自殺と保険と景気の“悲しい関係”
保険金が自殺を後押しする可能性
生命保険業界は1970年ごろから、免責期間を2年から1年に短縮していますが、実はこの頃から自殺者数は増え始め、昭和50年代に再び2万人台、1998(平成10)年には、年間の自殺者が初めて3万人を超えました。これは前年の山一証券破綻に象徴される「平成の大不況」の影響と思われます。
1997(平成9)年に年間2万3494人だった自殺者は、翌1998年には3万1755万人と一気に増え、その後10年以上、毎年3万人を数えることになります。日本が「自殺大国」と言われる所以です。
こうした動向に関連して、生命保険業界でも2000年前後に、免責期間を2年もしくは3年に延長しています。しかし、まさか保険各社がこれらのデータだけを見て免責期間を決めているわけはなく、2000年から数年間で、「1年待っても自殺して保険金を」という事例が増えたと推測できます。
自殺目当ての契約は保険会社の収益を悪化させ、ほかの契約者への不利益にもなるため、保険会社としては何らかの対処をせざるをえない、ということでしょう。筆者自身も、「免責中」の自殺で保険金を支払えなかったことも、「免責後」の自殺で保険金を支払ったこともあります。あくまで個人的な見解ですが、免責期間中とはいえ、残されたご家族に「支払えない」と告げるのはとても心苦しく、つらい仕事です。
また、当人の自殺とその後の家族の生活は別物です。万が一の時、家族を支えるために入った「保険」ですから、亡くなった以上は、支払うことが保険会社の存在意義なのではと思います。
その半面、何もルールがなければ保険金目当ての加入が増えることは明白で、特に借金苦などお金が絡んだ悩みの場合、保険金が自殺を後押ししてしまう可能性すらあります。このバランスは極めて難しく、現状では免責2年、3年に落ち着いているのです。
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