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上司と部下、親と子…かみ合わない「ネット」巡るコミュニケーション、解決策は?

異なる世代間で起こる、インターネットについての“かみ合わない”会話。ネット用語が理解できる世代と、理解が追いついていない世代の円滑なコミュニケーションには何が必要なのでしょうか。

ネット用語を巡る齟齬、どう解決する?
ネット用語を巡る齟齬、どう解決する?

 上司と部下、親と子どもなど、異なる世代の間で起こるネット用語についての“堂々巡りの会話”が話題になることがあります。インターネット自体が存在しなかった時代を長く生きてきた、ネット用語を理解できない、あるいは理解が追いついていない世代との齟齬(そご)を埋めるのは大変です。ネットに関する会話がうまくかみ合わない場面に遭遇したとき、それを解決する方法はあるのでしょうか。

「ヤフーが出ない」は何を意味する?

「『ヤフー』が出ない」「何を使って開いていますか?」「いや、ヤフー」「アプリですか?」「だから、ヤフー」…このような、上司と部下のかみ合わない会話が実際に、職場などのビジネスシーンで起こることは珍しくないようです。

 この会話はおそらく、「ヤフーのウェブページを開きたいのに開けない」上司と「スマホのブラウザーか、スマホのアプリか、それともパソコンのブラウザーか、何のツールで開こうとしていて開けないのか、またはネット接続自体にエラーが出ていて、ページが表示されないのか」を知りたい部下のやりとりでしょう。こうしたことが起こると、上司と部下の双方にストレスが発生し、なかなか思うように仕事が進まなくなるという話もよく聞きます。

 インターネットの黎明(れいめい)期、検索サービスといえば、ヤフーでした。そのため、「ヤフー=インターネットに接続すること」と間違って理解している人は案外多いのです。それまで存在しなかった言葉を別の意味で一度覚えてしまうと、修正するのは難しいことです。そもそも、ITやネットの用語は、社会全体を広く見ると、必ずしも当たり前のものではありません。「一部の人たちの間でだけ通用するもの」と考えた方がよい場面は現代においても多くあります。

 先ほどから、「理解できない世代」と呼んでいますが、実際は理解できないのではなく、新しいことを覚えるのがおっくうであったり、理解する必要がなかったりする背景があるのではないでしょうか。例えば、「若者言葉」も日常的に若者と接することがなければ、わざわざ覚えなくても問題ないでしょう。しかし、もし、必要に迫られればきっと覚えるはずです。

 平成の時代に登場し、広く使われた「写メ」という言葉がありました。現在は「LINEで画像を送ること」を指して使う人もいるかもしれませんが、もともとは画像の送受信サービス「写メール」の略で「ガラケーで写真を撮って、メールで送ること」を意味した言葉です。携帯電話の機種がガラケーからスマホに変わり、メールがLINEというメッセージアプリに変わっても同じ言葉が使われており、その言葉の意味だけが拡大変化しているのです。

 人に何かを伝えるには共通の言語をつくるしかありませんが、言葉で通じない場合、絵や色など別のもので説明するしかありません。言葉で伝えるのではなく、画像や動画で伝えるなど、情報の伝達の仕方を変えることが有効です。冒頭の会話の場合、上司も部下もどちらも間違っているわけではありません。厳密には、それぞれの世界では、そういう認識で合っているのです。両者の間に認識のギャップがある場合、お互いが歩み寄る必要があります。

 もし、相手(上司)が近くにおらず、オンライン上などでやりとりをしている状況下で「○○(ウェブサイト)が出ない」と言われたら、「○○が出ないんですね」と一度承認した上でビデオ通話をつなぎ、パソコン画面やキーボードを映しながら説明してみるのも一つの方法だと思います。

世代間の齟齬、カバーする工夫を

「物事はうまく伝わらないこともある」という前提で、情報が伝わりやすくなるように工夫をすることは重要です。

 私がパソコン関連のサポートセンターで業務を行っていたときは、伝えたい情報がなかなか伝わらない人に対して、どのように伝えるかを検討した結果、色を使うと情報が伝わりやすい傾向があることにたどり着きました。例えば、プリンターなどの機器に関する説明の場合、「黄色いレバー」と色の情報をうまく使うことで、電話越しでも機器の主要部品に関する説明が伝わりやすくなります。そこから、「機器に色を付けられないか」という提案も行いました。

 会社の上司と部下の場合、先述のように、普段からできるだけ、ビデオ通話をつなぎやすい環境にしておくと、たいていのパソコン操作に関してはビデオ通話を介して指示できるようになります。世代間におけるネット用語の齟齬を完全に取り除くのは難しいかもしれませんが、ビジネスシーンにおいては、確実な伝達手段や方法を選択すること、それを全員ができるようにしておく教育を取り入れること、そして、用語の認識をあらかじめすり合わせておくことでカバーできる部分も多いのではないでしょうか。

(ITジャーナリスト 久原健司)

久原健司(くはら・けんじ)

株式会社プロイノベーション代表取締役、ITジャーナリスト

1978年生まれ。2001年に東海大学工学部通信工学科を卒業後、ITの人材派遣会社に入社。大手コンビニエンスストアのPOSシステム保守運用業務を担当する。2003年からソフトウエア開発会社で、システムエンジニアとして、大手通信会社のWebアプリケーションシステム開発など多くの業務に携わるも、2006年、小さな頃からの夢であった独立を決意。2007年(29歳)に株式会社プロイノベーション(http://proinnv.com/)を設立し、当時としては珍しいオブジェクト指向によるモデリング開発でのサービス提供を始める。2018年「振り向くホームページ」サービスを開始(http://furimuku.com/)。プロのフリーランスを集めて企業の成長をサポートすることで、フリーランスとしての働き方を応援する傍ら、日本一背の高いITジャーナリストとして、さまざまなウェブメディアでも活躍中。

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