地方移住すべき? マイホームが欲しい38歳男性を悩ます“通勤時間”の壁
コロナ禍でアラフォー世代にも地方移住を考える人が増えていますが、さまざまな壁があり、すんなりとはいかないようです。アラフォー世代が抱く「地方移住」への思いとは。
コロナ禍でテレワークが広まったことにより、都会から地方への移住というライフスタイルがこれまで以上に注目されています。以前は「老後は田舎でのんびりと」と考える中高年以上の人や、再び地元に戻るUターンの人が多いと考えられていましたが、現役バリバリのアラフォー世代にも選択肢の一つとして検討する人が増えているようで、地方移住への価値観がここに来て、大きな変革の兆しを見せています。そこで、都会在住のアラフォー世代が抱く「地方移住」についての思いを掘り下げてみようと思います。
「今はタイミングではない」
アラフォー世代となると、家庭を持つなど生活の基盤がかなり固まってきている頃なので、地方移住に懸念を抱く人が多いようです。4歳の息子を持つAさん(41歳、男性)は「少なくとも今はタイミングではないです」と話します。
「社員数人の小さな会社で働き方にかなり融通が利きます。今回のコロナ禍で、仕事の大半をリモートワークで行うことができると分かったので、社長と相談しながら試験的にあれこれやっている段階です。業務の完全リモート化が成功して、勤務地に自宅の場所が縛られる必要がなくなれば、いよいよ地方移住が現実的な選択肢になってきます。自分がかなりの田舎で伸び伸び育ったので、子どもをそういう環境で育てるのもいいなと常々考えていました。
ただ、息子と妻が今通っている幼稚園で園児やママ友と交流を深めつつあるので、今は引っ越すべきではないと思っています。特に、息子に親の都合で寂しい思いをさせてしまうのは忍びないです。もし、地方移住するにしても、息子が小学校に上がるタイミングでもう一度きちんと考えたいです。引っ越したら、子育ての環境も今とは大きく変わると思うので、移住先の自治体の取り組みなどを総合的に考えて、条件に合うエリアが見つかれば移住したいと思います」(Aさん)
子どもがいる家庭では、転園・転校にまつわる懸念や子育て環境を考える必要があるため、「思い立ったら即移住!」と簡単にはいかないようです。Aさんが考えているように、子どもの成長・進学に合わせるなどのタイミングを捉えて実行すれば、幾分かスムーズに事は運ぶでしょう。
なお、生まれも育ちも都内のBさん(37歳、女性)は「地方は地方で魅力的だけど住み慣れた場所が一番ですし、実家も今の自宅から近くで何かと便利なので(地方移住は)検討していません」と話しています。地方移住への心理的なハードルの高さは「出身地が都会か地方か」という要素も影響しそうです。
通勤時間がネックになり…
Cさん(38歳、男性)は地方移住への憧れを強く持っていますが、本当に引っ越すとなると、まずは通勤時間がネックだと考えているようです。
「夫婦でよく、週末を利用して、近郊の田舎に小旅行をしているくらい地方への憧れがあります。東京近郊でも田園風景が広がるような田舎に住めればいいなと、常々思っていますが、妻も僕も仕事があるのでそれを辞めてとなるとなかなか…『毎日の通勤に片道2、3時間をかけてでも地方移住してはどうか』と考えたこともありますが、それも結構な負担だと思い…。
コロナ禍があり、今は出社と在宅が半々くらいの割合になっていますが、これが今後どうなっていくかは分かりません。出社の割合がさらに減り、2、3割くらいになったら、本当に引っ越すのもアリかもと妻と話しています」(Cさん)
Cさんには地方への憧れに加えて、マイホームへの憧れもあるようです。
「周りが続々とマンションや戸建てを購入していて、それを羨望(せんぼう)のまなざしで眺めています(笑)貯金は少ししているので、都内に買えないこともないのですが、理想は庭付きの広い戸建てで、やはり、そこが『ついのすみか』になるかもと考えると、『都会より地方がいいなあ』とどうしても考えてしまいます。地方でも、あまり注目されていないエリアなら、わが家の貯金の範囲内で“立派な戸建て”の夢をかなえられるので、その意味で地方移住はすごく現実的です」
Cさんには子どもがいない分、身軽ではありますが、それでも住環境が大きく変化する地方移住であるため、慎重になるのは当然といえます。Aさんは子どもの進学を決断のタイミングと考えていましたが、Cさんは「仕事の折り合いがつけば」というスタンスでした。
今回、都会在住のアラフォー世代の声を複数拾ってみて、地方移住に前向きな層でも「憧れはあるけれども、すぐにというわけにはいかない」という人が多い印象を受けました。仕事が現役バリバリで、子育て真っ最中の世代には夢物語だった地方移住ですが、在宅勤務が増えたことで働き方への価値観が変わり、現実的な選択肢として検討するに値する段階に入ってきたといえるのかもしれません。
(フリーライター 武藤弘樹)
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