「パインアメ終売」騒動では素早い“火消し”に称賛 企業はデマにどう対処すべきか?
企業がネット上で自社商品やサービスなどに関するデマを流された場合、どのように対処すべきなのでしょうか。専門家に聞きました。
ロングセラー菓子「パインアメ」の販売が終了したという誤った内容の文章が6月7日、ツイッターに投稿され、その後、この投稿を拡散する人が続出しました。同商品の製造、販売を手掛けるパイン(大阪市天王寺区)は翌日、「パインアメは今年で71年目。今日も販売を続けております」「安易なリツイートはデマ拡散に加担することになります」などと公式ツイッター上にすぐに投稿し、ネット上ではその素早い火消しに称賛の声が上がりました。
今回のメーカーの対応を専門家はどう評価するのでしょうか。また、ネット上で自社の商品やサービスなどに関するデマを流された場合、企業はどのように対処すべきなのでしょうか。ITジャーナリストの久原健司さんに聞きました。
まずはデマの内容をしっかり確認
Q.「パインアメが販売終了した」という誤った内容の文章がツイッターに投稿された翌日、製造元のパインは公式ツイッターで「パインアメは今年で71年目。今日も販売を続けております」「安易なリツイートはデマ拡散に加担することになります」などと投稿し、販売終了の投稿を否定しました。今回のパインの対応をどのように評価しますか。
久原さん「翌日、公式ツイッターに販売終了を否定する投稿をするという、非常に迅速かつ効果的な対応ができたため、被害を最小限に抑えることができたのだと思います。また、販売終了の投稿に対してだけでなく、その投稿を拡散する行為に対しても、きちんとけん制をしているところも素晴らしかったと思います」
Q.ネット上で、自社の商品やサービスなどに関するデマを投稿された場合、風評被害を防ぐために、企業はどのように対処すべきなのでしょうか。
久原さん「できるだけ早く、自社の公式ホームページや、デマの投稿先のサービス(ツイッターなど)を通じて、投稿内容がデマであることを表明する必要があります。
ただし、デマであることを表明する前に、投稿されたデマ情報の事実関係は必ず確認しましょう。経営層がデマだと勝手に判断をしてしまい、実は事実だったということが判明した場合、余計に企業イメージが悪くなってしまいます。
もちろん、今回のパインアメのように、デマということが明確な場合は、すぐに『デマである』と表明するのが正解です」
Q.デマが企業の経営に大きな影響を与えた出来事について、教えてください。もし、ネット上にデマが投稿されたときに企業が何の対応もしなかった場合、どうなるのでしょうか。
久原さん「デマが企業の経営に大きな影響を与えた出来事としては、1973年12月に発生した『豊川信用金庫事件』が有名な話ではないでしょうか。これは、女子高生が豊川信用金庫に就職が決まった友人に『信用金庫(などの金融機関)は、(強盗に襲われることがあるから)危ないよ』と電車内で話した冗談が、その後、『豊川信用金庫は(経営が)危ない』という誤ったうわさに発展し、同信用金庫の20億円もの預貯金が短期間で引き出された出来事です。これは、SNSがない時代の事件で、現代ではさらにデマが広がりやすくなっているといえます。
SNSは拡散力が強いという特徴がありますが、デマ投稿の方が真実の投稿よりも拡散スピードが速く、また、拡散範囲が広いことは、2018年にアメリカの学術誌『Science(サイエンス)』に掲載された、マサチューセッツ工科大学助教のソローシュ・ヴォソゥギ氏らによる論文でも知られています。そのため、企業がデマ投稿を見つけた際に何の対応もしなかった場合、倒産の危機に直面する可能性もあることを十分に理解する必要があります」
Q.デマによる風評被害を防ぐために、企業には日頃からどのような対策が求められるのでしょうか。ネット上にデマが投稿されたときにすぐに対処できるよう、ツイッターの自社アカウントをまだ持っていない場合はすぐに作成した方がよいのでしょうか。
久原さん「特に消費者向けにサービスを行っている企業の場合は、マーケティングの観点から考えても、ツイッターなどの自社アカウントを作成しておいた方がよいと思います。
マーケティング担当者は、自社のポジティブな情報を発信するだけではなく、ネガティブな情報が発信されていないかどうかも定期的に確認し、見つけた段階ですぐに対応できるよう、事前に対応マニュアルを作成し、従業員向けに教育を行うことが有効だと思います」
(オトナンサー編集部)
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