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トイレ紙は中国産で品薄 デマに惑わされない「情報収集」のスキルと意識とは?

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、連日、さまざまなメディアで関連情報が伝えられています。適切な「情報収集」のスキルについて、専門家に聞きました。

デマにだまされないためには?
デマにだまされないためには?

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、連日、さまざまなメディアで関連情報が伝えられています。その数は膨大でジャンルも多岐にわたることから、情報の取捨選択が難しい状況にある上、「トイレットペーパーの原料は中国産なので品薄になる」といったデマ情報(大半が国産)がSNSで拡散されるなど、正確な情報を見極めることの重要性と難しさを実感する人が多くいるようです。

 ネット上では「SNSは情報収集に役立つけど疑わしい情報も多い」「デマに振り回されたくないし、拡散に加担したくない」「ソースを確認せずに拡散する人が多過ぎる」「正しい情報を得るためのアンテナの張り方が知りたい」など、情報の探し方や向き合い方に悩む声も多くあります。

 新型コロナをきっかけに問われる適切な「情報収集」のスキルと意識の持ち方について、ITジャーナリストの久原健司さんに聞きました。

「親切心でリツイート」が落とし穴

Q.新型コロナウイルスの感染拡大以前と以降で、SNSを含むインターネット上において何らかの変化はありましたか。

久原さん「『#コロナ』などのハッシュタグが増えたのはいうまでもありませんが、こうした現象は、他の話題性のあるニュースや事件が発生しても同様に起こります。SNSの月間利用者数が伸びているといったデータについても、SNS上で発信される情報全体が劇的に増えたというよりは『暇なので(SNSやネットニュースを)見ている』ユーザーの割合が多いのが実際のところでしょう。

また、『コロナウイルスはお湯を飲めば死ぬ』などの誤った情報がSNSで拡散されていますが、情報元が誰なのかはよく分かりません。このような拡散の様子は新型コロナ以外のケースでも見受けられました。

デマ投稿も昔からたくさんあるのですが、新型コロナ関連の悪質な発信内容がメディアで比較的多く取り上げられているのは、なかなか外へ取材に行けず、イベントも自粛されているためにネタがないので、ネット上から普段以上に拾われているといった感覚を持っています」

Q.ネット上においては特に、正確な情報と不正確な情報が入り交じっていることが多いと思います。ネット上で情報に触れたとき、この両者を見極め、判断するために必要なことは何でしょうか。

久原さん「SNSでは、発信している人の名前や顔が特定され、オープンになっていた方が内容に対して慎重になるので、その分、正確な情報が発信されやすい傾向があります。そうした観点では、国の省庁や自治体など公的機関から発信されている情報が最も正確でしょう。

また、たとえ仲のよい友人がSNS上で発信していたり、リツイート(拡散)していたりする内容でも、その情報の“元ネタ”がどこであるのかは意識して受け取った方がよいと思います。『友人から回ってきた有益な情報を皆にも知ってほしい』という親切心で気軽にリツイートしても、その情報がデマである可能性はあるのです。

罪の意識なく拡散をしても、その情報がデマであれば加害者側になってしまうこともあるので、拡散にはリスクがあることを十分理解した上で行ってください」

Q.情報過多による「コロナ疲れ」で、SNS上で「コロナ」という言葉をミュートする人も多くいるようですが、一方で「なるべく多くの情報に触れ、取捨選択した方がよい」との意見もあります。どちらが適切だと思われますか。

久原さん「『コロナ』をミュートしても問題ないと思います。なるべく多くの情報に触れるというよりは、なるべく正確な情報を速く取得する方がよいので、例えば国など、名前や団体の情報が特定されている発信者からの情報をいち早くキャッチアップする方が適切でしょう」

Q.新型コロナ関連の正確な情報を得るための方法を教えてください。なお、ネット上では「検索ワードを『COVID-19』にするとよい」「1次ソースをさかのぼって確認する」との意見もあるようです。

久原さん「確かに『COVID-19』という言葉の方が、冷静な情報が出てくると感じる人は多いでしょう。ただし、それはあくまで言葉の使い方であり、『コロナ』と記載するよりも『COVID-19』という言葉を使った方が、専門家が発信している情報のように感じられるからです。それを逆手に取り、悪意のある情報が出てくる恐れもあるので、安易に有効と判断するのは危険だと思います。

また、情報元がよく分からず、正確かどうか判断できない場合は、その情報を否定する情報が出ていないかを検索してみてください。例えば、『コロナウイルスはお湯を飲めば死ぬ』の場合、『コロナ お湯 効果なし』といった内容で検索を行いましょう。逆の意見があれば、『どちらかがうその可能性が高い』と分かりますし、自分が持っている情報の取り扱いに気を付けた方がよいと判断できます」

Q.新型コロナの影響はもうしばらく続きそうですが、さまざまなメディアから新型コロナ情報を収集する上で、正確な情報を選び取り、不正確な情報に振り回されないために、受け手に必要とされる意識・行動とは。

久原さん「まずは基本的な行動として、『手洗いを小まめに行う』『不要不急の外出を控える』といった、国や地方自治体が発信している情報を速く正確に取得し、確実に行うことが重要です。

また、取得した情報をすぐにうのみにしない意識を持つことが重要です。情報元の正誤の判断が難しいときはまず、手に入れた情報をそのまま入力・検索してみてください。例えば、差出人などに心当たりのないメールなら、『この内容は迷惑メールとして多く出回っている』など、ネット上では既知の情報になっているケースがあります。

そして、先述したように、ある情報に対して否定している情報が出ていないかを検索し、逆の意見の有無を調べてみてください。必ずしも『否定する情報がないから安全』というわけではないので注意が必要ですが、目にした情報に対して“ワンクッション置く”という意識・行動を癖付けることで、冷静に正誤の判断ができると思います」

(オトナンサー編集部)

久原健司(くはら・けんじ)

株式会社プロイノベーション代表取締役、ITジャーナリスト

1978年生まれ。2001年に東海大学工学部通信工学科を卒業後、ITの人材派遣会社に入社。大手コンビニエンスストアのPOSシステム保守運用業務を担当する。2003年からソフトウエア開発会社で、システムエンジニアとして、大手通信会社のWebアプリケーションシステム開発など多くの業務に携わるも、2006年、小さな頃からの夢であった独立を決意。2007年(29歳)に株式会社プロイノベーション(http://proinnv.com/)を設立し、当時としては珍しいオブジェクト指向によるモデリング開発でのサービス提供を始める。2018年「振り向くホームページ」サービスを開始(http://furimuku.com/)。プロのフリーランスを集めて企業の成長をサポートすることで、フリーランスとしての働き方を応援する傍ら、日本一背の高いITジャーナリストとして、さまざまなウェブメディアでも活躍中。

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