保険金を「愛人」に受け取らせることはできるのか
保険法は民間のルールよりも上位
これまで述べてきた受取人のルールは、あくまで保険会社が定めたもの。これとは別に、保険法44条に、「遺言書にて受取人を指定することが出来る」と定義されているのです。当然、民間企業である保険会社のルールよりも、法律である保険法が優先されます。
このことは、保険会社も重々承知していますが、保険金目当ての殺人などを防ぐために、各社が独自のルールを設けているのです。
しかし、遺言書に受取人を指定した場合、さまざまな問題を引き起こすことが予想されます。その典型が、保険会社の書類上の受取人(たとえば本妻)と、遺言書上の受取人(愛人)の「二人の受取人」がいる場合です。
こうしたケースで当人が死亡した場合、保険会社がどちらに支払うのかといえば、正解は「早い者順」です。本妻が先に請求すれば、契約上の受取人であることから、当然ながら支払います。そもそも、保険会社は遺言書の受取人を認識していません。逆に愛人が遺言書を持ってきたら、その遺言書の正当性が立証されれば支払うでしょう。
いずれにせよ、後から来た請求者には「すでに支払ったので当事者同士で話し合ってください」としか言えません。「本妻が保険金を受け取った後に愛人が現れ、遺言書をタテに巨額の保険金を持っていく」、または「本妻が請求した時には、すでに保険金は持ち去られた後」――。その時の本妻の怒りは想像するに余りありますが、これは実際に起こりうることなのです。
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