新型コロナが5類移行 何が変わった? 風邪症状が出たらどう対処する? 専門家に聞く
新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが、5月8日に新型インフルエンザ等感染症から5類感染症へと移行しましたが、それにより何が変わったのでしょうか。専門家に聞きました。
新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが、5月8日に「新型インフルエンザ等感染症」から「5類感染症」へと移行し、季節性インフルエンザと同等の扱いになりました。ただ、移行によって具体的に何が変わったのか、よく分からないと感じている人は多いのではないでしょうか。
新型コロナウイルスが5類感染症に位置付けられたことで、何が変わったのでしょうか。新型コロナウイルスは、症状によっては一般的な風邪と見分けがつかないケースもありますが、今後はどのように対処したらよいのでしょうか。医療ジャーナリストの森まどかさんに聞きました。
医療費の負担が発生
Q.そもそも感染症は、どのように分類されているのでしょうか。
森さん「『感染症の予防および感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)』では、感染症を8つのグループに分けています。まず、感染力やかかった場合の重篤度を総合的に勘案して1類から3類に分類し、極めて危険な感染症を『1類感染症』、危険な感染症を『2類感染症』、危険度はそれほど高くない消化器系感染症を『3類感染症』としています。
1類から3類には入らない感染症のうち、動物や昆虫からヒトにうつる感染症を『4類感染症』、その他の感染症を『5類感染症』とし、さまざまな感染症が5類のリストに上がっています。4類、5類は危険度で分類されているわけではありません。
1類から5類の他に、さらに3つのグループがあります。未知の微生物や新種の微生物によって起こる感染症は、それらが登場してからしばらくは『新感染症』『指定感染症』に臨時的に分類されます。また、インフルエンザとコロナウイルス感染症のうち、危険だろうと判断されたものは『新型インフルエンザ等感染症』に臨時的に分類されます。
新感染症、指定感染症、新型インフルエンザ等感染症は、危険度がはっきりした段階で1類から5類のいずれかに分類されます。
こうした分類によって、自治体による発生動向の調査方法や医療提供体制、医療費負担のほか、かかった場合の行動制限や濃厚接触者の扱いなどが決まります」
Q.では、新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが「新型インフルエンザ等感染症」から「5類感染症」に移行したことで、主にどのような点が変わったのでしょうか。
森さん「そもそも、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)は、2020年2月1日に指定感染症となった後、2021年2月13日からは新型インフルエンザ等感染症のグループに分類され、必要な対応が取られていました。2023年5月8日に5類感染症に移行され、季節性インフルエンザと同じ扱いになり、公衆衛生上、2つの大きな変化がありました。
1つは、流行を把握する方法の変化です。これまでは届け出などから患者数や死亡者数を毎日把握し、公表する『全数把握』を行う必要がありましたが、5類移行後は、厚生労働省が指定した約5000カ所の医療機関が1週間分の患者数を報告し、公表する『定点把握』に変わりました。定点把握の結果は、毎週金曜に公表される予定です。
もう1つの変化は、『緊急事態宣言』や『まん延防止等重点措置』が発出できなくなることです。これらの強力な流行抑制策は『新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)』に基づくもので、5類感染症は対象ではないからです」
Q.5類への移行により、医療体制や行動制限については、どう変わったのでしょうか。
森さん「これまで、外来診療は『発熱外来』、入院診療は行政が強く関与した上で、新型コロナ患者を重点的に受け入れる医療機関を中心とした医療体制で提供されてきました。5月8日からは通常医療での扱いとなり、原則としてどの医療機関でも診療できるようになりました。国は幅広い医療機関に参画を促しています。
また、5月7日までは新型コロナに感染すると、検査費と治療費は公費負担となり患者の負担がありませんでしたが、5月8日以降は一部を除き保険診療に移行し、1割から3割の自己負担となりました。ただし、急に高額な負担が生じないよう公費による一定の補助を継続し、入院医療費や治療薬の費用について、期限を区切って軽減するとしています。自治体による宿泊療養施設の提供や自宅療養支援などは原則終了となりました。
感染者の行動制限については、5月7日までは原則として、『発症日を0日目として、その翌日から7日間の外出自粛』が要請されていましたが、今後は法律に基づく外出自粛は求められず、個人の判断に委ねられることになります。
しかし、発症から5日間は他人に感染させるリスクが高いことから、『発症日を0日目として、その翌日から5日間を目安に自主的に外出を控えること』『5日以上症状が続いていた場合は、軽快してから24時間程度経過するまで自主的に外出を控えること』を、厚生労働省は推奨しています。
さらに、発症後10日間が経過するまでは、不織布マスクの着用や重症化リスクが高い高齢者との接触をなるべく控えることなどが、周囲の人に感染させない配慮として示されています。
学校に通う児童・生徒の出席停止期間については、『学校保健安全法』に基づき、5類移行前は『発症日を0日とし、その翌日から7日間』でしたが、5類移行後は、『発症日を0日とし、その翌日から5日間が経過し、かつ症状が軽快した後に1日が経過するまで』に変わりました。
また、5類への移行に伴い、保健所による『濃厚接触者』の特定はなくなり、濃厚接触者として法律に基づいて外出自粛や出席停止を求められることはありません。
感染対策は今後、個人の選択を尊重し、個人や事業者の判断によって自主的に取り組むことが基本となります。なお、ワクチン接種については、2023年度は希望者が自己負担なく追加接種を受けられることが決定しています」
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