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迷惑? 気にしない? 電車内での「音漏れ」、周囲の反応と当事者の声を聞いてみた

電車内などで「音漏れ」するほどの音量で音楽を聴いている人たちが、たまにいます。周囲の人たちと当事者の声を聞きました。

「音漏れ」、周囲や当事者の声は?
「音漏れ」、周囲や当事者の声は?

 外出時、イヤホンで音楽を楽しみながらの移動は楽しいものです。退屈に感じがちな道中も、好きな音楽が彩ってくれるおかげであっという間に終わってしまった、ということもあります。街中では、イヤホンをして音楽を楽しんでいる人たちを多く見かけます。

 そうした人たちの中に、「音漏れ」するほどの音量で音楽を聴いている人たちが、たまにいます。音漏れは、例えば電車などの公共交通機関では、迷惑行為です。音漏れに関して皆さんがどのように感じているのか、また、音漏れしながら音楽を聴いている本人は、そのことについてどう考えているかを取材しました。

「マナー違反」に不快感

まず、「音漏れ」への不満の声を紹介します。

「ポイ捨てや、路上につばを吐くことをかっこいいと思っている人がたまにいますが、音漏れさせている人も、それと同じ種類の人たちだと感じます。私とは美的感覚が大幅に違うので、遭遇したら『迷惑だなあ』と思いながら諦めるしかないですよね」(20代女性)

「音漏れしているその音自体も不快ですし、音漏れさせている人のマナーの至らなさにも腹が立ちます。

しかし、もし私が音漏れを注意して相手から嫌な反応をされたら、もっと嫌な気分になるから、それが怖くてなかなか注意できません。『公共のマナーに反する行為だ』ということは歴然としているのですが…」(40代男性)

 音漏れを聞いて不快だと感じた経験のある人は、およそこうしたことを考えているのではないでしょうか。

“優しく”注意

 音漏れに出くわした際に、その人への注意や、自衛のための対策をする人もいました。

「満員電車で身動きが取りづらい時に、少し離れたところで音漏れしている人には何もできませんが、自分が話しかけられる距離にいる場合は、相手の目の前で手を振って気付いてもらい、『音漏れしていますよ』と優しく注意します。

いきなり厳しい口調だと相手の反発を招いてこじれる可能性があるので、『優しく』がポイントです(笑)。幸い、大抵の場合、『すみません』と言って音量を下げてくれます。

こちらの言葉を無視して、また音漏れヘッドホンをかけ直すような人もたまにいますけどね…。こうなるともう関わるだけストレスなので、何もなかったことにします」(30代男性)

 本人が音漏れしていることに気付かない場合は、周りの人がそれを教えることで改善されるケースもあるようです。

「音漏れしている人がいたら、自分もイヤホンを付けて何か音楽を聴くようにしています。これなら音漏れにイライラしないし、音漏れしている人のことなんか一瞬で忘れられますのでオススメですよ」(20代女性)

電車の中、静かすぎる?

 続いて、「音漏れが不快」と感じる人より少ないですが、“音漏れをなんとも思わない人”の声を紹介しましょう。

「(音漏れしている人を見かけたら)『大きい音量で聴きたいんだなあ。周りの人は迷惑に思っているだろうなあ』くらいしか思いません」(30代女性)

「電車内での音漏れ、通話、大きな声での会話はマナーの悪い行為とされていますが、実はそれがそもそもあまり共感できません。電車の中は静かすぎる気がして、もう少し電車の音以外の音があってもいいのにな、と思います」(20代男性)

 人の感じ方は千差万別のようです。

 音漏れをさせている人たちへの純粋な疑問の声もありました。

「周囲の迷惑になったらネガティブな視線を浴びるし、迷惑にならない場所で音漏れさせていたとしても大音量は耳に悪いはずです。デメリットしかないことをどうしてするのか、つくづく疑問でなりません」(30代男性)

当事者の声は?

 では、当の本人たちの声を聞いてみましょう。興味深いのは、音漏れをさせている(させていた)人が、その疑問の声に対して「そんな考え方があるなんて」と驚嘆している点です。

「音楽は大きい音で聞いた方が気持ちいい。これが全人類の共通認識だと思っていたので、そうした疑問の声があることを知り、本当に驚きました」(30代女性)

「音漏れにはデメリットしかない」と疑問に思っている人もまた、この30代女性の考えを聞いて驚くに違いありません。

 なおこちらの女性は、以前「これだけ音量を絞ればまず音漏れしないだろう」と思う音量で音楽を聴いていたところ、他の人に「音漏れしています」と注意され、以来公共の場ではとても小さい音量にしているそうです。

 音漏れさせていた頃の自分を「黒歴史」と語る人もいました。

「高校生の頃は音楽を音漏れさせて聴いていました。大きい音で聴いている自分は音楽好きで、『音楽好きな俺かっけー』みたいな。若気の至りとはいえ、今考えても申し訳なさでいっぱいです。

現在は、音漏れさせている人を見かける度に、昔の自分を見ているようで、どうしようもなく恥ずかしくなってしまいます(笑)」(30代男性)

 一般的に「悪いマナー」とされている音漏れですが、これだけさまざまな意見があることに驚かされます。

 とはいえ、マナーはマナーなので、守るに越したことはありません。公共の場では人の迷惑にならない範囲の最適な音量で、音楽を楽しむことができれば、きっとそれがベストです。

(フリーライター 武藤弘樹)

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武藤弘樹(むとう・こうき)

フリーライター

早稲田大学第一文学部卒。広告代理店社員、トラック運転手、築地市場内の魚介類卸売店勤務などさまざまな職歴を重ね、現在はライターとミュージシャンとして活動。1児の父で、溺愛しすぎている飼い猫とは、ほぼ共依存の関係にあるが本来は犬派。趣味はゲームと人間観察。

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