自殺と保険と景気の“悲しい関係”
皆さんは生命保険の「自殺免責」をご存じでしょうか。所定期間内に自殺すると、保険金が支払われないという仕組みです。

「自殺では生命保険の保険金は支払われない」
そう思っている方が多いようですが、これは正解でも、誤りでもあります。多くの保険会社には、2年もしくは3年の「自殺免責」というものがあり、加入後、この期間内に自殺した場合、保険金は原則支払われません。しかし、この免責期間を過ぎれば支払いに応じてくれます。
延長と短縮を繰り返す免責期間
実は、この免責期間については、過去に何度も変更されています。戦前までは「1年」でしたが、戦争末期に「2年」になり、それが1970(昭和45)年ごろまで続きます。そして同年から保険各社が続々と「1年」に短縮しました。ところが2000(平成12)年前後には再び「2年もしくは3年」に延長され、現在に至っています。
自殺免責は、「時間の経過によって気が変わるだろう」という発想に基づいています。つまり、自殺して多額の現金を家族に残そうと思い立っても、2年か3年、待つ間に状況が変わる可能性があり、また、その期間ずっと「死にたい」と思い続けることも困難です。自殺によって、すぐに高額の現金を得たい人にとって、2年、3年は高いハードルであり、自殺の抑止力となります。
免責期間1年と2年、3年でどれくらい抑止力が異なるかを示すデータはありませんが、実際に、長ければ長いほど「保険金目当ての自殺」を防ぐ効果は高いと思われます。
なお、この免責期間の延長・短縮は自殺者数の推移と関連があります。厚生労働省の「人口動態統計」によると、終戦間もない頃に年間1万3000人ほどだった自殺者はその後、増え続け、1958(昭和33)年には2万4000人前後になります。
それをピークに、急激に減少へと転じ、昭和40年代初頭に1万5000人前後まで減ります。これは1954(昭和29)年に始まった高度成長によって、日本全体が裕福さを実感できるようになったことが要因でしょう。
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