコンの効果が弱まってしまうことも考えられます。換気をしつつ、室内の温度は一定に保てるよう、エアコンの設定や空気の流れなどを工夫することが大切です。また、屋内で過ごす時間が長く、暑さに体が慣れていない人も多いと思います。例年、梅雨明けに熱中症が急増するのは体がまだ、夏の暑さに慣れていないためです。今年は特に懸念されます。

『暑熱順化』といって、暑さにさらされると皮膚の血管が広がりやすくなり、効率よく汗をかけるようになるので、今年は例年以上に、適度な運動や入浴で汗をかく習慣をつけましょう。体温を適切に調整できるようになり、熱中症の予防につながります」

(オトナンサー編集部)

市原由美江(いちはら・ゆみえ)

医師(内科・糖尿病専門医)

eatLIFEクリニック院長。自身が11歳の時に1型糖尿病(年間10万人に約2人が発症)を発症したことをきっかけに糖尿病専門医に。病気のことを周囲に理解してもらえず苦しんだ子ども時代の経験から、1型糖尿病の正しい理解の普及・啓発のために患者会や企業での講演活動を行っている。また、医師と患者両方の立場から患者の気持ちに寄り添い、「病気を個性として前向きに付き合ってほしい」との思いで日々診療している。糖尿病専門医として、患者としての経験から、ダイエットや食事療法、糖質管理などの食に関する知識が豊富。1児の母として子育てをしながら仕事や家事をパワフルにこなしている。オフィシャルブログ(https://ameblo.jp/yumie6822/)。eatLIFEクリニック(https://eatlife-cl.com/)。

コメント